Interview

ボストン・レッドソックス 上原浩治 選手 (後編)

2013.02.05

ボストン・レッドソックス 上原浩治 選手 (後編) | 高校野球ドットコム

 2月はMLB経験者から高校球児の皆さんへのメッセージを特別寄稿で連載でお届けしています。第2弾は、先日の上原浩治選手のインタビュー記事【前編】に続いて、今回はテクニカル面を重点的に語っていただいた【後編】を公開します!

前編はこちらから!
ボストン・レッドソックス 上原浩治 選手 (前編)

上原浩治が語る“遠投の重要性”

――常時140キロの真っ直ぐとフォークを武器に、NPBやMLBでも活躍を残してきた上原選手に、改めて『ストレートの重要性』を伺いたいと思います。

上原浩治選手(以下「上原」) 僕は、ピッチャーというのは、しっかりとしたストレートが投げられない限り、他の変化球も生きないと思っています。まずは、しっかりとしたストレートが投げられるということが、とても大事ですね。

――上原投手のストレートの強みはどこだと思いますか?

上原 僕は球速があまり出ないので、キレで勝負する投手だと思っています。キレがなくなったら、簡単にホームランを打たれますし、キレは、これからもずっと求めていくことであり、課題でもありますね。

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「遠投は『ライナー』で投げることを意識」

――キレを求める意味で日頃、『遠投』ではどのような意識で投げていますか?

上原 遠投は、体全体を使わないと遠くへ投げることは出来ないので、体全体を使う動作として遠投が一番いい練習法だと思いますね。遠投は上へ投げることが出来れば、遠くへ投げられると思う方が多いと思うのですが、僕の場合は低い軌道で、いかにして100メートルを投げられるかというのを課題にしています。

――高校生の場合は、どのような意識を持つのがいいでしょうか?

上原 高校生でも100メートルを投げられる選手はいると思いますけど、80メートルでもいいので、とにかく『上』に投げることではなく、『ライナー』で投げることを意識して投げてほしいですね。
 また、遠投時は、体の全てに意識を置きますよね。体の全ての力がボールに伝わらないと投げられないですから。遠投をした翌日には、体が張ると思うんですけど、張る部分はまだ筋力も弱いところなんだなと分かりますね。

――NPB時代も、上原投手といえば、ブルペンに入らずに遠投で調整をしていたイメージがありましたね。

上原 『遠投といえば、上原だ!』という印象を植えつけたと思います。僕は試合前にブルペンに入ることはなかったですが、それは今でも、僕だけじゃないですかね。遠投ですべて調整しているんです。遠投は、僕の生きる術だと思っています。

――高校生の場合だと、遠投を取り入れた調整法は出来るのでしょうか?

上原 高校生は試合数が少ないので、遠投だけの調整は難しい部分もあると思いますが、もしも試合日から3日ほど空くというならば、強い遠投をして調整してもいいと思います。ただ、明日も試合をやるという場合は、遠投をクールダウンに入れるというのも手だと思いますね。

[page_break:キャッチボールが最も重要である!]

キャッチボールが最も重要である!

――先ほどの真っ直ぐのキレを磨くという部分で、他にオススメの練習方法はありますか?

上原 ジャイアンツ時代にやっていたことは、サードゴロを打ってもらって、サードからファーストへ思いっきり投げる練習をやっていました。あと、塁間で助走をつけて投げるとか。そういう練習は、体の力をボールに伝えるにはオススメですね。これも体全体を使わないと投げられないですからね。やりこめば、肩は強くなると思うんですけど、やりすぎは気をつけてくださいね。

――続いて、ストレートを生かすための、変化球のこだわりについてお伺いしたいと思います。

上原 僕の場合は、フォークボールしかないですね。とはいえ、フォークボールを生かすも、殺すのもストレートだと思っています。

――変化球とストレートの投げ分けで工夫していることはありますか?

上原 投球フォームを一緒にすることですね。次は変化球がいきますよというフォームは打者も感じますからね。ストレートと変化球を投げるフォームを一緒にすることですね。

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「キャッチボールの意識が上達につながる」

――打者との間合いは、どのように図っていますか?

上原 打者は関係ないですね。自分のペースで投げることを大事にしています。今のテンポは、大学時代から継続していることですね。自分のペースで投げるという部分は、大学時代と変わらないですよ。キャッチボールも、捕ってから速いとよく言われますけど、それは僕にとって普通なんです。意識して速くしているわけではなく、体に染み付いているものだと思っています。

――では、コントロールを磨くために、どのような練習を取り入れているのでしょうか?

