根尾昂(大阪桐蔭)【後編】危機感を胸に。センバツ連覇狙う
3月23日に開幕する「第90回選抜高等学校記念大会」。出場36校中、ただ1校権利を持つ「センバツ連覇」を目指して戦うのが大阪桐蔭である。昨年の主力選手の多くは今年も健在。ドラフト候補としてもNPBのスカウトから熱い視線を注がれている。そこで高校野球ドットコムはその注目選手たちを独占徹底紹介。第2回で取り上げるのは根尾 昂である。
昨年はセンバツ優勝時のマウンドに立ち、昨秋は投げては最速148キロ、打っては5本塁打を放ち、近畿大会優勝に貢献。NPB12球団が1位候補として注目する「二刀流」の素顔に迫った2編に渡るインタビュー。頂点に立った昨年のセンバツから、昨秋の戦い直前までを取り組みと共に振り返った前編に続き、後編では根尾選手自身が秋の戦いを多角的視点から分析。センバツへの意気込みも存分に語って頂きます。
根尾昂(大阪桐蔭)【前編】春の栄冠・夏の反省・秋への具現化から読む
目覚めた秋。神宮での悔恨
近畿大会・準決勝で完封勝利の根尾昂選手(大阪桐蔭)
前編でお話頂いた取り組みを披露する場となった昨秋公式戦ですが、大阪府大会決勝の履正社戦では粘りに粘って7球目のストレートを振り抜いてライトへ3ランホームラン。ここは根尾選手の取り組みが出たような印象があります。
根尾 昂選手(以下、根尾) そこまで「振りながらタイミングを取る」を強く意識したわけではないですが、あの場面は相手捕手も抑えるために、いろいろな球種を要求していましたし、それを粘って、粘って、甘くなったところを打ち返すことができました。
履正社戦については、試合の後半で身体の使い方を修正できたこともよかった点です。試合序盤は投手に合わせすぎて体が硬くなっていたので、体を柔らかく使おうと思っていたところ、ベンチから『柔らかく、柔らかく!』という声も飛んでいた。それを意識したら、ホームランを打つことができました。
―― 近畿大会ではさらに打棒がうなりました。初戦・京都翔英(京都)では右中間最深部への本塁打。
根尾 打った球はスライダーです。相手投手はスライダーを多投していましたし、2ボールからでしたが、これまでの配球パターンを見てきて、ボールカウントからストライクを取る傾向にありましたので、そこを狙って打つことができました。
―― 智辯和歌山(和歌山)との決勝戦でも決勝本塁打を放ち、優勝に貢献。
根尾 スライダーが甘く入ってきましたので、そのボールを打ち返すことができました。
―― そう根尾選手は簡単に言いますが「甘く入ってきたボールを見逃さず打ち返す」は多くの打者にとって永遠の課題です。根尾選手はどんな心がけでそこを実践しているのですか?また、練習法も教えていただければと思います。
根尾 僕は投手をやっているからわかるんですけど、失投は「投手のミス」なんです。
ですから、失投を打てないというのは、投手からするととても助かる。だから甘い球を打てないと勝てないですし、良い投手になればなるほどその球が来ないんです。
では、そこをどう捉えるかというと、練習から小さくまとまりすぎず、オーバースイングになりすぎず、コンパクト且つ強いスイングを持続できることが大事だと思います。
ただ、僕自身もそこはうまくいっていない部分。まだまだ課題は多いです。
―― 神宮大会の2試合を振り返ると、いかがでしたか?
根尾 野手として課題が残った大会でした。打撃、走塁、守備のすべてで足が使えていなかったですね。本当に動きがよくなかったです。
―― 「投手・根尾」についても聞いていきたいと思います。16奪三振を記録した近畿準決勝の近江(滋賀)戦は、平均球速140キロ台。状態も良かったように感じます。
根尾 確かに、近江戦の状態は良かったです。これまでと比べたら、ストライクゾーンに投げ込むことができましたし、有利なカウントで勝負することができました。
―― この試合ではスライダーも120キロ後半。手元で鋭く曲がりますし、精度も高かった。
根尾 秋では球速が速いスライダーに投げることにこだわっていましたので、言われたようなスライダーを投げられたことは自信になりました。
―― では逆に昨秋公式戦での投球面における課題とは?
根尾 初回からマックスでいけていないことです。今までの登板を振り返ると、初回の内容が悪いので、立ち上がりからしっかりとしたピッチングを見せる。それが今のテーマです。
根尾は二刀流をどうとらえているのか?
全国制覇の色紙を掲げる根尾昂選手(大阪桐蔭)
―― 野手としては「脚を動かす」ということが課題になりますか?
根尾 ずっと課題にしていることが神宮大会では欠点となって出てしまった感じでした。特に守備は前の打球に対して、来れていなかった。
ですので今は、打撃、走塁、守備、投球すべてにおいて丁寧に脚を使うことを意識しています。
―― 昨年12月には大阪府選抜の一員として台湾遠征もありました。木製バットを使った大会を通じていろいろな気づきはありましたか?
根尾 木製バットは金属バットより繊細ですから、難しい。試合の緊張感がある中で、木製バットを使った経験はよい経験でしたけど、ボール球を振っている場面もありましたし、うまくいかなかったところも多かったです。
ですので1月は体づくりの期間。2月から実戦に入ることを考えて、体を強くしたり、柔らかくすることをテーマに練習のペースも考えながら進めてきました。
―― ところで世間的では根尾選手を大谷翔平選手(MLBロサンゼルス・エンゼルス)のような「二刀流」としてとらえる向きが多いですが、根尾選手本人は「二刀流」をどのように考えていますか?
根尾 「二刀流」という言葉にはこだわりはないですし、勝つためには、すべてにおいてしっかりとこなさないといけないと感じています。
僕自身「試合に出させてもらっている」立場ですし、結果を出せないとベンチから外れないといけない。いつもそういう危機感をもってやっています。
―― では、最後に連覇がかかるセンバツにかける意気込みを教えてください。
根尾 去年は素晴らしい経験を先輩たちのおかげでさせていただきました。
その経験をもう一度したいですし、自分の代にとって最後の春になりますので、一戦一戦勝って頂点に立ちたいです。また夏の記念大会でも優勝を目指していますので、夏につなげていけるようにしていきたいです。
―― 今回は貴重なお話、ありがとうございました。
根尾 ありがとうございました。