身体を大きくすると足が遅くなる?
体重は体脂肪ではなく筋肉量で増やすようにするとより大きなパワーを得られる
身体を大きくすると足が遅くなる?
「身体を大きくしてパワーをつけたい」と考える選手は多いと思いますが、その一方で「身体が大きくなると動きが鈍くなったり、足が遅くなったりするのでは」と心配することがあるかもしれません。特に身体が大きくなって体重が増えると、機敏な動作がしにくくなったり、ランニングのタイムが遅くなったりすることがあり、身体を大きくすることはスピードを落とす要因になってしまうのではと考えてしまうようです。
アスリートに必要とされる「身体を大きくすること」は、体脂肪を蓄えることではなく、筋肉をより多くする(筋線維を太くする)ことです。筋肉は脂肪よりも単位あたりの比重が大きいため、筋肉量が多くなると当然体重も増えます。同じ60㎏の選手でも、筋肉量の多い選手と、体脂肪量の多い選手(体脂肪率から算出)ではパフォーマンスにも大きな差が生じると考えられます。その一つが走力にも現れるといえるでしょう。筋肉量の多い選手はより大きい筋力で体重をコントロールすることができますが、体脂肪量の多い選手は体脂肪がそのまま「おもり」となってしまい、少ない筋力で身体を移動させるにはより時間を要する(スピードが落ちる)ようになるからです。
ウエイトトレーニングを始めとするさまざまなフィジカルトレーニングは、まず筋肉量を増やす目的で行われています。筋肉量が増えると筋力が増し、「力×スピード」で生み出されるパワーがより大きくなるからです。特にパワーを発揮する土台となる下肢筋力は重要で、野球は地面の反力を利用して行う動作が大半であるため、下肢のトレーニングは必須項目といえるでしょう。ところがスクワットやランジなどに代表される下肢トレーニングはきついと感じることが多く、なかなか継続して取り組むことのむずかしい種目でもあります。ベンチプレスなどの上肢のトレーニングばかりを行っていると筋肉量は増えても、身体をコントロールするための筋力が不足するため、やはり身体が重く感じたり、速く走ることがむずかしくなったりします。
またとにかく身体を大きくすればいいと体脂肪がたまりやすいような食生活を送っていると、やはり身体は「おもり」を背負うことになってしまい、パフォーマンスの低下を招きます。野球選手が身体を大きくするということは、筋肉量を増やしてより大きなパワーを得ること。そのためには下肢のトレーニングを最優先にし、体幹・上肢とバランス良く鍛えていくことが必要なのです。
文:西村 典子
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