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オリンピックから見るフェアな勝負と!?

2018.02.16

オリンピックから見るフェアな勝負と!? | 高校野球ドットコム

 「メダル取れてホッとしているっていうのが半分と、まぁ、あと本当ちょっと自分が目指していたとこにたどり着かなかったっていう悔しさが半分って感じですかね。今日はかなり風が強くて、誰も前出たがらない中で、フレンツェルと僕とで、ある意味痛み分けじゃないですけど、彼が引っ張った分、僕も引っ張ってっていう形で。僕はフェアにレースしたいなって思っていたんで、出るところは出て、後ろに下がるところは下がってってところで。まぁ様子を見ながら、体力は残して。まぁ最後はあそこで来るなってのは分かっていた。自分も行く気ではいたんですけど、彼の方がやっぱりスピードがあったので、その辺が、まぁ完敗かなって感じですかね。自分で来るなと思っていたところで、やっぱり力の差を見せつけられたところがあったので、その辺の、う~ん、ま、ちょっとその4年前とは違った、こう、気持ちでゴールしたかなって感じですね」。

 これは、一昨日(14日)にノルディック複合個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得した渡部暁斗選手のレース直後のコメントの一部です。
金メダルを獲得したドイツのエリック・フレンツェル選手との駆け引き、そしてフェアなレースをしたかったことが語られています。

 スキーのクロスカントリーでは、マラソンなど陸上の長距離レースと同じく、レース途中で風の抵抗を受ける先頭を譲り合う場面が多く見られます。もちろん、勝負なので前に出たがらない選手もいるのですが、渡部選手とフレンツェル選手は互いに何度も先頭に立って引っ張り合い、最後の一周で勝負しようという姿勢が見ている人にも感動を与えました。お互い、これまで何度もレース(試合)で顔を合わせ、力を良く知ったライバル同士です。だからこそ、互いを尊敬しあっているんですね。再び顔を合わせる個人ラージヒルでどんな勝負になるか、ノーマルヒルを見てさらに楽しみになりました。

 さて、同じような互いを尊敬しあうフェアな勝負は野球でも何度も見られます。これは取材を通しての感想ですが、プロはもちろんですが、特にアマチュアでは社会人野球や大学野球など何度も顔を合わせた相手同士の方がより多いように思います。社会人や大学など同じ地域やリーグで何度も対戦している間に、良い意味での人間関係ができてくるんですよね。

 逆に一発勝負が多い高校では同じ都道府県のチームと意識的に練習試合や定期戦をしない指導者もいます。色んな考え方はありますが、この部分では大学や社会人と高校では少し違うように感じます。特に社会人野球では同じ都道府県のライバルチーム同士が何度もオープン戦を行い、お互いにあえてスカウティング(偵察)用の映像を撮らないようにすることがあります。

 フェアな勝負といってもピンからキリまであります。自分だけが「フェアな勝負をしている」と思い込んでもいけないと思います。対戦する相手同士が尊敬しあってこそのフェアな勝負なのではないでしょうか。

 さらに野球は個人対個人の勝負ではありません。投手対打者でよく個人の勝負とされますが、投手には守備をしてくれるチームメートがあり、打者には走者やベンチと力を合わせなければいけません。時には投手対打者で何球も投じられるなど名勝負がありますが、それは全ての選手やベンチがその勝負を楽しんでいるからこそなんだと思います。誰か一人でも、「ファウルばかりじゃなく、早く打たせてくれよ」と思ってしまっては、名勝負にはなりません。

 それと公認野球規則1.05に、『各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする』と書かれている以上は、フェアを第一にしながら勝負には勝つことを目指さなくてはいけません。ここも誰か一人でも「負けてもいい」と思ってしまっては、名勝負にはならないのではないでしょうか。

 考え方は色々あります。ここに書いたことが100パーセントではありません。当然、「それは違う」という声もあるでしょう。
ですが、フェアという意味をそれぞれで考えてみる。それが大事なのではないでしょうか。本格的な野球シーズンを前に、ぜひそれぞれで考えてみてください。

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(文:松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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