Interview

千葉ロッテマリーンズ 唐川侑己選手

2011.05.27

第66回 千葉ロッテマリーンズ 唐川侑己選手2011年06月07日


 成田高時代、2年春のセンバツ初戦の小松島戦で10三振を奪い、一躍注目を集めた唐川侑己。3年春のセンバツでは、初戦・広陵戦で延長12回の末、1対2で敗退。最後の夏は、県大会5回戦・東海大浦安戦で延長14回を投げ抜き、0対1で敗れたが、キレと伸びある真っ直ぐを武器に27イニング無失点の記録を打ち立てた。その年のドラフトでドラフト1巡目でロッテに入団。プロ4年目となる今季は4勝1敗、2完封(5月27日現在)と活躍中。その唐川投手から今回、夏まで残り1か月を迎えた球児たちに向けてメッセージをいただきました。

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【目次】
■プロ4年目の活躍
■高校時代を振り返って
■キレと伸びのある真っ直ぐを磨くコツ
■夏の予選に向け今からレベルアップできること

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プロ4年目の活躍

“気持ちの面でも余裕を持って”

――まずはプロ4年目の今年も、すでに4勝を挙げ、2完封と好調ですね。

唐川選手(以下「唐」) 今は結果がついてきてるって感じです。とくに去年と比べて、大きな違いはないのですが。ただ、今までプロで3年間やってきた中で、色々考えることもあったし、投げてるときにも色んなことを考えながら投げれるようになりましたね。気持ちの面でも余裕を持って投げられるようになりました。

――とくに自分が変化したなと思う部分は?

「唐」 そうですね、例えば次の球を投げる意味とか。この場面でこれだけはやっちゃいけないとか、こういうところは気を付けて投げようとか。そういう所を自分で理解できるようになりました。

 具体的にいうと、例えば2ナッシングからアウトコースのスライダーのサインが出たら、別にそれはストライクに投げる必要はないですよね。それが、たとえワンバンとかバッターが振らないようなボールでも2ストライクから勝負できる。

でも、もし2ナッシングから、そこでスライダーがストライクにいって打たれたら後悔するじゃないですか。これは基本的なことを例に挙げましたが、こういった配球ひとつでも理解しながら投げられるようになりました。


高校時代を振り返って

“調子が悪い時の課題を見つけること”

――唐川投手の高校3年生の夏、千葉大会5回戦の東海大浦安戦で、3試合に登板して28イニング目で初の失点を許しました。それが延長14回。結局、この1点が決勝点となり惜しくも、ここで敗退となりました。

「唐」 結局、最後に1点を取られたのも自分のミスというか、抜けた球がデットボールになって、最後打たれてしまったので申し訳ないことしたなって感じですね。

――高校時代に、こんな考えで取り組んでおけばもっとレベルアップしたかなと思うことはありますか?

「唐」 そうですね。自分の調子が良くない時のために、そういった時の練習を練習試合でやっておけば良かったなと思います。高校の頃は、練習試合でもいいピッチングをすることばかり考えてやってしまった。だから、調子が悪い時の課題を見つけることができない。そうやって試合を何となくやってしまう。だけど練習試合って、試す場だから何をやってもいいんですよね。

僕は、練習試合でも公式戦と同じような結果を出すためのピッチングをしてしまったんですけど、例えば「この日はインコースを投げない」とか1つテーマを決めて、そういうのをもっとやれば良かったなと今になって思いますね。

――テーマ設定をして練習試合に取り組むことが大事だと気付いたきっかけは?

「唐」 今、プロでやっていて、シーズン中って調子のいいときもあれば悪いときもあるんで、調子がいいときに、いいピッチングができるのは当然っていったらあれですけど、いいピッチングができる確率は高いと思うんですよ。でも、調子の悪いときにどれだけゲームをつくれるか。調子の悪いときにどれだけ勝てるかっていうことが、1年間通したら大事なことだなと1年目から痛感しました。

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キレと伸びのある真っ直ぐを磨くコツ

“リリースポイントをより前で”

――唐川投手は、高校時代から伸びのあるストレートで打者を抑えていましたが、その球を磨くために意識していた点はどんなことですか?

「唐」 僕が一番意識したのは、キャッチャーの奥に投げるつもりで投球すること。これは高校に入学してすぐ先輩から教わりました。イメージとしては、ダッシュと一緒で、50メートル走る時も、60メートル走るつもりで走れって言われるじゃないですか。それは、ゴールの時に力を緩めないようにするためなんですけど、ピッチングでも同じイメージです。距離は18.44でも、それより先に強い球を投げる。キャッチャーを突き破っていくような感じで投げていましたね。

――他にも、球の伸びやキレを増すために、取り入れていたトレーニングはありますか?

