日本必殺の左のスペシャリストへ!板川佳矢(横浜)が期待できる理由
9月3日から開幕する第12回 BFA U18アジア選手権。2大会連続のアジア制覇に燃える侍ジャパンU18代表の選手たちをピックアップしてインタビューしていく。今回は板川佳矢(横浜)。左スリークォーターから140キロ前半のストレート、キレの良い変化球を投げ分け、安定感抜群のピッチングをみせ、クイック、けん制技術、フィールディングも巧みで、まさに左投手のお手本というべき投手だ。そんな板川は侍ジャパンU18代表の欠かせない左のスペシャリストとなっている。
ワクワク感が好調の秘訣
板川 佳矢
近年の日本代表には左の中継ぎのスペシャリストがいる。2016年は堀瑞輝(広島新庄-日本ハム)、2017年は田浦文丸(秀岳館-福岡ソフトバンク)だが、今年はその座に名乗り出そうなのが、板川佳矢(横浜)だ。「そうなったら嬉しい」と語る板川はその役を担うのに相応しい活躍を見せている。
板川の真骨頂を発揮したのが28日の大学代表との一戦だった。5回裏、板川は一死一塁の場面で登板した。走者を背負った場面からの登板となったが、焦りはなかった。
「渡邉(浦和学院)の2イニング目で走者を出した状況で登板するかもしれないと伝えられていましたので、そのつもりで準備していましたし、集中力は高まっていました」
結果、岩城 駿也(九州産業大)を捕邪飛、渡辺 佳明(明治大)をスライダーで空振り三振に打ち取った。そして、6回裏、一死一、二塁から2番・佐藤 都志也(東洋大)に対して、代表入りしてから解禁した131キロのスプリットで空振り三振、3番・辰巳 涼介を左飛に打ち取り、ピンチを切り抜けた。板川はピッチングを振り返って、「自分は走者を置いた場面が強いと思っているし、監督さんにもそういう場面を抑えてくれることを期待して起用してくれたと思うので、期待に応えられてよかったです」と笑顔を見せた。
抑えていたとはいえ、大学生のレベルの高さは実感していた。
「ボール球は全く振らないですし、甘く入ったら打たれる怖さがありました。だから僕が投げられる球種は全部投げました」
その中で印象的な対決として挙げたのが明大の先輩・渡辺(渡辺元横浜高校監督の孫)との対戦だ。
「渡辺さんがストレートを投げてこい!みたいな意思表示をしていたんですけど、僕も打たれたくないので、最初スライダーを投げたら、渡辺さんがこっちを見ていて笑っていたんです(笑)でも打たれたくないので、スライダーを投げました」
結果として先輩を空振り三振に打ち取った。また、この大会からスプリットを投げている理由も明かしてくれた。
「僕はスライダー、チェンジアップが基本線だったのですが、今回使う大会球はチェンジアップがなじまないんです。だから浅めに挟んで投げています。まだ使い始めたばかりですけど良い感じだと思います」
少し試しただけでも武器にする器用さが素晴らしい。また結果を残したいのは理由がある。
「甲子園の時は調子が悪くて、自分のピッチングができませんでした。調子が悪い中でも僕を選んでくれた方、監督さんのためにも結果を残したいんです」
確かに甲子園のストレートは常時135キロ前後と確かに悪かった。板川は技巧派として見られているが、ストレートの走りも良い。ストレートの調子が良かった5月の関東大会、6月の招待試合・常総学院戦では先発ながら140キロを連発していた。代表入りしてからの板川はまさにその状態を取り戻しつつある。その理由として横浜高校のチームメイトのキャッチボールを挙げてくれた。
「そいつとキャッチボールをしながら、フォームの悪いところを修正しました。それが良かったかもしれませんが、ここまで調子が上がるのは自分でも驚いています」
また、JAPANのユニフォームを背負うワクワク感も好調の秘訣だ。
「横浜の時はとにかく勝たないといけない。その重圧が半端ではなかったです。今では楽しく投げることができています」
板川は藤平尚真(現・楽天)、増田珠(現・福岡ソフトバンク)に続いて、3年連続の横浜高校からの選出となったが、「僕は藤平さん、増田さんという素晴らしい先輩方には劣りますので、できる限りでやっていきたい」と謙虚な語り口だったが、侍ジャパン大学代表戦での好投を見ると、左殺しのスペシャリストとして、先輩以上の活躍を見せてくれるかもしれない。
本大会に入って窮地を救う好リリーフを見せ、2大会連続のアジア制覇の立役者となる。
取材=河嶋宗一