もはやレジェンドの域!鳥谷敬、糸井嘉男ら81年世代ドラ1の現在地
野球の世界には「松坂世代」を始め、有力選手が集まった世代を「〇〇世代」と形容する流れがある。毎年12名のドラフト1位が生まれるので、平均すれば各世代に12名のドラ1がいることになるのだが、多い世代、少ない世代というのが出てくる。そこで世代別にドラフト1位を集計し、その現在地を見ていきたい。今回は高卒21年目、39歳を迎える81年世代だ。
大卒野手2人が今季も現役
鳥谷敬
81年世代でドラフト1位指名を受けてプロ入りしたのは、高卒7人、大卒7人、大卒社会人2人の計16人。彼らの主な通算成績は以下の通り。
<1999年ドラフト>
河内貴哉(國學院久我山・広島東洋) 3球団競合
166試合 16勝28敗 23ホールド 355.2回 299奪三振 防御率5.06
正田樹(桐生第一・日本ハム・阪神・興農・東京ヤクルト・Lamigo) 単独指名
NPB 123試合 25勝38敗 4ホールド 486.1回 263奪三振 防御率4.70
CPBL 67試合 27勝13敗 1ホールド 363.2回 245奪三振 防御率3.74
野口祥順(藤代・ヤクルト) 単独指名
339試合 8本塁打 29打点 32盗塁 打率.237
田中一徳(PL学園・横浜) 単独指名
341試合 1本塁打 13打点 15盗塁 打率.229
高山久(九州学院・西武・阪神) 単独指名
377試合 25本塁打 108打点 8盗塁 打率.250
朝倉健太(東邦・中日) 外れ1位
236試合 65勝70敗 1セーブ2ホールド 1139.2回 739奪三振 防御率4.11
宮本大輔(延岡学園・大阪近鉄) 外れ1位
43試合 2勝3敗 1セーブ 74回 67奪三振 防御率4.26
<2003年ドラフト>
吉川輝昭(厳木・日本文理大・横浜・福岡ソフトバンク・横浜DeNA) 自由獲得枠
160試合 3勝9敗 9ホールド 232回 141奪三振 防御率5.97
馬原孝浩(熊本市立・九州共立大・福岡ダイエー・オリックス) 自由獲得枠
385試合 23勝31敗 182セーブ47ホールド 480.2回 455奪三振 防御率2.83
川島亮(千葉経大付・八戸大・東京ヤクルト・東北楽天) 自由獲得枠
105試合 38勝35敗 1ホールド 587.2回 424奪三振 防御率3.66
鳥谷敬(聖望学園・早稲田大・阪神・千葉ロッテ) 自由獲得枠
2169試合 138本塁打 822打点 131盗塁 打率.280
筒井和也(松山北・愛知学院大・阪神) 自由獲得枠
221試合 8勝6敗 3セーブ29ホールド 242回 215奪三振 防御率3.87
山崎敏(勢多農林・平成国際大・西武) 自由獲得枠
67試合 6勝4敗 4ホールド 113.2回 90奪三振 防御率5.15
糸井嘉男(宮津・近畿大・北海道日本ハム・オリックス・阪神) 自由獲得枠
1502試合 163本塁打 697打点 297盗塁 打率.302
<2005年ドラフト>
高宮和也(大体大浪商・徳山大・HONDA鈴鹿・横浜・オリックス・阪神) 希望入団枠
194試合 6勝8敗 21ホールド 189.2回 133奪三振 防御率5.50
<2006年ドラフト>
小松聖(勿来工・国士舘大・JR九州・オリックス) 希望入団枠
159試合 25勝26敗 1セーブ11ホールド 482.2回 388奪三振 防御率4.38
※球団名は入団時
高卒で最も実績を残しているのは、東邦から地元・中日に入団した朝倉健太だろう。3年目に11勝を挙げてブレイクを果たすと、通算で4度の二桁勝利を挙げた。その後は故障などにも苦しみ、16年目のオフに現役を引退した。甲子園優勝投手としてヤクルト入りした正田樹。朝倉同様3年目にブレイクし、9勝を挙げて新人王を獲得。しかし徐々に登板機会を減らし、阪神を経て興農(CPBL)へ移籍。米マイナー、BC新潟、ヤクルト、Lamigoなどでプレイし、現在は四国独立の愛媛マンダリンパイレーツにて、選手兼任監督として現役を続けている。
