廣中蒼磨(益田東-大産大)「聴覚障害乗り越え公式戦マウンドへ」
5月15日に行われた阪神大学野球連盟の春季リーグ戦 大阪産業大学と追手門学院大学の試合。8回から大阪産業大学の三番手としてマウンドに立ったのが廣中蒼磨投手(3年・益田東*1)。今シーズン初登板で2イニングを無失点に抑えました。
廣中投手は先天性の難聴で生まれつき両耳がほとんど聞こえません。会話は手話か指文字。高校時代は寮生活でしたが、実家のある奈良に戻り、大阪産業大学に進学しました。
「彼は度胸がある。感性も豊かで、試合の後に書くレポートも翌朝一番に私の所で持ってきます」と宮崎正志監督は話します。大学の野球部は150人以上いる大所帯ですが、1年秋から登板機会を与えるなど大きな期待をかけられてきました。
「入学するときには、音が聞こえない世界ってどんな感じなんだろうと私も考えました。でも、そのハンデを彼は自分で消していますね。車も運転しますし」と指揮官も成長を感じています。
4年生でセカンドを守る首藤将生選手が益田東の1つ先輩で、率先してチームに指文字を広めたそうです。また、同じ3年生で主務の福森凌マネージャーは、廣中投手が最後の夏の島根大会初戦で対戦した立正大淞南出身。対戦相手との大学での再会に「まさか」と最初は驚いたそうです。昨日も試合後にはアイシングを手伝いながら、指文字で会話をしていました。ちなみに、教室が広い大学の授業では同級生の野球部員が5、6人でサポートチームを組み、廣中投手をバックアップしています
将来の目標はプロ野球選手という廣中投手。165センチ68キロと小柄ながら、テンポの良いピッチングが光ります。
今春のリーグ戦では3位以下が決まり、残念ながら優勝を逃しましたが、秋以降、ぜひ神宮のマウンドで投げている姿を見たい投手です。
*1:益田東3年の時はエースとして活躍
(文:松倉雄太)