Interview

東洋大学 藤岡貴裕選手

2011.04.05

第63回 東洋大学 藤岡貴裕選手2011年04月05日


第63回独占インタビューは、東洋大の藤岡貴裕投手です。
今では、大学生ドラフトの今年の目玉として注目を集めている藤岡投手ですが、高校時代から大学1・2年生の頃はここまで目立った活躍を残していませんでした。その藤岡投手も昨シーズンはリーグ12勝を挙げ、うち8試合を完封。なぜ、ここまでの力をつけて飛躍することが出来たのか。
現役球児の皆さんも今日からすぐに取り入れられる考え方を藤岡投手から教えていただきました!

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【藤岡投手からのメッセージはこちら】
■高校新一年生へ 『先輩から吸収できること』
■頑張る球児たちへ 『練習や試合で出来なかったことは、その日のうちに!』
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体も小さく細かった高校時代

 昨春のリーグ戦では3試合連続完封、秋はそれを上回る5完封を記録した東洋大の左腕エース・藤岡貴裕。昨年一年間で12勝を挙げ、東都大学Ⅰ部リーグ春MVP、最優秀投手賞、ベストナインなど数多くのタイトルを獲得。今では、昨夏の世界選手権でともにプレーした東海大・菅野、明大・野村と並び、大学生投手の中でも高い注目を集めている。

「菅野や野村と一緒に、自分が並んでいいのかなって感じは今でもありますよね。彼らは、高校時代から注目されながら、継続的に上がってきたじゃないですか。だけど、自分の場合は、昨年いきなりパっと出てきた選手なので、一緒でいいのかなって……」。

 そう謙遜の言葉を口にしながらも、桐生一高時代から常に向上心は人一倍強かった。

「自分がエースになって、チームを優勝に導きたい」これはまだ、当時野手だった藤岡が、ピッチャーに専念する前から抱いていた目標だ。

 「高校に入った当時は野手で、ピッチャーはやってなかったんです。今よりもスピードも遅かったし、体も小さくて細くて、本当にここで3年間やっていけるのかなって不安もありました。それでも、ずっとピッチャーはやりたかったので、体が出来上がってきた2年の夏以降からピッチャーとして試合に出るようになりました。球速も140キロ前後まで上がって、ある程度真っ直ぐに自信が持てるまでになったんです」。

 投手として急成長を続ける藤岡は、この年の春のセンバツの初戦・都城泉ヶ丘戦で先発を任されるも0対2で敗戦。高校3年生の夏は、念願のエース番号をもらって、群馬大会決勝戦まで勝ち上がるも、前橋商に2本の本塁打を浴び2対3で敗れた。


2年目で活躍できなかった悔しさ

 「今、高校時代を振り返ってみて感じるのは、もう少し自分が、ピッチャーの知識があれば良かったなってことです。投球フォームや、配球だとか、変化球の握り方を学んでおけば、もっと良くなっていたかもしれない。だけど、桐生一ではピッチャーとしての土台は作ることは出来たと思うんです。練習では、かなり走らされていたので、それは今に生きているんじゃないかなと。

何キロ走ったとか、何時間走ったとかいうことではなくて、例えば練習で誰かがエラーして雰囲気が悪いから『みんな走れ』って走らされて、またエラーしたらもう1周走らされて。その繰り返し。バッティング練習でも誰かが守備でエラーしたら、ストップがかかって『全員1周!』ってそういう雰囲気でやるんですよ。その後も筋トレやったり、外を走りにいったりと毎日かなり追い込まれていました」。

 東洋大入学後、2年秋までの4シーズンで4勝。翌年から一気に、年間12勝投手に成長するのだが、この“大学2年生冬から大学3年生春”にかけての跳ね上がりの要因は、「走る」ことがポイントだったというが…。

 「成長のきっかけは何か?と聞かれると、とにかく冬場にいつも以上に走りましたって答えるんですけど、走ること自体が重要なわけではないんです。たくさん走ったから球が速くなるってことでもなくて、自分のモチベーションのためだと思うんですよね。高校時代は『走らされてる』って言いましたけど、やっぱり気持ち的にも走らされてる選手よりも、自分から走っている選手のほうが、モチベーションは違うと思うんです。

 僕の場合は、高橋監督からもずっと2年秋までの活躍を1つの目安とされていたり、1つ上の先輩の乾さん(現日ハム)や鹿沼さん(現JFE東日本)もこの年から伸びてきていて、そういった悔しさがあったんですよね。『来年の春は、乾さんでもなくて、鹿沼さんでもなくて俺だ!』って心の中で思いながら、夜もずっと走ってました」。


完封するコツとは?

