Interview

ミズノ株式会社 石塚裕昭さん

2011.07.27

第76回 ミズノ株式会社 石塚裕昭氏2011年08月08日


 軽量感と操作性を追求した『グローバルエリート』は2009年の販売から2年の月日がたった。プロの若い世代を中心に、グラブ産業に新風を巻き起こした「グローバルエリート」とは果たして、一体どういうものなのだろうか。
ミズノ株式会社 スポーツ事業部 マーケティング部ダイアモンドスポーツ用具企画課 用具担当、石塚裕昭氏に、開発ストーリーを明かしてもらった。

軽さと操作性を追求を追い求めて

“グローバルエリートは『革新的トップブランド』”

――「グローバルエリート」は軽量感や操作性を全面に押し出した新企画ですが、このグラブを企画・製作にあたって、そもそも、軽量感や操作性のニーズはあったのでしょうか?

石塚裕昭氏(以下「石」) 10年ほど前にさかのぼると、グラブというのはしっかりした硬い革を、自分で使っていって型つけをするというのが当たり前でした。
それが2004年くらいから、柔らかいものという市場の流れになってきていたのです。すぐに使えるモノが欲しい、と。得意先様、店頭で購入して型つけをする。柔らかくして、お客様にお渡しするのが当たり前になってきていたのです。
その中で、次、求められている機能として、野球全般に言えることなのですが、軽くて、操作性がいいものを作ろうという流れになってきた。

――それを、「グローバルエリート」というブランドをつける意味があったんでしょうか?

「石」 弊社には『ミズノプロ』というトップブランドがあって、『グローバルエリート』と2大トップブランドの位置づけで、生みだしていこうという形になっています。

ミズノプロというのは、例えば、革や品質などいろんな項目の平均が5点満点っていう理想を追い求めています。『グローバルエリート』は、市場のニーズを分析し、一つの機能に特化させるというコンセプトを持たせようという事になりました。
その中で、特化させる機能を何にするかという話になり、誰もが持って分かる軽さというものを機能にしようということで、生みだされたのです。

――ミズノプロブランドとして作ろうとは思わなかったのですか?

「石」 ミズノプロを残しながら、2大トップブランドの位置づけなのです。ミズノプロは今までにプロが使っていますけど、グローバルエリートは次世代の若い選手をターゲットに展開しています。ミズノプロは『伝統的なトップブランド』であって、グローバルエリートは『革新的トップブランド』になります。ですから、マークも、今までは刺繍だったものを、シリコンっていう新しい素材でやっているんですよ。

――実際、その「軽い」というのは、持って軽いのか。物量的に軽いというか、どういう意味で軽いということなのでしょうか?

「石」 純粋に物質的に軽いという事です。

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耐久性との戦い

“しっとり感のある、強度のあるものを厳選”

――軽くすると、耐久性に問題がでてきたりはしないのですか?

「石」 難題なのはそこなんですよね。単純に軽くするだけであれば、全部のパーツを薄く設定すれば、質量的な軽さは出る。しかし、それでは商品としては売れない。簡単に言えば、25個くらいある各パーツの厚み設定を、全て決めたんです。今までのミズノの歴史の中で培ってきたノウハウやプロの対応をしているクラフトマンの経験則を活かし、各パーツにふさわしい最適な厚み設定を行いました。
細かい話になりますが、グラブ紐は断面が白いのがあり『なかしろ』と言います。これとは別に中に色が染まっているモノが『芯通し』と言うんです。今まで、中が染まっている方がデザイン的に合っているということで、芯通しが使われていたんですけど、重たいんですね。中まで染まっているから。『なかしろ』は、中は染まっていないので、少し軽いので、こちらを使うようにしました。例えば、イチロー選手のグラブの大きさの場合、紐を計ると、2、30グラム違うんです。プロが主に使っている『なかしろ』使って、軽くするのにこだわったんです。

――他には設定したのは?―

「石」 革自体も、質量が軽いものを選びました。ぱさぱさでは駄目なので、しっとり感のある、強度のあるものを厳選した革を選んだ。

――最初の段階で困難になったことはありますか?

「石」 軽くしたと思っていても、重たかったんです(笑)。人間は30グラム程違えば、感覚的に軽いって感じるんですね。ただ、そこが難しかった。『重い』という表現より『軽くない』という表現が正しいでしょうか。最初できた時はそんな感じだったので、それじゃダメだということで、各パーツの最終調整を行って、ようやく、みんなが軽いと感じるのができた。

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計算された捕球感覚

“よりグラブに力が伝わり易い設計”

――操作性に関してはいかがでしょうか?

「石」 ボールの捕り方に応じて、ポケットの位置が決まってくるんですけど、捕り方に応じた最適なポケットが設定されている。つまり、グラブの形が全部違うんです。例えば、投手用は、引き手で小指から順番に握り込むようなタイプの投手がほとんどですので、そういうタイプにはポケットはウェブの下に設定されています。ポジション別、捕り方のタイプ別によって変えています。この考え方のベースになっているのは実はミズノプロのグラブなんです。
『最適剛性設計』というのですが、ポジション別によって、どういう捕り方をしているかのパターンがあります。圧力のかかる箇所に剛性を持たせることで、よりグラブに力が伝わり易い設計にしています。
このミズノプロで蓄積された「最適剛性設計」の考え方をグローバルエリートでも活かしています。捕り方とグラブの形状がフィットすれば、手に入れたときの一体感、動かしやすさも高まり、結果として軽量感につながってきます。

――繊細なのは投手ですか?

「石」 選手によりますけど、野手の方が捕球方法のバリエーションが多いと思います。アテ捕りをする選手もいますし、しっかりつかみたいタイプの選手もいます。外野なんかは挟み捕りですからね。プロでも一番、細かいのは内野手だと思います。

――グラブが出来上がったときは、どんな気持ちがされましたか?

「石」 『やったった』って感じでした(笑)。僕が良いと思っても、ユーザーの方にどう評価されるかが重要ですから、不安はありましたよ。自分が考えた商品がカタログに載って、全国で販売していただける事を想像するとワクワクしましたね。

――実用テストはプロにするんですか?

「石」 高校生の使い方で耐えうるかどうかをテストしました。アマとプロでは練習量が違いますし、使い方も違う。なので、実用テストを出す時も、普段通り使ってくれって、依頼はしましたね。

――このグラブが目指すのはどういうところですか?

「石」 グローバルエリートは世界の舞台で活躍することを目指すプレイヤーのためのブランドです。これからもそんなプレイヤーの皆さんが求めるグラブを作っていきたいです。

――これからの課題はありますか?

「石」 課題というか、目標になるかもしれませんが、もっともっと多くの方に「グローバルエリート」という名前を知っていただきたいですね。

――最後に高校生にむけて、一言、お願いします

「石」 軽ければ、球際に強くなれる。横にグラブを出すコンマ何秒の話ですけど、物質的な軽さと操作性があるのが『グローバルエリート』です。色んな形状、型のバリエーションがあるので、是非、店頭で、全部はめて欲しいですね。全部はめた上で、手にフィットするのを選んでもらって、球際に強いプレーに役立ててほしいなと思います。

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(文・インタビュー:氏原英明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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