高岡第一高等学校 森本 龍弥 選手
第124回 高岡第一 森本 龍弥 選手2013年01月03日
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北信越屈指の大型ショートストップとして注目された高岡第一の森本龍弥選手。2012年秋のドラフトでは北海道日本ハムファイターズから2位指名を受けました。
森本選手といえば、一冬でスイングスピードは5キロアップ、2年半で体重20キロ増。課題であったアウトコースや、体の硬さまで克服してきました。一体、この3年間どんな練習を積んできたのでしょうか?
スイングスピード153キロの森本龍弥の打撃
高岡第一 森本龍弥選手
――「高岡第一の森本龍弥」その名前がプロのスカウト陣のデータに、一挙にリストアップされたのは、森本選手が3年生の5月頃でしたね。練習試合で、あるプロ注目の投手からホームランを打った日ですね。
森本龍弥(以下「森本」) そうですね、それまで全く知られていなかったですよね。あの時は、インコース高めのカットボールをレフト方向に打ちました。球も本当に速くて、打った時は、詰まった感覚でレフトフライかなと思ったんですけど、自分がイメージした以上に伸びていって、このホームランがその後、打者としての自信につながっていったというのはありますね。
――3年生最後の夏は、富山大会3回戦で敗退しましたが、打席では常に甘い球は見逃しませんでした。森本選手は、普段打席にはどんな意識で立っているのでしょうか?
森本 僕は打席では、自分の打てるポイントに絞れば、絶対に打てると思っています。球がいろんなコースに来ると思ってしまうから、手が出せなくなってしまう。でも、本当にここだけは絶対打つというところを決めれば打てると思って打席に立っていますね。
――森本選手は、高校1年生の頃は、外の球が苦手だったと伺いました。
森本 そうなんです。入学当初は打てなかったですね。でも、練習を重ねたら外角の球も右方向に長打が打てるようになりました。実はこれも、僕はポイント次第だと気付いたんです。僕の場合は、インコースが得意だと思っていたので、逆にアウトコースに目を向ければいいと思って、打席に立つようにしました。
次第に『コースを読む』というよりも、ポイントを絞るだけで体が自然に反応するようになったんです。
――インコースはなぜ得意なのでしょうか?
森本 そうですね、自分自身としてはスイングスピードの速さを求めて練習しているので、その分、パッと回転してインコースに対応できるからだと思っています。
今年の春頃にスイングスピードを測ったときは、最速153キロでした。150キロ出したいと思って、とにかくバットを振りましたね。
――なるほど、『素振り』をする時は、どのような工夫を持って行っているのでしょうか?
森本 まずは竹バットを使います。数は意識せずに、納得するまでやる。だから、早く終わる時もありますし、延々とやる時もありますね。数は数えてても、集中していると忘れてしまうんです。
また、素振りをする時は必ずイメージします。ただ“振る”のではなく、『こういう投手がいて、こういうコースに来る』ということをイメージして、一本一本振っていきます。
――コースを想定して振る際に意識しているポイントは?
森本 アウトコースであれば、ワンテンポ 間を置いて振る。インコースなら、速く回らないといけないなど、タイミングの取り方を変えていきます。変化球であれば、タイミングを外されても、低めを拾う練習とか、間の置き方など意識していますね。
――試合でも、その素振りが生きてくるのですね。
森本 これだけ毎日の練習で、自分が納得まで振り込んでおくことで、試合では自分のスイングをすることだけ意識していればよくなるんです。練習では、ひたすらスイングを身に付けることを意識する。試合ではそれを発揮する。そういう思いで、日々取り組んでいますね。
――森本選手がそこまで素振りの大切さに気付いたのは、何がきっかけだったのでしょうか?
森本 高校の時以上に、小中学校の時のほうがもっと素振りに時間をかけていました。高校と比べて、それだけ暇があったんですけど(笑)それでも、一日も欠かさずやっていましたね。
きっかけは、父です。『素振りしろ!素振りしろ!』とよく言われてました。自分でも野球が好きだったので毎日続けることができました。
365日続けることで手に入るフォーム
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――続いて、フォームに関して伺いたのですが、高校に入ってからフォームはどのように変えていったのでしょうか?
森本 構えについては、最初は低く構えていて、それでヘッドが下がって打てなかったので、高く構えるようになりました。それによって、ヘッドが寝ることも少なくなり、インコースの捌きが上手くなったなと感じます。
ホームランを打つにも、ヘッドが寝ていると、ドライブがかかったり、変な回転がかかってしまうので、ヘッドを立てることによって、バットのスピンで飛ばすことが出来ますね。
また、高校入学時はトップが低く、足を上げて打っていたんですが、それでは打てず、高校では通用しないと思ったので、1年の夏から速い球に対応するために、トップを高くして、すり足で打つようになりました。プロの選手は足を高く上げて打つことが多いんですけど、僕の場合はすり足で打った方がしっくりきますね。
――インパクトのポイントでの工夫はありますか?
森本 僕はだいたいヘッドの前ですね。ただ、インコースだと、スイングスピードでパッと打てますが、アウトコースだと、もう少しポイントは後ろになります。ヘッドを後ろに置いて打つイメージで、振り遅れてもファール、タイミングが合えば長打が打てるようにしています。
――自分自身のイメージを形にするまでに、やはり先ほど伺った素振りが練習法としては一番ですか?
