間違えやすい腹筋の鍛え方
サマーボディよりもパフォーマンスアップを念頭に腹筋を鍛えるようにしよう。
間違えやすい腹筋の鍛え方
体幹を鍛えることはバッティングやピッチングのフォームを安定させることにつながるため、多くのチームが積極的に取り入れているトレーニングの一つだと思います。腹筋や背筋のトレーニングを行う時に特に意識したいことは、鍛えられた筋肉が野球のパフォーマンスに結びつくように行うこと。トレーニングした結果、腹筋が締まって割れたように見えることは問題ありませんが、腹筋が割れてカッコよく見えるシックスパック(腹筋が6つに割れる)を目指すのではありません。勘違いしやすい腹筋運動について挙げてみましょう。
●パートナーに手伝ってもらい、腹筋にメディシンボールを強く押し当てて力むことで腹筋を鍛えるトレーニング
腹筋に力を入れて耐える、力むポイントを確認するという点では一理ありますが、これをパフォーマンスにどう結びつけるかを考えなければなりません。寝転がってただ何回も腹筋に押し当てることは、野球選手の腹筋トレーニングとして適切かどうか疑問の残るところです。
●クランチの細かい動きで回数をこなす
股関節と膝関節を曲げて行うクランチはなるべく身体を大きく使ってゆっくりと腹筋を行いたいところです。特に身体を曲げた状態から腹筋を伸ばしていく段階で、筋線維が引き伸ばされながら力を発揮するので、ここの部分を丁寧に行います。あまり大きく動かずに細かな動きのみで回数をカウントすることは筋力ではなく筋持久力の強化であると考えましょう。
●腰痛を悪化させかねない腹筋運動
仰向けになり、膝を伸ばしたまま足の上げ下げを行う腹筋運動を見かけることがあります。また補助者がついて足を押し出すようにして行うとより大きな負荷がかかるのですが、選手は膝を伸ばしてそれに耐えるようにすると腹筋運動を行うたびに腰椎を大きく反らせることになるため、腰痛を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。下腹部の腹筋を行う際は股関節と膝関節を曲げ、膝の曲げ伸ばしをさせながら鍛えることが大切です(これでも十分に下腹部に負荷はかかります)。
●EMSマシンで腹筋を鍛える
EMSマシンなどを利用して腹筋を鍛えるCMなどをよく見かけますが、こうしたトレーニングは筋肉を電気刺激によって収縮させるものです。腹筋そのものを鍛えるという点では問題ありませんが、パフォーマンスアップを見込む場合は脳から筋肉へ指令を出し、それを受けて筋肉を収縮させるという脳と筋肉との連動がとても大事になってきます。この過程が抜けてしまっているという点ではアスリート向けというよりは「見せる腹筋をつくりたい」と考える一般の方向けだと考えられるでしょう。
文:西村 典子
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