Interview

三重に現れた高校通算58本塁打のスラッガー・阪本和樹(松阪商)はなぜ本塁打を量産できるようになったのか?【前編】

2020.06.24

 今年の高校生野手では明石商来田涼斗や、東海大相模西川僚祐などスラッガーが揃っている。各地の独自大会でどのようなバッティングを見せるのか。注目が集まる。その中で高校通算58本塁打をマークしているのが松阪商阪本和樹だ。

 松阪商では1年生の夏からベンチ入りを果たし、4番としてチームの打線の中心を担うスラッガーだ。そんな阪本に電話取材で話を聞かせていただき、ここまでの歩みや夏への意気込みを聞かせてもらった。

中学時代、打てなかった経験をバネに

三重に現れた高校通算58本塁打のスラッガー・阪本和樹(松阪商)はなぜ本塁打を量産できるようになったのか?【前編】 | 高校野球ドットコム
阪本和樹(松阪商)※写真提供=松阪商野球部

 2年秋の時点で高校通算52本塁打まで積み上げた阪本。中学時代はヤングリーグ・三重ゼッツで18期生として入団。同級生には21世紀枠の候補にもなった近大高専でプレーする藤井彩翔をはじめとする仲間がいたが、ジャイアンツカップといった大きな舞台には出場とはいかなかった。

 その中で阪本は過去4度の甲子園出場経験を持つ松阪商への進学を決める。元々、松阪商は強打を武器に県内でも有名だったが、中学時代はバッティングには自信がなかったと阪本は振り返る。

 「三重ゼッツの時は全然バッティングで活躍ができていなくて、3年生になって、『このままだとやばいな。打てないと試合には出られない」』と思って、かなり練習をしました」

 1年生からベンチに入り、試合で活躍する。そのために阪本が取り組んだことはひたすらバットを振り続けることだった。
 「毎日素振りはしましたし、バッティングセンターにも行って、とにかくスイングスピードを速くしようと、がむしゃらにバットを振っていました」

 自分の課題を正面から向き合い、ひたすらバットを振り続けた阪本。すると、入学直後から成果が表れ始める。練習試合で起用され結果を残し続けると、冨山悦敬前監督の目に留まり、3年生たちの試合にも代打で出場。少ないチャンスだが、阪本はそこでもきっちり結果を残し続け、1年生の夏からベンチに入ることが出来た。

 現在、チームの指揮を執る北村祐斗監督は、「本人の頑張りもあるとは思いますが、最初から飛ばす力は持っていた」と阪本が持っていたポテンシャルの高さは光るものがあったが、練習の積み重ねでベンチに入ったと当時のことを語る。

[page_break:憧れの先輩スラッガーを真似て長打力アップ]

憧れの先輩スラッガーを真似て長打力アップ

三重に現れた高校通算58本塁打のスラッガー・阪本和樹(松阪商)はなぜ本塁打を量産できるようになったのか?【前編】 | 高校野球ドットコム
ティーバッティングをする阪本和樹(松阪商)※写真提供=松阪商野球部

 中学まで打撃に自信がなかった阪本もベンチ入り後は「順調に成長が出来た」とここまでの成長曲線を振り返る。しかし、高校野球のレベルに順応が出来た要因はどこにあった。それは重心の乗せ方にあった。

 「中学生の時まではボールを迎えに行く、前に突っ込む癖がありました。ですので、変化球も合わせることが出来なかったんですが、右足の股関節に乗せる感じでタメを作れるようになると、きっちりボールを待てるようになりました」

 当時の3年生に高校レベルの投手の傾向、癖などありとあらゆるアドバイスをもらえたことが基礎になっていると分析するが、なかでも阪本にとって大きな存在は2学年上の藤崎智也(現名城大)だった。当時、県内随一のスラッガーとして注目された藤崎は、阪本の目標像となった。

 「いろんなアドバイスを聞いて自分なりに考えながらやっていましたが、藤崎さんは当時4番で、真っすぐも変化球も強い打者でした。今の打撃は藤崎さんから教わったことが一番多く、実際にフォームも真似をしてみたら、しっくりきたので、そのまま真似させてもらっています」

 松阪商はその夏、決勝戦まで勝ち進むものの三重白山の前に敗れ、悲願の甲子園とはならなかった。ベンチに入っていた阪本だったが、新チームになると憧れの先輩・藤崎に代わり、4番に座る。「4番を任されている以上、結果を残さないといけない」という強い責任感を背負った阪本。

 しかし秋は県大会まで進むも2回戦で津田学園。春は予選で相可の前に敗戦。そして2度目の夏は初戦の宇治山田戦で4打数2安打2打点の結果を残すものの、5対7で敗戦。阪本の2度目の夏はすぐに終わってしまった。

 そして2年秋、阪本は覚醒の時を迎える。

 今回はここまで!次回は新チーム以降の阪本選手の成長に迫っていきます。さらに最後の夏への意気込みも聞かせていただきました。次回もお楽しみに!

(記事=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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