 一冬を越えて、春のオープン戦を迎えると、明らかに球質が変わっていることに気付いた。

 「春のオープン戦は、感じが良かったんです。早大や明大とのオープン戦で投げ終えると、周りから『球速くなったんじゃないの?』って言われたりして。実際、スピード自体は変わってなかったんですけど、全然打たれなくなって、自分でも『あれ?』っていう感じで。そのままリーグ戦に入って、完封もし始めて『あれ?』っていう間に自然と結果につながっていきました」。

 「球が重い」「バットの芯にあたっても外野の頭を越さない」昨シーズン、藤岡のピッチングは、そんな言葉で評されてきたが、自身の変化を藤岡は、どう捉えているのか。

 「確かに、外野の頭を越すことは少ないですね。結構、打ち損じてくれたりしてたので。多分、バッターが思ったところよりも、ボールがもっと上に行ってる感じじゃないのかなって思うんですよね。去年は結構フライが多かったので楽でした。ゴロだと取る時や投げる時にエラーがあるじゃないですか。

でも、フライのほうがエラーがあっても取るときだけですし、ピッチャーとしても三振狙うよりは、フライをポンポン打たせたほうが球数も少なくていいですよね」。

 省エネでピッチングできたことも、昨シーズン8完封を成し遂げたコツの1つ。また、春のオープン戦時から、1試合投げ抜く術も自ら身につけていた。

 「1試合投げ抜くと、球数は100を超えますよね。その中で、ある程度、力を抜くところは抜いたりして、無駄なエネルギーを使わないようにすることも大事だと思うんです。2年生の時は、後ろに鹿沼さんとかがいるから、とりあえず飛ばしていけと思ってガムシャラに投げていたんですけど、そのうちに後ろに任せたくない。自分が全て投げたいっていう気持ちが出てきたんで、そのためには、どうしたらいいんだ?って考えるようになって、その時に抜くとこは抜いて、しっかり投げるときは投げるっていうメリハリをつける投球を覚えました」。

 今シーズンも完封、そしてリーグ優勝のために勝ち星を期待されている藤岡。ラストイヤーとなる今年。あれだけ欲しがっていた“エース”の座についた今、次に見据えているのは、来シーズン以降の後輩たちの活躍だ。

 「やっぱり、今年も優勝のマウンドにいたいですよね。また、これまで上野さん(現千葉ロッテ)や乾さんなど上の先輩方や高橋監督から教わったことが、すべて自分の知識となっているので、今度はそういうことを後輩に教えていくのも自分の役目だと思っているんです。来年、東洋大は125周年を迎えるので、自分がちょっとでも後輩のために役に立てればいいなと思ってプレーしていきます!」。

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高校新一年生へ 『先輩から吸収できること』

 先輩からはいいものを吸収しながら、その人を超えるんだっていう意識を持って取り組んだほうがいいんじゃないかなと思います。僕の場合は、この大学に入って一番影響している先輩は乾さんでした。いつも寮では乾さんと一緒にで、同部屋には乾さんと同じ東洋大姫路出身の岡さんもいたんですが、自分と乾さんと岡さんの3人でワイワイ騒いでいましたね。

 同じ投手でもあった乾さんは、暇さえあれば練習してました。部屋の本棚にもダルビッシュ選手、岩隈選手、ラミネス選手の本など買って置いてあって、時間があれば野球の結果を調べたり、本当に野球のことばかり。そういう先輩の姿を見てるので、自分が投手として活躍するためには、それくらいしないと!と勉強させていただきました。

頑張る球児へ 『練習や試合で出来なかったことは、その日のうちに!』

 今日ダメだったことを明日やろうではなくて、今日ダメだったことは今日の夜でもいいから、やってみることが大切!

 その日の練習や試合の中でも、「あの時はここがこういうふうにダメだったから、こういうふうにしたほうがいいんじゃないかな」って、その日のうちに考えたほうがいいと思います。

 僕も試合が終わって寮に戻ると、こういうところがダメだったと反省した部分をブルペンに行って、「自分の中でここがダメだったから、こうしよう」って考えながら練習します。

例えば、『右バッターのインコースを攻める』ということを目標に立てて、もし試合でそれが出来なかったら、他の部員に頼んで右のバッターボックスに立ってもらって、インコースを意識しながら、もうちょっと投げてみるとか。

 今日できなかったことをその日のうちに実行する姿勢が高校生であっても、成長するためには大切なことです!

(文・インタビュー:安田 未由)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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