Interview

横浜ベイスターズ 吉村裕基選手

2011.06.28

第69回 横浜ベイスターズ 吉村裕基選手2011年06月28日


 02年、東福岡から5巡目で横浜ベースターズに入団した吉村裕基。高校時代は、持ち前のパワーで通算43本塁打をマーク。高校1年次からベンチ入りを果たすと、2年生春に出場した第73回選抜大会では4番・ファーストで、8強入りに貢献。最後の夏は、甲子園出場は果たせなかったものの、高校時代に得たもの全てが、現在の吉村を形作っているという。今回は、そんな吉村から「主力の役割」を学びます。

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【目次】
■控えの選手のためのプレーを
■飛距離アップ&縦の変化球を打つコツ
■チャンスの場面でいつも通りのスイングをするには?

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控えの選手のためのプレーを

“高校野球は、全員で戦うもの”

――1年生の頃からレギュラーで試合に出ていた吉村選手ですが、主力選手として、どのような思いを持って日々の練習や試合に臨んでいたのでしょうか。

吉村選手(以下「吉」) 僕は入学してすぐに試合で使っていただいて、遠征にも連れていっていただいていました。それでも、当時は下級生の仕事はたくさんあって、遠征から帰ってきてもバス掃除をしたりしてましたね。

今でも覚えているのが、高校時代の監督さんは、野球部にお土産や差し入れをいただくと、まず下級生たちから食べさせるんです。『縁の下の力持ちから食べろ』と言って、常日頃から僕らは裏方の役目を大事にするという教えを受けていたので、自分が試合に出ていても、試合に出ていないバッティングピッチャーや控えの選手たちの動きはいつも気にしていました。

そういう選手たちがいてくれるからこそ、僕らは試合でしっかりと結果を出すことが、役割であり大事になってくる。高校野球は、全員で戦うものですから、他の選手や同級生のことも考えながら、みんなの思いを背負ってプレーをしていました。

――吉村選手が2年生の時にセンバツでべスト8。新チームになってからも、順調に結果を残していたようですが、最後の甲子園をかけた夏は、どんな大会となったのでしょうか?

「吉」 僕らの代は県大会に行く前に負けてしまいました。福岡県は学校数が多いので、北部と南部で分かれて予選を行うんですけど、その3回戦、先発投手は僕だったのですが、1対2で負けました。仲間の選手が初回に先頭打者ホームラン打ってくれて、このままいけるかなと思ったんですけど、そこから打てなかった。僕ら試合に出てたメンバーも、こんなに早く負ける訳がないと思ってたんで、ベンチに入れなかった仲間たちには、本当に申し訳ないって気持ちでした。

――もしあの頃の自分や仲間たちにアドバイスが出来るなら、どんな言葉を掛けたいですか?

「吉」 僕らの代は、前年に甲子園を経験したメンバーが4人ほどいたんですが、周囲からは『弱い弱い』と言われ続けてきたんです。その辺りで、いい意味で『俺たちも必死にやってきたんだ』『俺たちは強い!』って、周りの声を気にせずに、自信を持ってやっていたらよかったのかな。秋や春も大会で優勝したり、結果は残してきてたはずなのに、周りからそうやって言われて、自分たちは弱いと思ってしまっていたんですよね。

『もっと元気出して、自信持ってプレーしろよ』

って声を掛けたいですね。そういう気持ちがあったら、もっといいところまで勝ち上がっていけたんじゃないかな。

“野球選手でいれることは、いろんな方々のおかげ”

――吉村選手のグラブには、「おかげさま」という文字が入っているのですね。

「吉」 そうなんです。他にも、『心』と『ありがとう』という文字を入れています。今、野球選手でいれることは、いろんな方々のおかげ。今までの高校時代の仲間たちもそうです。また、親や周りの人々、ファンの方々のおかげで今の自分がいる。

プロ野球の世界では、高校野球と違って“チームメイト”って感じではなくて、人によっては一ライバルになりますが、その中でも普段から顔を合わせるってことは、人それぞれ何かしらお世話になっていると思うんです。だから、『おかげさま』という気持ちを僕は大事にして、グラブに刺繍を入れています。

――今、使われているグラブはかなり使い込んでいるようですね。

「吉」 今はミズノのグローバルエリートを使っていますが、これは皮が良くて長く使えるグローブなんです。僕は1つのグローブは長く使いたいので、グラブ職人さんとよく話しをします。自分が使いやすいように、職人さんに色々とアドバイスしてもらうことは多いですね。

以前は内野手だったので、ミズノのファーストミットも4~5年は使っていました。今は外野手になって、ファールギリギリで取れるかどうかの球際が大事になってくるので、少し大きめのグラブになりましたが、それでも軽さは常に追求してグラブを選んでいます。


飛距離アップ&縦の変化球を打つコツ

“若干斜めから切るようなイメージ”

――続いてバッティングに関してお話しを伺います。パワーヒッターが代名詞の吉村選手ですが、遠くに飛ばす力をアップさせる方法とは?

