違和感があったら要注意!スイング動作によっておこる骨折に気を付けよう!
スイング動作によって起こる有鉤骨(ゆうこうこつ)骨折に気をつけよう!
手のひらを反らせた状態で、正面からレントゲンを撮ると有鉤骨のフック部分が見えやすい
オフシーズンはさまざまな体力要素を鍛えるとともに、スイングスピードを向上させるため、もしくはスイング動作を安定させるために素振りやティーバッティングなど、同じ動作を繰り返すことが増えると思います。その中でもスイング動作によって起こる有鉤骨(ゆうこうこつ)の骨折は、野球選手によく見られるスポーツ傷害の一つです。
手には手根骨(しゅこんこつ)と呼ばれる小さな骨が8つあり、その一つに有鉤骨(ゆうこうこつ)という骨があります。この骨は鉤(かぎ)状(フック状)の構造をしているので、バットを握った状態で大きな衝撃が加わると骨折をすることがあります。特に手首が過度に曲がってバットのヘッドが下がった状態でボールがバットの先に当たってしまうと、てこの原理でより大きな衝撃が手のひらに加わることになります。
一度の衝撃で骨折してしまうことが多いのですが、骨折した選手の多くはその前から何となく手のひらに違和感を感じていたり、多少の痛みを我慢して練習をしていたケースが多くみられます。骨折をしてしまうと握力の顕著な低下が見られ、プレーを続けることが難しくなります。しびれ感を伴う場合もあります。
有鉤骨が位置している場所は小指・薬指付近の手のひら側ですが、手の甲側に痛みを訴える選手も多いため、小指・薬指の手根骨付近に痛みがある場合はここの骨折を疑います。病院での単純レントゲン検査では撮影角度によっては見逃されることもあるため、最終的にはCT検査、MRI検査などを行って再確認します。
骨折の多くは固定した状態で骨癒合を待ちますが、鉤状の部分が骨折している場合は、骨がくっついたとしてもまたスイング動作で再骨折するリスクが高くなると考えられるため、手術によって骨折した部位を取り除くケースが多いです。病院によっては日帰り手術を行うところもあり、その後のリハビリテーションなどを経ておよそ6~12週間程度で競技復帰が可能となります。
バッティングの衝撃だけではなく、空振りをしたときにも骨折する場合があるため、スイング動作で急に手のひらの小指側に痛みが感じられた場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。
文:西村 典子
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