関東最速右腕・勝又温史「試行錯誤が生んだ150キロ。夏は3年間の集大成を」【後編】
今年の関東地方で、最速右腕として名前が挙がるのが勝又温史(日大鶴ヶ丘)だ。狛江ボーイズから日大鶴ヶ丘入りし、1年秋に142キロ、2年夏には147キロと順調にスピードアップ。そしてこの春、最速150キロを計測した。右投手では関東最速右腕へと成長した。
後編の今回は2年冬から取り組んだ投球改造計画や夏の大会での意気込みを語っていただいた。
関東最速右腕・勝又温史 「未熟さを知った2年秋」【前編】から読む
2年冬から取り組んだ投球改造計画
最速は150キロを誇る勝又 温史(日大鶴ケ丘)
―― では秋の大会が終わって、どういう課題が終わって練習に取り組んでいたんでしょうか?
勝又温史(以下:勝又): ピッチングではフォームの修正、投球フォームを固めることに取り組みました。
―― 具体的にどう取り組んだのか、教えてください。
勝又: まず軸足の使い方を改めました。例えば、自分は軸足が曲がるとしっかり腕が振れないで高めにボールが浮いてしまうので、軸足を曲げるというよりは、最後まで我慢して開かないように投げることを意識しました。
次に取り組んだことはボールの握りを変えたことです。
―― 今まではどう握っていたのでしょうか?
勝又: 今までは指2本をぴったりとつける感じで、指と指の間に空間がなく、しっかり握ってしまい、手首が固まった状態で投げていたんです。だからボールが指先というより手全体で終わっちゃう。よく、しっかりとリリースできると、「バチっ」という音が鳴るじゃないですか。自分はその握りの時はなかなか鳴らなかったんです。
なので自分は、親指を寝かせることもなくて立てることもなくて、中間ぐらいで握って、これが自分に一番合ってました。そうするとリリースした瞬間、しっかりと音が鳴りますし、ストレートの回転もぐっと変わってきました。
―― それはどういう形で気づいていったのでしょうか?
勝又: ピッチングしてだんだん気づいていった感じです。とはいえ、気づいてもすぐにできるものではなく、3年春の一次予選までには完成には至らず、春では背番号「10」でした。
―― 春の一次予選のピッチングを振り返っていかがでしょうか。
勝又: 春の予選では、自分が冬でやってきたことが公式戦で十分に発揮されたかと言われたら、そうでもなく、予選では自分が納得いくピッチングはできませんでした。
本戦に入って少しずつつかんできた実感はあります。やはり実戦でやらないと分からないものがあると感じております。
―― 本大会では創価戦のピッチングを振り返っていかがでしょうか。
勝又: 予選はノーワインドアップって、審判さんに2段モーションを注意されて、それから2段モーションを取られないためにクイックモーションでずっと投げていました。
でもしっくりいかず、監督さん(萩生田監督)から「ワインドアップで投げろ」と言われて、ダメ元というか、自分はワインドアップで投げたことが無かったのですが、「ワインドアップで勢いを使って、自分の持ち味を出して投げてみろ」とアドバイスをいただいたんです。
投げてみるとうまくいって、自分が冬にやってきたフォーム固めとしっかり合わさって、いい感じに投げられたのかなと思います。
―― またフォームもコンパクトになっていますね。
勝又: そうですね。小さい動きの中で、いかに自分の体の力をリリースまで伝えられるか考えて。ムダな動きが多かったというか、必要な動きだけをやったらそうなったということです。
[page_break:150キロを出しても自分のピッチングする追求する方向性は変わりない ]150キロを出しても自分のピッチングする追求する方向性は変わりない
勝又 温史
―― 変化球はどうなんでしょうか。
勝又: 創価戦でもよい感じで投げることができましたし、その後の練習試合でもしっかりと投げられるようになっています。変化球を投げるときのポイントは、真っ直ぐと変化球と同じ腕の振りで投げること。それによってバッターも打ちづらいと思うので。
―― 最近の練習試合ではうまく投げられてますか?
勝又: 5月の時なんですけど、神奈川県の桐蔭学園戦で 自己最速の150キロが出て、一つの目標だったので、良かったです。ストレートは常時140キロ台で、最速は140キロ後半を安定して出すほど状態は良いです。
―― フォームや変化球にもこだわりを見せる勝又投手ですが、どんなピッチングを追求しているのでしょうか?
勝又: 自分の持ち味は速くて力のあるストレートを投げられることです。でもそれを一試合の中でずっと投げられるかというとそうでもないと思います。
なので、ストレートを活かして、いかにバッターに狙いづらくするのかを考えていて、そうすれば、自分の中でもピッチングが楽になると思うので、そこに今こだわってやっています。
今年は日大鶴ヶ丘が主役に
インタビューに答える勝又 温史
―― ここまでレベルアップの取り組みを聞いてきましたが、背番号「1」を取り返すために取り組んできたんですよね。
勝又:そうです。絶対に1を着けたいです。自分が三浦(拓真)に1番取られたので、やっぱりそれは取り返さないとと思って。三浦は制球力も高く、メンタルも強く、試合も作れる投手なんです。とにかく今の自分の一番のライバルです。だから朝5時半ぐらいに集まって投手陣の10キロランニングが週4回あるんですけど、(そういうところでも)負けてられないです。
―― 夏へ向けて、西東京は日大三、早稲田実業など強い相手が多いと思いますが、いかがでしょうか
勝又: でも自分の中では、西東京は150キロを投げる人はいないんで。負ける気はしないです。
―― いよいよ第100回西東京大会を迎えますけど、どういうピッチングを見せていきたいと思いますか?
勝又:自分の持ち味を活かして、その持ち味を意識させてバッターの的を絞りづらくして、しっかり試合を作って、チームを勝利に導けるようにピッチングしていけば、おのずと結果がついてくると思います。
自分のピッチングを見せて、100回大会の主役は日大鶴ヶ丘にしたいと思います。
編集後記
インタビューでは1つずつ自分の取り組みを丁寧に解説した勝又。そこには、1つずつ物事に取り組んできた様子がうかがえる。萩生田監督は言う。
「努力家ですから。時間はかかりましたけど、コツコツと取り組むことができたからこそ、良くなっています。彼が元気な状態で強豪校で投げさせるか。それだけ大きな存在となっています」と全幅の信頼を置いている。そして勝又を3年間の成長を支えてきた菊田トレーナー。勝又はテークバックが大きい独特の投球フォームをしているが、「一般的にいえば、彼のようなフォームの速球派は故障しやすいです。そこは細心の注意を払ってケアをしてきました」と菊田トレーナーの献身的なケアによりここまで肩、ひじのケガはないという。またトレーニングに取り組む姿勢も日に日に良くなっているという。
この夏は3年間の集大成を見せる大会にしたい。
文=河嶋宗一