Interview

東北楽天ゴールデンイーグルス 聖澤 諒 選手

2012.07.25

第109回 東北楽天ゴールデンイーグルス 聖澤 諒 選手2012年08月25日

 今年のオールスターゲームに、選手間投票選抜から初選出された楽天イーグルスの聖澤諒選手。長野県立長野松代高時代はプロ野球への夢はとても遠いものでしたが、国学院大に入学してから、徐々にその夢は、本物の目標へと変わっていきました。
 努力の人・聖澤諒。彼は、一体、どんな考えを持って、日々野球に取り組んでいるのでしょうか。今、注目の聖澤選手に、「走塁・守備・打撃」について幅広くアドバイスをいただきました。

走塁編:自ら生み出した盗塁の成功理論とは?

”盗塁の5ポイントを語る聖澤選手”

――聖澤選手といえば、やはり走塁のイメージが強いのですが、スタートを切る際に意識しているポイントは?

聖澤諒選手(以下、「聖澤」)  5歩目までにトップスピードに入れば良いと思っています。高校野球の選手は一歩目の意識が強すぎてしまって、1歩目にトップスピードに入りたいと思ってしまうと、体が浮いてしまって、いいスタートが切れないので、5歩目までに100%のスピードに入れればいいと思っています。

 1歩目に入らなくてはいけないと思うより、5歩目までに入ればいいという心の余裕を持ってあげることで、体が浮かなかったり、いいスタートが切れると考えています。

――盗塁を成功させるために大事なのは、やはりスタートだと考えられていますか?

「聖澤」 スタートだけではないですね。僕の場合は、スタートを切る前の準備、(投手への)注意の能力、スタート、中間加速、加速の5項目を入れてるんです。

――スタートを切る前の準備というのは?

「聖澤」 リードを取って、相手のピッチャーが動いたならスタート、ってなってしまうと遅れてしまうので、牽制が無いんじゃないかとか、牽制が来そうだなというところで、スタートを切るまでに、6対4だとか、7対3、8対2とか。100%牽制は無いなと思ったら、10対0と心の中で自分の割合を考えるんです。牽制が来る割合が、7対3、8対2くらいで無さそうだなっていう時にスタートを切ると、何も考えていない1歩目とは全然違ってくるので、そうやって準備するようになりました。

――それは、聖澤選手独自で考え出した理論なのでしょうか?

「聖澤」  そうですね。考えるようになったのは大学時代からで、盗塁に興味を持つことでどうしたらもっと良いスタートが切れるか、良いスライディングが出来るか、を自分の中で考えた理論ですね。
 とくにプロに入ってからは、最初レギュラーを取れていなかったので、走る専門でやってきたので、まずは結果を出して、そこで成功してやっとレギュラーってところまで来るんだと思ったので、『走塁の選手』としてどうしたら成功するんだろうというところから考えて、導き出した僕の考えではあります。

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[page_break:守備編:落下地点に素早く入るためのポイント]

守備編:落下地点に素早く入るためのポイント

”リラックスした状態で捕球することが大事”

――続いて、守備について教えてください。守備範囲の広い聖澤選手ですが、落下地点に素早く入るためのポイントとは?

「聖澤」 高校野球でも守備範囲を広げるために、『打球が1歩目でどこに落ちてくるかを予想しろ』って言われる監督や選手もいますけど、その中で、5歩目というか、あまり1歩目に集中せずにいくことが、1歩目のスタートにつながってくると思うんです。1歩目に集中するのではなく、いかに力を入れずに、浮いた状態でボールを待ち構えることが出来るか。
 高校野球の場合はとくに、監督の目を気にしてしまって、1歩目で力が入りすぎて、一生懸命ボールを取りに行きましたよというふうになってしまうのですが、いかに力を抜いた状態を作ることができるかが大事。息を吐いた状態でボールを取りに行くのがいいんじゃないかなと思います。

――グラブへはどのようなこだわりがあるのでしょうか?

「聖澤」 僕は、とにかく生地の薄いグラブを選ぶようにしていますね。今、使っているのはミズノのグローバルエリート。このグラブは、ミズノさんにお願いして、軽くて薄いものをお願いしていますね。

――軽いグラブのメリットというのは?

「聖澤」 守備の時に手袋をはめている高校球児もいると思うんですけど、硬いボールを取った時の手の感覚というのは、グラブが厚かったり、手袋をはめていると感覚がなくなってしまうと思うんですよね。僕は、手の痛みというか、感覚を大事にしたいので軽くて動きやすいもの、操作しやすいものを使っています。

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[page_break:打撃編:高い打率を残すために必要なもの]

打撃編:高い打率を残すために必要なもの

”球の軌道を装丁した素振りを実践しよう”

――続いて、バッティングについてお伺いします。聖澤選手が考える打率を残すための方法とは?

「聖澤」 打率を残すためには、まんべんなくライト、センターに打てること。打ち分けが出来る選手が、打率を残すことが出来ると思うんです。
 引っ張ることしかできない、流すことしか出来ない選手は、率を残すことが出来ないので。インコースに来た球は、左バッターならライトへ、真ん中に来たボールはセンターへ、遠い球はライトへ。そうやってボールに対して打ち返すことが出来るバッターは、率を残せるバッターだと思います。

――そういった対応力は身につけるために、どんな練習をされているのでしょうか?

