Interview

ヤマハ 戸狩 聡希 選手

2012.07.01

第102回 ヤマハ 戸狩 聡希 選手2012年07月10日

 常葉菊川学園時代、2年春のセンバツで優勝。翌夏の甲子園では準優勝に導いた左腕。現在はヤマハで活躍中。今年で入社4年目となる戸狩聡希選手に、今回はお話を伺いました。

追い込まれた場面で腕を振る勇気

”ヤマハ 戸狩聡希選手”

――入社4年目の今年、これまでとは違うピッチングで活躍を見せていますね。

戸狩選手(以下「戸狩」) そうですね。入社4年目ということで、試合でも先発でも中継ぎでも経験させていただいていますが、調子はどんどん上がってきている感覚はあります。

――高校と比べて成長したな、と感じることは?

「戸狩」 精神面ですね。試合で打たれてピンチになっても、表情でそれを出さずに出来ているなという感じが特に最近はあります。

――ピッチングコーチの石井コーチも、戸狩投手について「最近は弱みを見せずに、マウンドで強がるようになった」とお話しされていましたね。

「戸狩」 やっぱりバッターも強気でくるので、ピッチャーが弱気だったら打たれてしまう。何事も、最近は強気で向かうことを心がけるようになりました。

 ただ、それも今年に入ってからで、1~3年目は打たれたりしたら沈んでしまうというか、弱気になっていたので。だけど、今年に入って、自信につながることがいくつかあったので、それで強気になること、またピンチでも動じないというのが出来てきたと思います。

――自信につながった試合というのは?

「戸狩」 (5月の)京都大会ですね。(予選リーグの)大阪ガスと、準決勝のパナソニックとの試合を投げて、どちらも内容的には良かったんですけど、課題が見つかったんです。とくにパナソニック戦で、ランナー無しの場面で、カウントがノースリーになってしまった。それでカウント1-3から置きにいってしまったんですよね。そしたら、そのボールをホームランにされてしまったんです。
 きっかけは、そこですね。その時に、監督さんと石井コーチから『ノースリーやワンスリーになっても、フォアボールでもいいから腕を振れ』と言われました。『腕を振らずに打たれるのは悔しいだろ。それなら腕を振ってフォアボールの方がいい』と。それからはオープン戦でも意識して投げるようになって、ワンスリーになっても、腕を振って抑えることが出来るようになりました。

――フォアボールへの意識というのも変わりましたか?

「戸狩」 そうですね。自分はこれまで、フォアボールを出すことが一番嫌いでした。フォアボールを出したくないという思いから、ボールを置きにいって打たれることが多かった。だけど、監督さんからの言葉で、自分で変わったなと思いましたね。
 腕を振ることの意識って、小さなことのようですが、結構大きなことなんですよね。それが京都大会で学ぶことが出来て良かったなと思いますね。

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[page_break:高校時代のピッチングと比べて]

高校時代のピッチングと比べて

”自信のある変化球を繰り返して磨いて”

――それでは、技術面でヤマハで4年間プレーして、一番自信がついたことは?

「戸狩」 石井(ピッチング)コーチに、『戸狩の場合は、スピードじゃなくてキレとコーナーに投げ分けられる。それだけで絶対抑えられる』と言われたことですね。石井コーチも左ピッチャーだったので、フォームについても色々教えていただきました。
去年よりはフォームも固まり、球のキレや勢いも変わったかなっていうのが、自分でも感じます。

――現在のフォームのポイントは?

「戸狩」 僕の場合は足を上げて止まってしまうんですよね。それを止まらずに、足を上げたと同時にリズムで投げる。足を上げて止まってしまうと、球の勢いがなくなってしまうので、一気に投げるようにしました。

――高校時代は、チェンジアップ、フォークと変化球が多彩な投手という印象が強かったですね。

「戸狩」 高校時代は、変化球を投げておけば打たれないという自信があったんですよね。キレがなくても打たれないというか。でも、社会人に入ってどうしてもキレがないと変化球も打たれてしまう。色々な変化球を持っていてもキレがなかったら、全部打たれてしまうので。自信のある変化球を磨いて繰り返して、色々ピッチングでも試して。キャッチャーにもアドバイスを聞きながら投げ込んでいきました。
 実は、高校のときはカーブが一番苦手だったんですけど、社会人に入ってから勝負球でもカーブを投げられるし、最近は得意になりました。

”コントロールとキレを心がけています”

――戸狩投手の変化球を生かすために、真っ直ぐを投げる際は何を意識するようになりましたか?