上原 キャッチボールで意識して、投げようと思っているところに投げられるかどうか。それだけです。よく、キャッチボールは『肩を温めるだけのもの』と考えている人がいますが、そんなのは違いますからね。いかに狙ったところに投げられるか。投げる相手が、立っているか、座っているだけの違いですから、キャッチボールでもコントロールを意識することが、上達を早めると僕は思います。

――なるほどですね。では試合前、上原投手はどのような準備をされてマウンドに上がっていくのでしょうか?

上原 まず僕はキャッチボールで、ストレート、変化球を投げ込みます。それを意識して、次にブルペンに行った時に、ボールを持ちながら、こういう感覚で投げられれば大丈夫だという感覚で、試合に入りますね。キャッチボールは基本です。でも、この基本が第一ですから。基本を疎かにして、応用は絶対にできないですからね。キャッチボールは本当に大事だと僕は考えています。

続いて、上原選手にはMLBに挑戦する中で、改めて学んだことや気づいたことを伺いました。

[page_break:MLBのマウンドに上がる覚悟]

MLBのマウンドに上がる覚悟

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ボストン・レッドソックス 上原浩治 選手 (後編) | 高校野球ドットコム

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――上原選手は、高校時代では、世界で戦うことを少しでもイメージされていたのでしょうか?

上原 全くないですね。僕は、高校時代、試合にも出ていなかったので、日本のプロ野球で投げていること自体、イメージしていませんでしたから。先のことは、まったく見ていないですね。“遠い場所”ではなく、道が違うと思っていました。実際に世界を舞台に戦うことを具体的にイメージするようになったのは大学時代からですね。

――大学時代は、1年生秋に中南米へ遠征。大学3年時は、日米大学野球選手権で大会タイの14奪三振も記録しました。当時の各国の打者や野球への印象は?

上原 世界って面白いなと思いましたね。それまでは僕が日の丸を背負って投げることが全く想像できなかったので、ワクワク感が大きかったですね。
 各国の打者は、常にフルスイングだったのを覚えています。日本は、三振したらダメだという風潮があるじゃないですか。三振になりたくないから、ちょこちょこと当てていく打撃。でも海外は三振しても、内野ゴロになろうが、アウトはアウトなので、悔いに残らないスイングをしてきました。でも、それが気持ちいいですね。抑えても、打たれても気持ちいいと思いますし、まさに1対1の勝負を楽しむことができました。

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「日本人投手の武器はコントロール」

――大学卒業後、99年に巨人に入団し、09年にMLBで初登板を果たしました。今、上原投手はMLBでも活躍をされていて、日本人投手には、どんな武器があると感じますか?

上原 日本にいる投手はみんなコントロールが良いと思いますね。中学、高校からしっかりと教育されているので、日本人の投手の方がコントロールはいいと感じます。細かい出し入れも、日本人投手の方が優れていると思います。

――上原選手が世界を舞台にして投げる中で、どんな意識を持ってマウンドに上がっていますか?

上原 僕は、グラブに日の丸の刺繍を入れていて、日本代表とまではいかなくても、日本人としての誇りを持って投げているつもりなんですよね。チームの中で日本人は一人、二人しかいないじゃないですか。だから大げさかもしれませんけど、日本を代表として投げているという意識はありますね。

 自分が活躍することによって、これからメジャーでやりたい選手たちが入りやすくなりますし、ダメならば評価は落ちるわけですから。そのへんは大変なポジションだとは感じますが、メジャーに行くにはある程度の覚悟がないといけないと思っています。

――世界で勝負できる選手の共通点というのは、何かありますか?

上原 細かいことは気にしないことです。打たれても、半分『しゃーない』と開き直ることができますし、かといって力を抜くわけではないですからね。日本の場合は、打たれたらどうしよう、監督に怒られるという気持ちが先行しているんですよね。アメリカの場合、打たれても怒られることはない。打った打者が上だったという考え方ですからね。

――そういった部分では、常に自分の力で試され、評価に結びつくわけですね。

上原 そうですね、結果が全てですからね。アメリカは情もなく、シーズン途中でもすぐクビになる世界。そういう中でプレーするということは、自分の心の中がざわつきますし、ワクワクしますよね。

――では最後に、夢を追いかけて、日々上達したいと熱い思いを持つ高校生にメッセージをお願いします。

上原 あまり先のことよりも、まずは目先のことを一生懸命やってほしいですね。10年後よりも、今日の練習、今日の試合を一生懸命やることですね。その積み重ねが10年後につながると思います。

高校時代は控え投手でありながら、キャッチボールなど基本を最も大事に積み重ねてきたことで、大学時代に花開き、そして現在は世界を舞台に活躍をしている上原投手。
 自分自身の軸をぶらさない上原選手の言葉から、高校球児のみなさんを大きく成長させるヒントが数多くありましたね。上原投手、ありがとうございました。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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