「唐」 
リリースポイントを結構“前に”っていうイメージで僕は投げています。よりバッターの近くで離す感覚で。それには、下半身の力や柔軟性も大事になってくるので、股関節がよく動くトレーニングメニューなど結構やりましたね。

あとは股関節や肩甲骨でも、柔軟性を高めるストレッチを行ったり、とにかく練習ではたくさん動かすようにしていました。こういったトレーニングによって、体重移動の時間が長くなったんで、よりリリースポイントの位置を前にすることが出来るようになりました。

――プロに入ってからも、さらにレベルアップするためにどのようなことを考えて投げているのですか?

「唐」 高校の時は真っ直ぐで押すっていう感じだったんですけど、今は他の球種を使って真っ直ぐをより生かすようにするとか、少しずつスタイルが変わってきています。でも、根本の部分は変わってないですね。僕は、球は速くはないんで、数字的なスピードは出ないけど、球のキレや、リリースポイントをより前でっていうところで球を速くみせることは出来ると考えています。

――キレと伸びのある球を投げるために、グラブ選びにもこだわりはありますか?

「唐」 高校の時からグラブはミズノを使っていたので、プロに入ってからもその流れでミズノのグラブを使い始めたんですが、ミズノプロの新しいジャンルの「グローバルエリート」というグラブが出来てからは、それを使っています。グローバルエリートを選んだ理由としては、軽量感を重視して開発されたグラブだったからですね。自分はなるべくグラブは軽めのものを選ぶようにしているんです。グラブっていうのは、自分の体を操作する中に位置するものなので、自分にとって邪魔にならずに扱いやすいほうがいいんですよね。ピッチャーって結局はバランスが大事だと思うので、そういった意味で、今はいいグラブを選んで使えていると思いますね。

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夏の予選に向け今からレベルアップできること

“冬に追い込んで、春は調子がいい”

――夏の甲子園予選までの残り1か月で、「ピッチャーがすぐにレベルアップできるかも?!」というピッチング術があれば教えてください。

「唐」 一番大事なのは、ランナーがいるときに投げるリズムが一緒にならないことですね。セットポジションに入って球を長く持ったり、短く持ったりして、自分が投げるリズムを崩すこと。同じテンポにならないように投げるのが、短期間でも出来るようになるピッチング方法かなと思います。

例えば、まずセットポジションに入ったら短く持って牽制する、長く持って牽制する、短く持ってホームに投げる、長く持ってホームに投げる。大まかにいったらですけど、その中でそれを順番で投げていく。ブルペンで投げててもイメージしづらいと思うので、まだ練習試合も残ってると思いますから、そういうところで実践で試してみてはどうでしょうか。

――6~7月に始まる甲子園の予選に、調子を上げていくための調整方法を教えてください。

「唐」 冬の時期にいっぱい走ったり、トレーニングをしますよね。そのレベルのトレーニングを、ちょうど今の5月下旬頃からもう1回やるんです。冬とメニューは違いますが、体を追い込むレベルは同じもの。とくに僕の場合は、春先の調子がいいって2年生の時に分かったので、「冬に追い込んで、春は調子がいい」っていうのをもう1回この予選の時期に、(サイクルを合わせて)調子を上げるためにやるんです。

――そのトレーニングメニューというのは?

「唐」 色々やりますが、例えばインターバル走とか。距離ではなくて、タイムを測ったり。ただ筋力トレーニングに関しては、高校時代はダンベル持ったり、そういったウェイトは全くやっていませんでした。筋力をつけるためのトレーニングは、重いボールを持ったり、自分の体重を使って体の使い方を覚えるためのトレーニングを結構やっていましたね

高校3年生へ唐川投手からメッセージ

 「唐」今なぜ自分が野球をやっているのかを考えて、それを噛みしめながら残りの時間も練習に取り組めば、最後は後悔するような結果にはならないのかなと感じます。

 自分も今年プロに入って今年で4年目ですが、野球をやってること自体がすごく楽しいからずっと野球をやってきました。だけど、その楽しい野球を続けるためには、何が今自分には必要なのかを考えながら、やっていくことがとても大事だと思うんです。

 もし、みんながこのチームでちょっとでも長く野球がやりたいと思ったら、そのために出来ることはたくさんあると思います。とくに高校野球って、みんなで一つになって全員の力で勝ちにいくわけじゃないですか。もちろん、プロも一緒ですけど。チームのことを思って野球が出来てくるようになると、結果としてそれが自分のためにもなるんです。

千葉ロッテの右のエースとして確立した唐川侑己。もちろん、まだまだレベルアップを図るつもりだ。

(文・インタビュー:編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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