Interview

大谷拓海(中央学院)「応援してもらえる二刀流プレイヤーに」

2018.01.15

 センバツは第90回、夏の選手権は第100回大会を迎えるなど、高校野球にとって節目の2018年。加えて新3年生となる世代は2000年生まれが大半を占める、いわゆる「ミレニアム世代」。すべてにおいて記念すべき一年を飾るべく、全国各地で逸材たちが活躍の助走に入ろうとしている。

 そこで「高校野球ドットコム」では世代のトップを走る選手に徹底インタビュー。今回登場していただくのは、高い身体能力を武器に投げては最速145キロ、打っては高校通算23本塁打。中央学院(千葉)の「二刀流」・大谷 拓海である。

 昨秋は関東大会初制覇に貢献。センバツで初の甲子園出場を実現させた大谷。インタビューでは本人にこれまでの成長を語ってもらいつつ、大谷を時には厳しく、温かく指導してきた菅井 聡投手コーチからもメッセージをいただきました。

不完全燃焼だった2年夏まで

大谷拓海(中央学院)「応援してもらえる二刀流プレイヤーに」 | 高校野球ドットコム
1年秋の関東大会で1安打完封勝利を挙げた大谷拓海投手(中央学院)

―― 大谷投手は船橋リトルシニアから中央学院に入学直後の1年春から公式戦に出場しましたが、実際に経験をして、どんな感想を持ちましたか?

大谷拓海投手(以下、大谷):とにかく緊張しました。やはり中学の投手と高校の投手とでは、変化球の切れが全然違いましたし、全然打てなかったですね。それでも良い経験になったといえます。

―― 1年夏までは野手中心の出場でしたが、指導者からはどんなことを教わりましたか?

大谷:グラウンドで声をしっかりと出して、存在感を示すこと。それをよく注意された記憶があります。

―― 1年秋からエースとなりましたが、どんな思いでマウンドに登りましたか?

大谷:先輩たちの代なので、負けられない。そういう責任感を持って投げていました。

―― 関東大会初戦の山梨市川(山梨)戦では9回二死までノーヒットノーランの1安打完封でした。

大谷:気づいたら9回二死まできていました。個人的にはあまり実感がない試合です。それよりも準々決勝の作新学院戦(栃木)に打ち込まれて負けた(1対9で7回コールド負け)ことのほうが印象に残っています。あの試合で、自分の実力不足を痛感した試合となりました。

―― 1年冬ではどんなことを重点に置いてトレーニングしましたか?

大谷:今では体幹中心のメニューが多いですけど、1年生の時は体重を増やすことが重要視していたので、ウエイトトレーニングを中心にやっていて筋力をつけていたと思います。

―― しかし2年春、夏は思うような成績を残せず、夏では千葉大会初戦敗退となりました。

大谷:この期間は調子が上がらず、野手として出場をしていましたね。自分のピッチングが思うようにできない時期が続いて苦しい期間でした。

[page_break:ショート経験が「二刀流」飛躍のきっかけに]
大谷拓海(中央学院)「応援してもらえる二刀流プレイヤーに」 | 高校野球ドットコム
秋季大会で好投を続ける大谷拓海投手(中央学院)

ショート経験が「二刀流」飛躍のきっかけに

―― 新チーム立ち上げ当初はショートで練習をやったそうですね。経験して感じたことはありますか?

大谷:ショートは小学校3年生以来でなかなか慣れず。腰高になることもそうですが、味方に対して適切な声掛けなどをする方が大変でした。

―― 逆にショートをしたことで、投手をしていた時に見えなかったことにも気付いたのでは?

大谷:そうですね。僕が投手をやっているときは自分の世界に入り込んで周りが見えていなったんですが、ショートをやったことで、視野もだいぶ広くなりました。

 また、ショートで足の運び方を学んだことで、体重移動もよくなったんです。今まではストレートが垂れたり、お辞儀することが多かったんですけど、キャッチャーミットへ一直線に伸びるストレートを投げることができるようになりました。

―― 8月末には投手に復帰。この時から現在までスリークォーターになっていますが、ここにはどういう意図があるのですか?