「聖澤」 素振りはみんなやっていると思うんですけど、ピッチャーを想定して、そのピッチャーが投げた球を線で見て、コースを打ち分ける。試合の打席を想定して素振りをしている選手は少ないと思うんですよね。素振りのために素振りをしている訳ではないので、しっかりピッチャーの軌道を想定して、それに合わせた素振りをすることが大切だと思います。

――打席に立った時は、どのようなことを意識しているのでしょうか?ポイントとしていうる点はどのようなことでしょうか?

「聖澤」 色々あるんですけど、結局打席に入ったら一つのことしか考えることが出来ないですし、結局バッターは受け身なわけです。ピッチャーが投げないと、受け身の立場は何も出来ないので、バッターが自分のタイミングで打つのではなくて、いかにピッチャーになった気持ちで、ピッチャーに合わせてタイミングを取って振れるか。
  自分勝手なタイミングで振っても、ピッチャーが投げてからのことなので。いかに相手のタイミングに合わせて振れるかを考えていますね。タイミングが合えば、バットが下から出ても、上から出ても、変な打ち方でもヒットは打てるので。
そのために、ネクストにいる時からでも、ピッチャーが足を上げてからのタイミングをよく見ておくことが大切ですね。

――では、もしもバッティングが不調になってしまった時の対処法とは?

「聖澤」 投げることと、打つことは基本の考え方は同じなので、バッティングのフォームが崩れた時にはキャッチボールの時間を増やして、正しいキャッチボールをします。
 ピッチャーでも、バッティング練習で修正する人もいますし。割と不調になってしまうと、バッティングが悪いから、バッティングをどんどん行なう選手もいるんですけど、なかなか治らず、どんどん悪くなるケースもあるので。
 キャッチボールからバッティングのヒントを掴むというのは意外とあること。打つことも、投げることも体の使い方は同じなので、僕の場合はそうやって感覚を取り戻していきますね。

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[page_break:野球選手としての成長スピードを高める方法]

野球選手としての成長スピードを高める方法

”自分自身が最大のコーチ”

――聖澤選手は高校時代、3年生の最後の夏は初戦敗退。その後、国学院大に進学し、そこから徐々に注目を集めるようになりました。いつからプロ野球入りの目標を意識したのでしょうか?

「聖澤」 高校時代は、野球で食べていけたらいいなとは思っていましたが、まさかプロに行けるとは思っていませんでした。ただ、進学した大学が、それなりにプロ野球選手を輩出している大学だったので、僕も4年間頑張れば、プロの道が開くんじゃないかというところで、夢から目標になった時期ではありましたね。

――聖澤選手が大学に進学されてから急速に成長スピードも高まっていった印象がありますが、大学時代やプロ入りしてからも含め、どのような取り組みをされていたのでしょうか?

「聖澤」 プロに行って、自分の中であれは良いんじゃないか、これはダメなんじゃないかというのを自分と対話をしながら見つけたんですよね。

 良い監督、良いコーチがいながら、結局良い選手というのは、自分で自分を最大のコーチにしながら、自分で自分を伸ばしていっている。良い指導者がいたから上手くなるのではなくて、上手くなりたいという気持ちがあるから発見できる。上手くなりたいということに対して興味を持つことで、色んなことがヒントになっていくと思うんです。発見して、試して、自分で自分を育てることが出来る。僕はそう考えていますね。

――自分を成長させるための材料として、他の選手のプレーも参考にされますか?

「聖澤」 参考にしますね。プロに入ってからそうですけど、その人は何を考えてるのかっていうことを聞いたりしています。でも、それが実績のある選手がやっているから、それが必ず答えであることは無いと思うし、聞いたことは自分のポケットに「そういう考え方もあるんだ」ということでしまっておいて、自分に合うのか・合わないのかというのは、自分で見極めていくのがベストですね。
 伸びてこない選手というのは、良い監督、良いコーチに言われたあと、自分と対話せずに取り入れてしまって、それを崩してしまったというのがあるので。相手からもらったアドバイスというのは、100%取り入れるのではなくて、自分に合う・合わないを見極めてから取り入れることが大切だと思います。

――聖澤選手が参考にされている選手というのは?

「聖澤」 色々ですよ。実績のある選手ばかりを見ているわけではなくて、色々なところでヒントをもらって、甲子園を見ながら「こういうタイミングはいいな。明日試してみようかな」というのを高校野球からヒントをもらう時もあります。

――常に研究心を持たれているのですね。

「聖澤」 色々なところにヒントはありますからね。まず興味を持たなきゃ始まらないので。
 僕は、今の技術に対する自信はないし、今でも上手くなりたい。上手くなるためにはどうすればいいか、そういう気持ちで他の選手を見ながら、常にヒントを探していますよ。

 聖澤選手、ありがとうございました!
 走塁、守備、打撃、そして考え方。どれも参考になるお話しばかりでした。毎日を向上心を持ち、上達するためのアンテナを張って、野球に取り組む聖澤選手。今後の活躍も期待しています!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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