2010年07月26日 わかさスタジアム京都

京都外大西vs京都翔英

2010年夏の大会 第92回京都大会 決勝
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優勝に喜ぶ京都外大西ナイン

主将・久須美を中心とした『一体感』。

 なかなか言えた言葉ではない。ましてや、大会中にあるキャプテンが、である。

 「監督さんが、僕を1年生から使っているからとか、僕がキャプテンだからという理由で(僕の)起用にこだわるのはやめてください。勝つことにこだわってください」。

 1回戦の東宇治戦後、京都外大西の主将・久須美 亮太は上羽監督へそう進言したのである。

 1年生から京都外大西のマスクをかぶる久須美は1回戦の東宇治戦で、失策を繰り返した。突然、何かが崩れ落ちたかのような、ミスの連発だった。その東宇治戦は、接戦の末に勝利したが、薄氷を踏む勝利だった。上羽監督は、途中から久須美を下げ、2年生の平野を投入している。ただそれは、ミスを連発する主将への制裁と言うよりも、場当たり的なものにすぎなかった。

 だから、勝利のため、久須美はそういったのだ。

 東宇治戦から11日後の、京都大会決勝戦。京都外大西が3年ぶりに京都の頂点に立った。京都外大西のマスクをかぶったのは久須美だった。優勝のインタビュー、久須美はこう語ったものである。

東宇治戦ではもう少しで負けるというところまで、チームを追い込んでしまって、ベンチ、スタンドに借りを返さないといいけないという想いだった。スタンドのみんなの応援のおかげで勝てました。このチームは、スタメンの9人とか、ベンチ入りの20人とか、そういうチームではなく、苦しい時にみんなで支え合える温かいチームです」。

 一時はどん底まで落ちた主将のお立ち台での笑顔は、それまでの苦しみを享受したものにしか分からない、果てしなく大きいものがあった。

3年ぶりの王座奪還を果たした京都外大西にとって、この1年間は苦しいものだった。昨夏の京都大会準決勝、指揮官自身も、そして、誰もが、自信を深めていたチームで、京都外大西は頂点に立つことができなかった。「このままでは、低迷期に入ってしまうんじゃないかくらいの危機感だった」と小金コーチは回想する。

 そこで、上羽監督以下、チームが取り入れたのは「全員でやる」ということだった。

毎年、90人ほどの部員を抱える京都外大西は、メンバーを絞って練習することが多かった。上羽監督は言う。「5月くらいですかね。それくらいから、メンバーは絞っていました。それがことしは7月くらいまで、全員がノックを受けたし、バッティングもやりました。そうしたことで、去年にはなかった『一体感』が出てきました」

久須美が優勝インタビューでそう言ったように、ベンチ入りだけじゃない、大きな力が彼らの支えになった。

その最たる試合となったが4回戦の大谷戦である。久須美がスタメンから外れた試合だが、相手の大谷はチャレンジャー精神を前回に京都外大西に向かってきた。その気持ちに、ナインは前半から劣勢さらされる苦しい試合を強いられることになった。9回を迎えるころには2点のビハインドがあった。

9回表、先頭の打席には久須美がたった。四球を選んで出塁、そこから同点劇、延長戦での逆転劇へとつながった。実は、この試合、京都外大西は19人の選手が試合に出場している。先発がエースの中村が務め、2年生の佐藤、最後は1年生右腕・松岡が投げた。試合途中で、指を突いた下村が下がると、一塁手の柴田が三塁へ回るなどポジションを移動。試合展開から二塁手・荻野に代打を送られると、そこに代役の井上が遊撃手に入って、二塁に前田が回った。

この試合で驚かされたのが、どれだけ選手が入れ替わっても、戦力がそう落ちなかったことだ。その象徴が終盤に入っての二桁をつけた選手たちの好プレーである。9回裏、無死一塁の場面で三塁手の柴田が、相手の送りバントを阻止して、併殺を成立させた。10回裏には、三塁に走者が射る中でボテボテのゴロを遊撃手の井上が裁いた。レギュラーだけでなく、背番号二桁の選手が、京都外大西の伝統・守備の堅実さを見せたことは、このチーム自身の水準の高さを証明するものだった。

「練習をみんなでずっとやってきたから、戦力が落ちずに戦えたとと思います。久須美が東宇治戦で訳が分からない状態になって、代役の平野が普通に活躍できたのも、全員で練習を続けてきたから」と上羽監督は胸を張る。

また、そうした「一体感」は、彼らが取り組む「全力疾走」や「カバーリング」においても、実践されている。
「カバーリングはミスが起きないと、意味を感じないじゃないですか。でも、200回に一回起きるか分からないことに、全力でやることで、1球に対するチームの集中力が変わったし、1球の怖さをみんなが分かっている」(久須美)

 昨夏の敗戦から、「何かを変えないといけない」と指揮官自身が踏み切ったチームは、そうして、この夏、華を咲かせたのである。「久須美がキャプテンになった時に、最初に何を言うんかなと思ったら、『僕らは誰も甲子園に行ったことがない。どういったらいけるか分からないから、指導者から言われることを信じてやるしかない。受け入れてなんでもやる』といったんですね。顔は大人しいですけど、すごくクレバーな選手。彼のキャプテンシーは素晴らしかった」と上羽監督はいう。

 京都外大西が実践する野球は3年前とそう大きく変わることはない。投手を中心に、堅実に守り、足を生かした攻撃で仕掛けていく。それはほとんど伝統に近いものかもしれない。ただ、中身が違う。抜群のキャプテンシーを誇る主将・久須美と部員全員の一体感で戦う野球。それが、今年の京都外大西である。

久須美に関して言えば、2年前、彼が夏の大会に登場した時は、それこそ、驚いたものだった。これほどに仕切れる1年生キャッチャーを見たことがなかったからだ、そして、同時に、当時の上羽監督が口にした言葉も耳を離れない。

「05年準優勝したときに、本田が入ってウチのチームが落ち着いたように、久須美が入って、チームが落ち着く、そんな存在です」

 彼が甲子園に行くまでには2年もかかったが、久須美を中心とした京都外大西が甲子園で何を果たすか、個人的には注目していたい。

(文=氏原 英明




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