3球団が競合した河内貴哉は1年目から10試合に登板し、初勝利もマーク。5年目には自己最高の8勝を挙げたが、その後は故障にも苦しみ登板機会が減少。育成契約からの復活も経験したが、2015年オフに自由契約となり、現役を引退した。PL学園2年時の夏の甲子園で、松坂大輔から4安打を放った田中一徳。3年目には112試合に出場するなどレギュラーを掴みかけたが、定着はならず。以降は出場機会が激減し、2006年に自由契約。米マイナーでプレイした後、拓大紅陵、日本経済大でコーチを務めている。
県立校出身の野手ながらドラフト1位指名を受けた野口祥順は、2年目にプロ初打席初本塁打という離れ業をやってのけた。レギュラーにこそ定着できなかったが、ユーティリティプレイヤーとして15年間プレイした高山久はプロ入り後、なかなかレギュラーをつかめずにいた。しかし11年目に116試合に出場すると、初の二桁本塁打も記録。2013年に阪神へトレード移籍し、翌年現役を退いた。2年目に主に中継ぎとして35試合に登板し、2勝を挙げた宮本大輔。しかし、指定難病である黄色靱帯骨化症を発症。2008年に復帰を果たしたが、翌年現役を引退した。
大卒組からは日本球界を代表する野手2人を輩出した。早稲田大から阪神に入団した鳥谷敬は、1年目から101試合に出場するなどレギュラーに定着。遊撃手として667試合連続フルイニング出場、1939試合連続出場、2000本安打と偉大な記録を達成した。今季からは新天地で新たな姿を見せてくれている。投手として入団した糸井だったが、3年目に野手に転向。5年目にレギュラーに定着し、抜群の身体能力を活かし首位打者、盗塁王、ベストナインなど数々のタイトルを獲得。今季も阪神の上位打線を引っ張る存在として期待される。
2年目のシーズン途中からクローザーに定着した馬原孝浩。2007年に38セーブで最多セーブを獲得するなど、7年連続10セーブ以上を記録。オリックスでも中継ぎ投手として活躍し、2015年オフに現役を引退した。1年目から先発ローテーションに定着した川島亮は、10勝を挙げ新人王を獲得。2年目も9勝と活躍を見せたが、度重なる右肩の故障に苦しみ2011年は未勝利。2012年に楽天へ移籍したが、その年戦力外通告を受け、翌年3月に現役引退を発表した。
1、2年目に中継ぎ投手として一軍の戦力になった吉川輝昭だったが、3年目以降は登板機会が激減。トレードで移籍したソフトバンクで中継ぎとして活躍し、再びトレードでDeNAに復帰。しかし翌年戦力外通告を受け、現役を引退した。1年目に初登板初先発初勝利を挙げた筒井和也。その後は苦しんだが、2009年からは中継ぎとして活躍。2年続けて登板機会に恵まれず、2016年オフに現役を引退した。山崎敏は1年目に3勝をマーク。4年目には中継ぎとして45試合登板を果たすが、翌年以降は苦しみ、2010年に戦力外通告を受けて現役引退した。
大卒社会人からは、高宮和也、小松聖の2人が指名を受けた。高宮は1年目から先発・中継ぎでコンスタントに一軍で登板。オリックスを経て阪神では2015年に自己最多52試合に登板し、防御率3.03と活躍。しかし、一軍登板のなかった2年後に戦力外通告を受け、現役を引退。社会人3年目でのプロ入りとなった小松は、2年目に15勝を挙げて新人王を獲得。翌年には第1回WBCの日本代表にも選出された。しかし、以降は精彩を欠き、2013年以降は未勝利。2016年限りで現役を引退した。
81年世代で今季もNPBで現役を続けているのは鳥谷、糸井の野手2人のみ。しかし両者ともレジェンドの域に到達していると言っても過言ではないだけに、今後の活躍がますます楽しみだ。
記事:林龍也
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