森本 素振りは本当に大事なんですよね。ノックをやれといわれてもスペースがないじゃないですか。素振りだったら小さなペースでもいつでも出来るので、1日10本でもいいので、やった方がいいですね。
今日1000本したから、明日はしないでは意味がないと思うんです。今日10本でもいいから、明日も10本。それを365日やり続けて、3650本。毎日続ければ、それほどの数になるので、毎日継続することが大事だと僕は思います。
そして、素振りは1本ごと意識する。たった10本であっても、時間をかけて、意識を持ってやるだけで効果があります。最初は面倒くさいと僕も思っていた時期もありました。でも、結果を残してから嬉しくて、素振りの重要性を自分の中で考えるようになったんです。
僕の中では本番で結果を残すための準備の順番というのは、『素振り→打撃練習→実戦練習→試合』。まずは素振りがあっての、打撃だと思っています。
1日2キロのご飯&地獄のトレーニングで体作り
――次に、体作りについて教えてください。高校入学時から現在で、体重はどのくらい増えたのでしょうか?
森本 入学当時は72キロぐらいだったんですけど、今は90キロで、約20キロ増量しました。チームとしての課題が食べることでしたので、トレーニングもやるんですけど、とにかく食べながら大きくすることを意識しました。
――どのくらいの量を食べていたのですか?
森本 どんぶりという単位ではなく、“グラム計算”で朝ごはんは500~600グラム、夕飯は800~1キログラムのお米を食べて、その上でおかずを食べる。朝、寝起きの中での600グラムはきついですよね。入学当初は、そんなに食べるほうではなかったので、最初は苦しかったです。でも、徐々に慣れていって、その量を食べた後、自主トレをすると、お腹がまた減るんで、さらに夜食を食べたりしました。
――トレーニングはどんなメニューをされていたんですか?
森本 高岡第一はウエイトトレーニングのように器具は使わないので、腕立て、腹筋など、シンプルな動きで鍛えていきます。あとは体幹を鍛えるメディシンボールも使いましたね。『すごくきつい』というメニューはないんですが、これも毎日継続してやったことが大きかったですね。
――下半身の強化はどんなことをされたんですか?
「入学時はしゃがむことすら出来なかった」
森本 走り込みです。僕は高校野球生活の中で、一番自慢出来ることは、どこの学校にも負けないぐらい走ったことですね。
ランニングロードというのがあるんですけど、6~7キロぐらい丸太を持ったまま、1周30秒×30本。それを達成できなかったら、ペナルティとして、スクワットをやったりする。もう1つのメニューが、スクワットをひたすらやったあとに、砂浜で100本ダッシュ。この2つのメニューを12月~2月は毎日、交互にやるんですよ。本当につらかったですね(笑)だから、2年生と3年生では足の太さが圧倒的に違うと思います。
――入学時は体も硬かったとか?
森本 それが当時の一番の課題でしたね。普通に股割りや、しゃがむことも出来ないくらい硬かったんですが、毎日練習の合間に股割とストレッチをすることで、今ではすごく柔らかくなりました。
守備も打撃も股関節が一番大事なので、柔軟性がついたことで、変化球を拾ったり、低めにも強くなりましたね。体が硬い選手もやればやっただけ、柔らかくなりますよ。
今後の目標と、高校1・2年生へメッセージ
―高校生活ももうすぐ終わりを迎えます。今、振り返ってみて、親元を離れて富山県・高岡第一に入学し、そこで得てきたものはどんなことでしょうか?
「自分の信じた道を歩け」
森本 入学した当初は、1~2週間はホームシックになったこともありました。でも、富山で出会った方々の支えもあって、それがとても励みになりました。山口監督と出会えたことも僕にとっては大きかったです。監督さんからは本当にたくさんのことを教わりました。
また、親元を離れて、3年間野球と向き合ってきました。ドラフトの日には、自分の名前が呼ばれてから、家族に連絡したら、親父が「ホンマお疲れさん」と言って喜んでくれて、今まで恩返し出来なかったんですけど、やっと恩返しできたかなと思いました。
―今後の目標として、どんなスタイルのプロ野球選手になりたいと思いますか?
森本 同じ日本ハムの小谷野(栄一)選手のようなプレーヤーですね。最終的には長距離打者になることなんですけど、まずは一軍定着です。プロでは40歳までやりたいと思っているので、小谷野選手の打撃や守備を盗んでいきたいですね。
―では、最後に後輩球児の高校1、2年生のみなさんへ夢を叶えるためのメッセージをお願いします。
森本 自分の信じた道を歩け。僕はこの言葉を大切にしてきました。自分にこれが合っていると思ったら、それを続けて、その代わり、人の意見も聞く。
実は多くの高校生は、甲子園に行けたらいいなという思いだと思うんです。僕自身もそういう気持ちがきっとどこかであって、だから夏は3回戦で負けたと思うんです。でも、甲子園というのは、本気で行きたいと思っているやつらが、たどりつく場所だと思う。本気で行きたい、叶えたいと思う気持ちがあれば、必ず野球が上達すると思います。だから、強い気持ちを忘れずに残りの高校野球を取り組んでほしいですね。
森本龍弥選手、ありがとうございました。
この3年間、自分で考え、気付き工夫しながら、前に前に進んできた森本選手。自分で決めたことを毎日続ける姿勢、ぜひ取り入れていきたいですね。