ベスト8の投手起用法から考えてみる
第90回記念選抜高等学校野球大会いよいよ今日は準決勝が行われます。
さて、今回はベスト8進出校の投手起用についてまとめてみたいと思います。
まずはこちらの表をご覧ください。
表をご覧になった皆さん。どう感じられるでしょうか。≪試合展開≫、≪点差≫、≪中何日などの日程≫、そのほかにも様々な要素が絡むのですが、色んなことがこの表から想像できませんか?
近年、打撃技術向上が著しい[stadium]甲子園[/stadium]で、上位に勝ち進むためには、投手起用法が確実に変化してきているように思います。
かつて「春の選抜は暑さの心配が少ないので、投手は2人いれば十分」と話していた監督もいました。しかし今は、3人、4人、あるいは5人くらいはいた方が良いという考え方になってきます。
ベスト8進出校で、全試合先発投手が同じだったのは星稜だけ。ただ、星稜も継投をすることが前提での投手起用です。
[page_break:その他のチームの投手起用は?]逆に3試合とも先発投手が違うのが創成館と三重です。この2校には第3の先発投手が必要な時代になったというメッセージが感じられます。社会人野球の都市対抗などの考え方に近くなっている気がします。創成館の稙田龍生監督や昨年の秀岳館・鍛治舎巧監督(現:県立岐阜商業監督)のように、社会人野球の投手起用法を高校野球で応用する監督が増えてきています。
一方で、昔の高校野球のような、1人の絶対的エースに頼ったチームが勝ち上がるのは難しい時代になってきました。試合後半や連戦で少しでも球威が落ちてくると、打者が捕える確率が高くなってきているからでもあると思います。打撃技術が今ほどじゃなかった昔はそれでも乗り切れたのかもしれません。
高校野球はトーナメント。「先を見てはいけない」という言葉を指導者からよく聞きます。先を見るとロクなことはないという思いもわかりますし、その通りだと思います。ただそれと同時に、『監督だけは決勝までの日程を逆算して起用法を考えるべき』ではないでしょうか。大会中の取材などでそう答える必要はありませんが、頭の片隅には逆算も必要な要素だと考えます。投手に着目してこの表の起用法を見ていると、実際に逆算できているのではと感じることができます。
それでも難しいのは継投と、そのタイミング。例えば、試合前に継投を決めていても、先発投手が期待以上のピッチングをした場合は代えにくくなりがちです。「1人の投手がこの好投で大きく成長するかもしれない。そう思うと、継投を決めていても実際にできるかどうか」と話してくれた監督もいました。
もう一つは、投手が試合前の継投プランより前に崩れてしまって交代せざる得ない場合。継投と日程を逆算した投手起用プランを一から再構築しなくてはいけなくなってしまいます。複数の投手がいるのに、前後の試合日程の関係で『この試合はできれば使いたくない』ということもあるでしょう、
試合を采配する監督の腕の見せどころのひとつが投手起用。ここで大事なのは、『失敗したら全て監督の責任だ』と選手たちにも責任の所在を理解させておく必要があるように思います。
さらに秋までの投手起用法を一部リセットして、試合ができない冬に色んな起用法の引き出しを増やしておくのも大事なのではないでしょうか。冬にどれだけの引き出しを増やせるか。これも監督の腕の見せ所です。
日本高等学校野球連盟もずっと推奨してきた複数投手制。その形を考察して見ると色々見えてきます。しかし少子化が進む現代、野球に力を入れる私立校がドンドン投手を増やすと、別の課題も出てきます。それは後日、考えてみたいと思います。
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(文:松倉雄太)