濱田 太貴(明豊)ミレニアム年代の主砲が語る「理詰めの長打論」
夏の甲子園では3番・左翼手として15打数9安打9打点2本塁打で明豊(大分)を8年ぶりのベスト8に導いた濱田 太貴(2年)。三塁手に転向し副キャプテンを務める新チームでも秋季大分県大会優勝、九州大会ベスト8.高校通算本塁打を32本(11月14日現在)にまで伸ばし、ミレニアム世代を代表する主砲に成長している。
では、そんな彼は普段、どのようなことを考えて打撃に向き合っているのだろうか?今回は濱田選手自身が自らすべて語る「理詰めの長打論」を紹介していきたい。
「バットとボールの当て方」の変化とティーの重要性
ティーバッティングを行う明豊・濱田 太貴(2年・三塁手)
僕は中学時代、ホームランしか狙っていない打者でした。通算で30本くらいは打てましたが、その時はボールの下を強く打って、こすって乗せてバックスピンをボールにかけることを意識していたんです。当時はうまくっていたと思っていました。ただ、今振り返ると逆方向への本塁打は少なかった。力が入りすぎて打ち損じが多かったと思います。
しかし、高校に入るとバットにボールが当たらない。中学野球を引退していた9月から高校に来るまで何もしていなかった(苦笑)こともあったんですが、三振・三振ですぐに試合でも交代。変化球にも対応できない。ここで「バットとボールの当て方」を変えなければいけないと感じました。
具体的な変更点は「バットの芯に当てて、バットとボールの接地時間をできるだけ長くしながら乗せる」ということです。そこで僕はティーのところから全部芯に当てることを意識しました。ティーから意識して打撃練習を続けてきたことで打球の質も変わりました。
実はスイングトレーサーを使ったスイング解析でもそれは証明されている。スイングスピードは139.1㎞の一方、スインク軌道は9.2度。これはほぼレベルスイングで打球とバットが正面衝突している数値である。もちろん、その打球を作ってきたのは明豊のティー。毎日計500球の打ち込みを行う7種類のティーについては、浜田選手が自ら映像で説明して頂きます!
「ヘッドを立て」「すり足打法」「ひじ抜き」が生んだ甲子園での2アーチ
ヘッドを立てたスイングについて説明する明豊・濱田 太貴(2年・三塁手)
これらの練習でもう1つ意識しているのは遼の同部屋だった杉園 大樹(3年・一塁手)さんに「何を意識してスイングしているんですか?」と聞いて教えてもらった「ヘッドを立てて、押し込む」です。この方が力が伝わりやすいんです。他にも3年生は野球のいろいろなことを教えてくれるんです。前キャプテンの三村 鷹人(3年・遊撃手)さんからは今も守備のことを学んでいます。
「ヘッドが立った中で打球が入ってくる」。これで本塁打の確率も上がりました。「最後のひと伸び」が出るようになったんです。本塁打は入学から1年11月までは15本でしたが、2年3月から8月までに13本増やせました。
身体の軸を平行移動せず回すため、タイミングの取り方にも取り組みました。以前は左脚を高く上げていたんですが、「無駄な動きをなるべく0に近づけたい」と考えていた中で、6月の練習試合の時、(川崎 絢平)監督さんから「自然に構えてすり足でいけ」と言われてよくなりました。
すり足で左脚を引いた時、右脚の付け根のユニフォームへしわが入る。そうすると力が溜まる。骨盤に脚が入る感じです。そして右手の押し込みは下からバットをつかんで押し込むイメージ。
そういったことが全て加わって僕はインコースにも対応できるようになりました。大分大会とは観客数も違った甲子園でも打てたのも、それが大きかったと思います。
3回戦の神村学園戦で言えば、3回裏の右翼への2点二塁打もアウトコースに「反応しちゃって」打てたもの。本来はよくない形です。でも、5回裏の2試合連続ホームランは右手の押し込みを試合前から意識して、速い投手のインコースに対して左ひじを抜く形でホームランにできました。これも中学時代から続けていたティーで感覚を養っていたからだと思います。
[page_breakホームランを打つ方法は「気持ち」で負けず技術を高めること]ホームランを打つ方法は「気持ち」で負けず技術を高めること
ロングティーでの明豊・濱田 太貴(2年・三塁手)インパクトの瞬間
新チームが始まってすぐは苦しい時期もありましたが、対戦相手を尊重しつつ打席に入った時は「自分の方が上」という気持ちを持つことで調子も戻りました。将来的には逆方向に三塁打・二塁打を打てる坂本勇人(巨人)さんのような広角に打てる選手になりたいですし、秋から一年ぶりに戻った内野手も練習しないといけないです。
最後にもし、皆さんにホームランを打つ方法についてアドバイスをさせてもらうとすれば、まずは気持ちの部分で負けないこと。「ここで抑えられたら野球を辞める」くらいの強い気持ちで立ち向かうことが大事だと思います。
技術的にはヘッドを立てて、右手で押し込むこと。それをティーなどの練習で地道に続けることです。僕も将来的な目標はプロ野球選手なので、まずはこの冬をがんばって、最後の夏に後悔しないようにしたいですね。
あとがき
甲子園で魅せた天才的な反応の裏にはこんな「理詰めの長打論」が秘められてたのは驚きでしかなかった。自らも智辯和歌山(和歌山)時代、名将・高嶋 仁監督から「ホームランを打て!」と指導を受けてきた川崎 絢平監督も濱田についてこう語る。
「彼は練習でいろいろ考えて試しながらやっていって、ゲームでは反応で打つタイプ。だから、練習でもほとんど木のバットを使いますし、バットがボールにどのように当たるかを楽しんでやっていますね」
野球を楽しみむからこそ、真剣に向き合い、ひたすらに高みを目指す。176センチ76キロと高校球児の平均タイプでも到達できる「スラッガーへの道」。みなさんも冬の練習で少しでも濱田 太貴選手の言葉を参考にして頂ければ、これほど嬉しいことはない。
(文・寺下 友徳)