「戸狩」 これまでは、真っ直ぐはスピードを意識していたんですけど、社会人に入ってスピードがあっても打たれることが分かりました。変化球を生かすこともそうですが、スピードよりも、真っ直ぐは『コントロール』が重要だと気づき、いまはコントロールとキレを心掛けて磨いています。

――コントロールも高校時代から評価は高かったですね。

「戸狩」 高校のときは、コントロールには自信があったんですけど、その後ケガをしてしまい、治ったときにコントロールが全部バラバラになってしまいました。一からやるには、フォームは別として、まずコントロールを磨くことが大切かなと思ったんです。
 これまで調子が悪い時もあって、弱気になって落ち込むこともあったけど、いまが一番、精神状態も強くなりました。試合で投げている時も強気にいけますし、調子も上がってきていますから。

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[page_break:甲子園優勝チームの当時の取り組みと、強さの秘訣]

甲子園優勝チームの当時の取り組みと、強さの秘訣

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――戸狩選手が高校に入学して2年目に森下監督が就任されました。常葉菊川の野球はどのように変わっていきましたか?

「戸狩」 まず、森下監督が就任されて、そこからバントをしない野球になりました。『アウトでもいいから盗塁をしろ』という野球ですね。本当に攻撃的な野球でした。
 走塁練習は毎日のようにやっていて、盗塁への意識が高くなったことで、自分たちの攻撃への姿勢が変わりました。走塁練習自体も試合みたいな雰囲気でやっていたんですけど、そうしないと勝てないというのを僕たちも感じていました。バントをしないというのはリスクがあるじゃないですか。だからバントをしない代わりの走塁。そう思って、取り組んでいましたね。

――そういった野球を実践していく中で、高校2年春に甲子園で優勝、3年夏に準優勝を経験しましたね。戸狩投手が考える『強いチーム』になるための秘訣とは何だと思われますか?

「戸狩」 高校のときに多かった試合展開というのが、いつも試合の序盤は負けてるんですよね。それで、7、8、9回から突然逆転する。
 なぜ、それが出来たかというと、それを表すのは難しいんですけど、負けているからこそ、全員で盛り上げて、必ず逆転できることをいつも信じていたというのはありますね。後半はとくに攻撃的な野球を心掛けてました。
 僕たちはバントもしないし、盗塁にしてもサインがない。だから、みんな前向きに攻撃的に、ベンチに帰ってくるときも下を向かず、前を見て笑顔でプレーしていたのも逆転する力につながったのかなと思います。

――そういった雰囲気が公式戦で出来るために、普段の練習ではどんな意識で取り組んでいたのでしょうか?

「戸狩」 公式戦と変わらずに、練習試合でも同じ雰囲気でしたね。3対1で勝っていても、『後半で点をもっと取ってやるぞ』という気持ちでみんなで戦う。負けていても、勝っていても、僕たちがやる野球は変わりませんでした。チーム全体の意識が高かったですね。

――それでは、最後にこれから夏を迎える高校球児たちにメッセージをお願いします。

「戸狩」 一球一球大事にしながらも、夏の予選では、楽しくプレーしてほしいです。もしも苦しい場面を迎えても、自分の間合いで焦らずに、深呼吸をすればきっと大丈夫だと思います!

戸狩投手が所属するヤマハは7月13日から東京ドームにて開幕する『第83回都市対抗大会』に東海地区・浜松市代表として出場します。初戦は九州三菱自動車(7月14日10時半~)と対戦。高校球児の皆さんも夏の大会まっただ中ではありますが、高いレベルのプレーが繰り広げられる都市対抗にも是非、注目してみてくださいね。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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