「吉」 プロ野球に入ってからは、よく「持って生まれた力でしょ」とか言われますけど、そんなことないですよ。ボディビルの選手が打っても、遠くに飛ぶわけでもないですし、筋力があるから遠くに飛ぶわけじゃないんです。

僕の場合は、普段のティーバッティングからバッドの角度を意識してやっていました。
まず、ボールに回転を与えることですね。正面で打つと、無回転でポンといっちゃう。だから来るボールに対して、若干(じゃっかん)斜めから切るようなイメージで僕はずっと練習をやっていました。

そういう角度でバッドを出すと、ボールを擦る(こする)ことも多くなると思いますけど、それを我慢してね。今やったから今できるじゃなくて、今やれば1か月後、2か月後に出来るようになるかもしれない。バッティングに関しては簡単に習得できるものではないので、もっと先かもしれないけど、ちょっとずつ成果は出てくると思う。こうやって口でいうのは簡単ですけど、まずは自分で実際にやってみてもらえれば、分かるかなと思います。

――高校球児から「縦の変化球が打てない」という声をよく耳にするのですが、打てるコツをアドバイスいただけますか?

「吉」 今はチェンジアップが多くなりましたもんね。カーブ系も縦の変化に入りますね。打ち方に関しては、僕が教えるほどではないですけど、「目付け」が大事ですね。

追い込まれたら、目線を上げる。どうしても、追い込まれるうちに目線が下になってしまうので、下に落ちてきたところをパッと振っちゃうんです。そこを、もうちょっと目線を上げて楽な気持ちで。

「目線を上げる」って簡単に言うだけじゃなくて、ピッチャーの立ったところのどの辺(例:胸のあたりなど)を見ておくかをしっかり決めること。ここから上は振るけど、ここは振らないとか。

とくにカーブ系の変化球はちょっと上あたりにくるんで。でも、チェンジアップ系は難しいですかね。プロ野球の場合はバックスクリーンがあるから、そこで振るポイントの目安を決めたり。その人、その人で立った場所も違うんで難しいんですけど。

まずは投手のリリースポイントをしっかり見ること。そして、あまり足元に目がいかないようにすること。これは、普段のバッティング練習から試したほうがいいですね。

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チャンスの場面でいつも通りのスイングをするには?

“「この場面でくるかも」と考える”

――吉村選手は普段、打席に入るまでの準備としてどのようなことをされているのですか?

「吉」 僕の場合は、気持ちの面で準備しますね。高校生もそうですけど自信っていうのは、やっぱり練習量からくると思うんですよね。相手ピッチャーどうこうよりも、「自分がこれだけやった」というのがあれば、堂々と打席に入れます。

プロ野球でもそうですね。僕はプロ入りして最初のほうは、「あ!このピッチャー、テレビでみたことある!」とか思いましたけど、そう感じたら負けてしまいますし、ここのグラウンドに出たら、自分のほうが絶対上っていう気持ちを持つこと。ただ、その気持ちが強すぎたら力が入りすぎてしまうこともあるので、微妙なところなんですけど。

あとは打席に立った際に、腹に力を入れてクッとやったり、右足に力いれるとか色々あるけど、常に一定に、フラットにこういった動作ができるように、何も考えなくてもパっと打席に入れるように自分を高めておくことも大切ですね。

――平常心で臨めるように、イメージトレーニングもされたりするのですか?

「吉」 イメージはしますね。大体、この場面でこうやって自分に打席が回ってくるなと考えると、その通りになるんで。高校のときもそうでしたけど、1番バッターがヒット打ってランナーで出たら、こうなってこうなって1点入って、さらにチャンスで4番の僕に回ってくるなとか。「この場面でくるかも」と考えると、気持ちにも余裕が生まれるんで。何も考えてなくて、いきなり回ってきたら焦ってしまいますからね。

“時には嘘でも強がることも大事”

――吉村選手の高校最後の夏の試合も含めて、これまで“自信を持つ”というワードが多く出てきました。この夏、主軸を任される選手たちはどのような気持ちで試合に臨めばいいでしょうか?

「吉」 時には嘘でも強がることも大事だと思います。特に主軸であればあるほど、1打席目で三振してベンチに帰ってきたら、『吉村が打てんかった!やばい』って仲間が思うじゃないですか。でも、そこで堂々としてる。淡々としてるってことも大事なことだと思います。

実は今まで僕は、チャンスの場面で『回ってこい回ってこい!』と思って『よしきたー!』って思って打席に向かっていましたが、気持ちが前に出すぎて、いい結果が出ないときが続いたんです。

そこで最近はチャンスでも、ランナーなしでも同じ気持ちで自分のバッティングを、自分のスイングをしようと切り替えました。この春も高校野球の選抜大会をテレビで見ていて、『あ~いい選手だな~』って感じるのは、やっぱり雰囲気に余裕がある選手ですよね。

あとは、周囲の人たちに感謝すること。そういう気持ちを持って打席に入ると、自然と結果が出てくると思うんですよね。それが、すごい当たりかもしれないし、ゴテゴテの当たりかもしれないですけど、それが3年間の集大成なんです。必ず納得のいく結果につながると思います。

今日も大好きな野球が出来るのは、これまで自分を支えてくれた全ての人々の『おかげさま』。吉村裕基はプロ入り9年目となる今シーズンも、感謝の気持ちを胸にグラウンドに立ち続ける。

(文・インタビュー:編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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