2015年の高校野球を占う【鹿児島編】 鹿児島実、神村学園などの実力校を脅かす新鋭校の存在
神村学園、鹿児島実業、樟南と全国でも評判の強豪校が多い鹿児島勢。そんな鹿児島県も新たな学校の登場で盛り上がっている。今年の鹿児島県の注目チーム・注目選手を紹介していきたい。
神村学園が一歩リード!阻むのはどこか?
山本 卓弥(神村学園)
昨夏を経験したメンバーが豊富に残る神村学園が秋の鹿児島大会を制し、九州大会でも4強入りして2年連続となるセンバツ出場を決めた。投手2本柱の北庄司 恭兵(2年)、新里 武臣(2年)、捕手の豊田 翔吾(2年)、主砲の山本 卓弥(2年)と攻守の主軸に経験豊富な選手を擁し、秋の戦いぶりを振り返れば、他のチームに一歩抜け出た印象がある。今年の鹿児島は神村学園を筆頭に、それを他校が追いかける展開が予想される。
センバツに挑む神村学園は、
「甲子園は出るところではなく、勝って結果を残すところ」(児玉 和也主将・2年)
「一戦一戦を大事に戦って全国制覇」(小田 大介監督)
と志を高く掲げる。
冬場のトレーニングでは体幹部の強化や、股関節、肩関節の柔軟性向上などを重点的に取り組んだという。不動の4番・山本は、実績があるだけに厳しいマークにあうことが予想されるが「それでも結果が出せる勝負強さを身につけたい」と張り切る。
強力打線のイメージが強いが、小田監督は「投手を中心に守備からリズムを作る」野球をテーマに掲げている。昨春は初戦の岩国(山口)戦に勝利したが、2回戦の福知山成美(京都)に大敗。リベンジマッチを掲げる今春の戦いぶりは、他校も大いに注目している。
これを追う対抗馬には鹿児島城西、鹿児島実、樟南を挙げたい。昨秋準優勝の鹿児島城西は、地区大会で神村学園に土をつけ、九州大会で初戦突破した実績がある。前チームのように長打力のある選手はいないが「1人1人が頭を使って工夫をする野球を心掛けている」(原田 塁主将・2年)。右横手の上原 幸真(2年)、右の本格派の平 将太(1年)、左腕・渡邊 雄大(2年)とタイプの違う3投手が安定しているのも心強い。神村学園のいない春の鹿児島大会は第1シードで臨む。ここで勝って夏への弾みにしたいところだ。
鹿児島実、樟南の名門2校も戦力的には十分上位をうかがえる。鹿児島実は核弾頭・室屋 太郎(2年)、1年生ながら4番に座る綿屋 樹ら左の強打者がそろい、打線の破壊力は神村学園に勝るとも劣らない。今年で学校創立100周年を迎える。11年春以来遠ざかっている甲子園へ、並々ならぬ意気込みで挑んでくるだろう。
樟南は、畠中 優大―前川 大成の1年生バッテリーが安定している。カーブ、スライダーなど変化球でストライクがとれるようになったことで投球の幅が広がった。昨秋の1年生大会を制し、上級生の刺激にもなった。堅守と技を利かす伝統の樟南らしいチームに仕上がりつつある。
鹿児島市外勢の躍進も注目
前山 優樹(大島)
昨夏、秋と連続して4強を鹿児島市外勢が占めたように、地方勢の躍進も目覚ましい。昨秋は出水、加治木と地方の県立進学校が4強と健闘した。一昨年の尚志館、昨年の鹿児島大島、鹿屋中央と地方からの甲子園初出場が相次ぎ、これまで強固にあった鹿児島市内勢優位の構図が変わろうとする流れは、今年も続きそうな気配だ。
出水、加治木ともドラフト候補に挙がりそうなスター選手は不在だが、計算できるバッテリーがいてチームにまとまりがある。昨秋8強入りした鹿児島川内とも合わせて、今年の鹿児島を盛り上げてくれそうな地方校として注目したい。
4、8強クラスに食い込んできそうなチームは公立、私学、鹿児島市内、地方を問わずにひしめいている。
1年生左腕・有木 和也、左の好打者・武隈 光希(2年)、福山 匠(2年)を擁する鶴丸は上位をうかがうだけの戦力は秘めている。出水中央、れいめいは鹿児島川内、出水と北薩地区で切磋琢磨しながら夏の甲子園を目指す。尚志館や鹿屋中央のセンバツで大隅地区が、鹿児島大島で離島が注目される中、乗り遅れまいと張り切っている。
このほか注目校としては薩南工も面白い存在だ。神薗 康太(2年)、上塩入 健斗(2年)の左右2本柱を擁し、昨秋、鹿児島商、鹿屋中央と強豪校を破ってベスト16に食い込んだ。攻撃力がついてくれば、上位の壁を破ることは夢ではない。昨夏4強の国分中央はエース前田 準(2年)、田島 広己(2年)ら昨夏を経験したメンバーが残っている。このところ秋、春と結果は残せなくても、夏には必ず上位に食い込んでくるだけに、注目しておきたい。
昨春のセンバツを経験した前山 優樹(2年)のいる鹿児島大島、竹之内 恒輝(2年)のいる鹿児島情報、内田 悠亮(2年)のいる鹿児島玉龍など、昨秋は初戦敗退だったが、県下屈指の右腕を擁するこれらのチームがどう巻き返してくるかも、春の見どころに挙げられる。
春の鹿児島大会はセンバツ出場の神村学園をのぞく昨秋8強の7校がシードされるが、シード校が序盤で消える展開も十分に予想できる。一足先に甲子園を経験する神村学園がこのまま突っ走るのか、それとも地元でしのぎを削って力をつけた他校がそれを阻むのか、現時点で見える夏の注目ポイントだ。
(文=政純 一郎)
今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から!
尚志館高等学校(2013年01月09日公開)
れいめい高等学校(2011年08月16日公開)