乳酸は疲労物質?エネルギー源として再利用しよう!
糖質をエネルギー源とする激しい運動を行うと乳酸がたまりやすくなる
乳酸は疲労物質?エネルギー源として再利用しよう!
激しい運動を行うと息が上がって筋肉が動かなくなってきます。こうした状態を「乳酸によって身体が動かなくなった」と理解している選手や指導者の方も少なくないことでしょう。こうしたことから「乳酸=疲労物質」と思われがちですが、実は疲労物質だけではなくエネルギー源としても再利用できるということを知っていましたか?
運動するときには糖質(炭水化物:ご飯やパンなど)や脂肪などエネルギー源を消費しますが、乳酸は糖質をエネルギーとして利用したときに発生するものです。脂肪がエネルギーとして利用されているときは乳酸は発生しません。糖質はすぐに利用しやすいエネルギー源ですが、体内に多く貯めておくことができません。ですから主にダッシュなど強度の高い運動を行う時によく利用され、筋肉内で糖質が分解されて乳酸が蓄積していきます。通常、体内のpH(ペーハー:液体が酸性なのか、アルカリ性なのかを表す尺度。中性はpH7.0)は7.4程度ですが、乳酸は体内を酸性に傾け(最大でもpH6.5程度)、エネルギーを作る反応が遅くなると言われており、乳酸が多く産出されるような強度の高い運動では筋肉を中心として酸性に傾くため、長く運動を続けることが困難となってきます。
しかし乳酸は体内で中和され、細胞内にあるミトコンドリアによってエネルギー源として再利用できることがわかっています。マラソンなどでは乳酸があまり出ないように脂肪を中心としたエネルギー源を利用することで、長時間走り続けることが可能となりますが、後半になるにつれて体内の糖質が少しずつ減っていくためスピードダウンしやすくなります。野球の場合は強度の高い運動(ダッシュやピッチングなど)とその間のあまり動いていない時間(ベンチにいる時間等)との組み合わせで構成されており、乳酸の産出と消費のバランスをうまくコントロールすることで、長い時間にわたってパフォーマンスを維持できることができるというわけです。
乳酸が体内にたまった状態のままであれば、身体は酸性に傾いて思ったように身体が動かなくなることになります。クールダウンの時に軽いジョギングを行ったほうがいいのはこうした乳酸をエネルギー源として再利用し、乳酸の分解を早める狙いがあります。連戦が続く場合は特にこうした運動生理学的な視点からもコンディショニングを考えるようにすると、よりよい状態を維持することにつながりますね。
(参考書籍・乳酸を活かしたスポーツトレーニング)
文:西村 典子
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