繊細な投球を可能にする天性の指先感覚!心技体を揃え、夏は飛躍を!齋藤 正貴(佐倉)【後編】
昨秋の千葉県大会ベスト16のエース・齋藤 正貴。前編では2年秋の地区予選までを振り返った。後編では腰の治療から復活を遂げた斎藤のピッチングのウリである、制球力の高さに迫っていく。
伝統校に現れた本格派左腕が佐倉に進学した理由 齋藤 正貴(佐倉)【前編】
小学4年生でボールの握り方に気づき、コントロールに苦しんだことがない
ピッチング練習をする齋藤 正貴(佐倉)
飛躍を目指す齋藤にとって思わぬアクシデントだった。まず初戦の松戸国際戦は5回まで投げ降板。齋藤は「5割の力しか出せなかった」と悔やむ。次の千葉経大附戦ではベンチから戦況を見守った。
この試合は後輩投手が踏ん張り勝利を掴んだが、3回戦の習志野戦では先発したものの3回で降板。二度習志野に敗れ、「秋は応援はなかったんですけど、ソツがなく、さすが強豪校の野球でした」と強さを実感していた。
大会後は治療に専念。練習試合も投げず、練習量も制限され、理学療法士と相談しながら、回復に努めてきた。捕手を座らせて投げるようになったのは年明けから。
そして取材日となった1月27日では、9月29日の習志野戦以来となる実戦登板。仲間相手に3イニングを投げた。その内容は4か月も打者相手に投げることから離れたピッチングとは思えないものだった。恐る恐る投げていた習志野戦と違って、体全体を使った投球フォームから繰り出すストレートの回転は良く、スライダーもしっかりとコントロールできている。
齋藤は「8割の力で投げましたが、久々にしては良かった」と平然と振り返ったが、主将の和田は「とても久々の投球とは思えないです」と驚いた。堀内監督も「彼の良さは左投手ながら変化球でストライクが取れること。高校生の左投手はそれができる投手が少ない。優れた素質かなと思います」と語る。
齋藤自身、「コントロールに苦しんだことはない」と語る。では何故、コントロールに自信を持つようになったのか。それはボールの握り方がポイントとなっている。
野球を始めたとき、親から握り方を教わったが、それがしっくりこないと感じ、技術書でダルビッシュ有のボールの握りを左手に置き換えたところ、しっくりとはまった。ボールを握る際、親指を縦に握っていたのを、横に握るようにしたのだ。少年野球チームに入る小学校4年生で気づいてから、斎藤は制球力が高い投手として活躍することができるようになったのだ。
握りを変えた齋藤 正貴(佐倉)
またこのストレートはナチュラルに動くもので、捕手の和田は「齋藤のストレートは捕りづらいです。インコースの真っ直ぐは真っすぐミットに収まりますが、アウトコースは内へ入ってきたり外へ動いたり、どこへ行くか分からない感じです。打者目線だと打ちにくいです」と分析する。
[page_break:目指すは140キロ越え]目指すは140キロ越え
ガッツポーズをする齋藤 正貴(佐倉)
そして得意のスライダーは投げやすい握りを試しながら完成させた。イメージは「スライダー!」と思って投げることだ。
「よく切る感覚とかいうのですが、僕の場合、それが分からなくて、大事にしているのはストレートと同じ腕の振りで投げることです」
また齋藤は縦、横のスライダーを投げるが、握りを変えずに投げるという。
「握りを変えず、三振を取りたいと思ったら、膝のところと落そうと思って縦にします。カウントを取りたいと思ったら横に。ストライクを取る自信はあります。今の投げ分けは自然となっていたんです。僕は感覚で勝負してきた人間なので。」
こうして天性の指先感覚で勝負する齋藤。フィジカル強化で球速を速くすることはできても、この指先の感覚の良さはなかなか身につかない。あとはケガを治し、体の強さを身につけ、目指すのは「140キロ越え」だ。
「やはり夏には140キロは出したいですし、大学に進んで、その数字は出したい」と意気込む齋藤。
佐倉では数少ない硬式野球継続を希望する選手であり、「意識が高いですよ」と堀内監督も太鼓判を押す。
大学進学先は強豪の国公立、私学にするか検討中だ。そして「自分は経済にも興味あるので、そういうところも勉強できたら」と語る。
エースとして目指す戦績は秋以上。つまりベスト16越えだ。心技体、すべてが揃った状態で春、夏で快投を見せたとき、長い佐倉野球部の中でも歴史に残るサウスポーになることだろう。
文=河嶋 宗一