中部商vs八重山商工・宮古工
152Kmの平良海馬。15奪三振の中濱太洋。観ている者を惹き付けるベストゲーム
中濱太洋(中部商)
沖縄県の高校野球史に新たなページを刻む可能性を持つ選手。それが八重山商工の平良海馬だ。昨年秋に145kmをマークした平良がさらに伸びているのかどうか。それをひと目見たいファンは大勢いたが、部員不足という壁が春の不出場をはらんでいた。しかし沖縄宮古工・佐久原監督と八重山商工・末吉監督、それにナインたちが連合チームとして出ることに同意。海を隔てた難しい環境の中での船出だったが、連合チームはこの日、出来ることを精一杯やってのける素晴らしい戦いを見せてくれた。
先制したのは選手個々の能力に勝る中部商。2回、6番前田亮がライト前ヒットで出塁すると犠打で二塁へ。8番町田優気の当たりはセカンドへ。しかしエラーしてしまい、その間に前田が本塁へ生還した。3回以降は、平良の前に三者凡退の山を築いてしまっていた中部商だったが8回、先頭の3番知念侑輝が左中間を破る三塁打。続く徳田大夢がキッチリとセンターへ犠牲フライを上げて欲しかった追加点を奪った。
投げては中濱太洋が、平良に勝るとも劣らないピッチング。球速表示では勝てない平良に対する、並々ならぬものを感じたのは、その平良が打席に入ったときだ。1回一死一塁での平良、3回は無死満塁での平良を迎えた中濱は、連続して空振り三振を取ってみせた。8回を終えてヒットは僅か1本のみ。130km後半のストレートは低めをつくだけでなく角度を保つ。付け入る隙は無いように思えたが9回、連合チームに風が吹く。
徳元亮真(八重山商工)
先頭の仲間里樹がセンター前に運び平良へ繋げる。2点のリードを持つ中部商としては、無理に勝負に行くところでもない。平良を避け、3三振を奪っている松川竜二との勝負へ。しかし、ここで連合チームベンチから好采配が出る。送りバント。二・三塁とプレッシャーをかけると5番徳元亮真の当たりはサードへ。突っ込みとグラブが打球と僅かに会わず、記録はエラー。二者が生還したが、連合チームの思いが乗った打球だからこそ起きた土壇場での同点劇と言えただろう。
感動を生んだ連合チーム。しかし、ここまでだった。10回、「僕の送球ミスで。僕のせいで負けてしまった」と試合後の平良。バント処理をしたものの、二塁へフィルダースチョイス。その後もピッチャーゴロを二塁へ放るも、野手とのタイミングが合わず送球が逸れる間に中部商に決勝点が入った。
タテジマのユニフォームで力のある先輩たちとプレーしてきた平良だからこそ、連合チームならではの党内連携プレーが出来ない難しさがあった。それゆえの悪送球だったと、ここは思おう。商業高校野球大会、そして最後の夏。心が成長した平良を楽しみに待っていたい。
勝った中部商は、6回に最速152kmをマークした平良のストレートと130km後半のチェンジアップ(だろうか)に苦しめられたが、やってきたその対策が実ったゲームだったと言えよう。何より10回を投げて15奪三振をマークし、平良に勝るとも劣らないピッチングを披露してくれた中濱の躍動に、この先への期待が高まる。
何はともあれ、平良と中濱の投手戦と連合チームの意地が見られたこの試合は、2017年の沖縄県高校野球ベスト5に間違いなく入る好ゲームであった。
(文・写真=當山 雅通)
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