「失敗」から学ぶ 高松商・長尾監督が講演【鹿児島・指導者研修会】
【高校野球指導者研修会】「失敗」から学ぶ 高松商・長尾監督が講演
2017度の鹿児島県高校野球指導者研修会が12月9日、鹿児島市の樟南高多目的ホールであった。15年の明治神宮大会優勝、16年センバツ準優勝を成し遂げた高松商(香川)の長尾 健司監督が「やる気を引き出し、個性を生かす~自ら考える人間力育成~」と題して講演。高校野球指導者だけでなく、中学野球の指導者、大学生ら、約120人が参加し、熱心に学んでいた。
長尾監督は、国体の後で教員の採用がない時代があり7年間、講師をしていた。講師1年目に自分が体育の授業を持っていた生徒が授業の後で手首を切ったことがあった。生徒の変化に気づけなかった自分を反省。「鈍感は最大の罪である」と以後、注意深く生徒を観察し、声を掛けてコミュニケーションを積極的にとって、洞察力や先見性を磨くきっかけになった。
正式採用になって21年間は中学校教諭として勤務。附属坂出中時代は。「気づきがないのは教師の責任」と意識改革し、自ら学ぶ姿勢や練習の考え方を変え、平日1時間しか練習のできない環境の中で県大会優勝などの実績を残した。「『失敗』と書いて『せいちょう』と読む」と野村克也氏の言葉を紹介し、「失敗してダメになった人より、成功してダメになった人の方が多い」と挑戦と失敗を繰り返しながら、学び成長することの大切さを説いた。
16年のセンバツ初戦のいなべ総合(三重)戦では1点差を追いかける9回裏に一死から出塁した俊足の安西 翼が、相手ベンチが伝令を出した直後に自らの判断で盗塁を決めた。究極の自主性とは「土壇場で教え子が師を越えていくこと」でありそのことが「真の教育ではないか」と持論を語った。
樟南二の泊和馬監督はタイトルの「人間力」に惹かれ、前夜のフェリーに乗り当日帰る強行日程で参加した。質疑応答で「人として大切にしていることは?」と問うと「感謝の気持ちを持つこと。家族を大切にすること。生き物の命を大切にすること」と答え、捨て猫やケガをした犬を助けたときに、県大会で優勝できたエピソードなどユーモアを交えながら話していた。今は県大会で勝利を挙げることを目指している樟南二だが、泊監督は「いつか対戦してみたい」とやる気をかきたてられた様子だった。
将来、野球指導者を志す鹿屋体大の吉屋秀人さんは「練習や試合で生かせることを学べた。将来、自分がどんな指導者になったらいいか、明確なものを持っていなかったが、参考になる話がたくさん聞けて良かった」と言う。企画した県高野連監督会事務局の谷口裕司監督(鹿児島玉龍)は「長尾先生は中学野球の指導経験もあり、高校だけでなく、中学の指導者や将来、指導者になりたい学生にとっても心に響く素晴らしい話をしていただいた」と感想を話していた。
(文=政 純一郎)