大谷:ショートをしていた時、送球が自然とスリークォーターになっていたので、夏休み終盤で投手に復帰してからもオーバースローでなくスリークォーターで腕を振ったら感覚が良かったんです。

 そこで、菅井 聡(投手)コーチに相談し、「腕の振りについては好きな位置で投げていい」とも言われたので、スリークォーターで投げることになりました。

―― 結果、決め球のスライダーにも変化が生じたようですね。

大谷:秋からスリークォーターにしたことで、スライダーはより切れが増して、さらに自信がつきました。


―― 加えてフォークもマスターしたと聞きました。

大谷:以前から投げてはいたのですが、リリースするときに力の入れどころが解ったことが大きいです。

 僕はストレートよりさらに強く腕を振るイメージで、結構深く挟んで投げているんですけど、実際投げていても投げやすさを感じています。

[page_break:収穫の秋、明徳義塾戦で知った「次の課題」]

収穫の秋、明徳義塾戦で知った「次の課題」

―― こうして秋の大会に突入しましたが、指導者の皆さんは「千葉県大会準決勝の習志野戦がキーポイントだった」という意見で一致しています。大谷投手はこの試合、どんな心境で試合に臨みましたか?

大谷:僕も結構気合は入っていました。実は試合前日、船橋シニア時代の友達の鈴木 貫太拓大紅陵)からもLINEで「一緒に決勝行こうぜ」とメッセージがきたんです。そこで改めて「僕も決勝に行ってやろう」と思いました。

―― あの試合は、本当に素晴らしい投球でした。

大谷:そうですね。あの試合は左打者へのフォーク、右打者への外角スライダー、ストレートがしっかりと決まったのが良かったと思います。この試合で最速145キロも出すことができて、絶好調でしたですし、理想通りのピッチングもできました。

―― さらに4回裏には、先制2ランホームランも放ち、投打で大活躍でした。

大谷:相手が古谷拓郎君と、良い投手でしたので、打ってやりたい気持ちもありましたし、先制して流れを作りたいと思っていました。

―― そして県大会準優勝で、関東大会に出場。相手は昨夏の甲子園優勝・花咲徳栄(埼玉)です。

大谷:正直、投打ともに良くなくて、味方に助けられた試合ですね。関東大会は全体的によくなかった試合が多かったですね。

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関東大会優勝を決めガッツポーズする大谷拓海投手(中央学院)

―― 決勝は明秀日立(茨城)との対戦となりました。

大谷:僕は途中からマウンドに登ったのですが、1年生の活躍でリードしてくれて、でも自分のせいで負けたくなかったのですが、最後の無死満塁のピンチは緊張しましたね。

―― 優勝の瞬間、大きくガッツポーズでした。あの時の感情は?

大谷:本当にうれしくて、自然とガッツポーズをしてしまいました!

―― 神宮大会では四国優勝の明徳義塾(高知)と対戦(対3vs5●)。印象としてはいかがでしたか??

大谷:相手エース・市川悠太君は本当に良い投手でしたし、打線は今までの大会と違って長打狙いではなく、内野手の間を抜く打球を狙っていたり、隙をつく野球をしていたり、投げていて嫌らしいチームだと感じました。

―― 8回表には逆方向となる左中間へ特大弾を放ちました。

大谷:流れを変えたいと思って打席に立ちました。僕は逆方向へ強い打球を打つことに自信はありますし、自分の狙い通りにストレートが来てそれを打つことができてよかったです。ただ、負けてしまったのは悔しかったです。

センバツをステップに、夏の千葉を制す男へ

―― 中央学院にとっても初の甲子園となるセンバツへ向け、大谷投手は現在、どんなことを課題にしているのでしょうか?

大谷:左打者のインコースストレートをしっかりと投げ込むこと。さらにフォークの精度も上げたいと思います。

―― 最後にセンバツ、さらにその先を見据えた意気込みを教えてください。

大谷:センバツでは中央学院にとって初の甲子園となりますので、みんなで1勝をつかんでいきたいと思います。
 そしてセンバツでは良い投手、良い打者と対戦すると思いますので、そこで感じたことを春以降の練習に生かしていきたいと思いますし、そして夏の記念大会で絶対に出場をしたいです!

―― 今回はありがとうございました!

大谷:ありがとうございました!!

中央学院・菅井 聡投手コーチからのメッセージ

  本人は最上級生となりますし、立場上、一番結果を残さなければならない投手です。

 そして周りから応援してもらえる選手にならないといけません。だから僕は大谷に対して日ごろの練習、トレーニングから一番厳しく接しています。ちょっとしたことでも、注意されているのを見て、ほかの選手たちが「あれぐらいで怒られるのか、大谷は本当に高いレベルを求められているんだな」と選手たちが感じて、そして大谷も心身共に成長をして、いざ守ったときに周りに応援してもらえる投手になってほしいのが指導者としての願いです。

 技術面については体ができてどうかですね。体ができて、下の使い方を見極めてこのままのメカニズムでいくのか、さらに踏み込んで指導をするのか。考えていきたいと思いますが、私の役割は大谷に自覚をもってもらうために厳しく接し続けたいと思います。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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