Interview

井上広輝(日大三)「1年生ながら145キロ!自慢のシンカーで強力打線をなで斬り」

2017.11.10

 7年ぶり優勝を果たした日大三。しかし強打の日本航空石川と延長戦に及ぶ試合を見せるも、惜しくもサヨナラ負け。久々の全国1勝とはならなかった。しかしその中で好投を見せたのが井上広輝だ。兄・井上大成はU-18代表。兄ゆずりの強肩を誇る逸材で、1年夏からその高い才能を発揮していた。今では最速145キロ。東京都制覇に貢献し、神宮に乗り込んだ。日本航空石川と対戦して、得たものは何だろうか。

U-18代表の兄と甲子園優勝投手の吉永健太朗に憧れて

井上広輝(日大三)「1年生ながら145キロ!自慢のシンカーで強力打線をなで斬り」 | 高校野球ドットコム
井上広輝(日大三)

 4回裏まで防戦一方の試合展開。その流れを変えるべくマウンドに登った井上。日本航空石川打線に対し、「みんなパワーがある打者が多かったので、コースに気を付けながら投げた」<br .="" そして最速145キロを誇るストレート。ストレートについては「速くて伸びのあるストレート」を追求するように、全力で腕を振っていくことを意識した井上は、常時135キロ~140キロのストレートを投げ込む。特に光ったのは、アウトコースへのストレートだ。
「自分の中でも自信にしているのがアウトコースストレート。今日はそのコースがしっかりと投げることができてよかった」
言葉通り、外角ギリギリにコマンドされた140キロのストレートは、井上が登板するまで、9安打を放っていた日本航空石川打線は全く対応ができなかった。さらに井上は変化球もよかった。右打者には横滑りする120キロ台のスライダー、右左問わず120キロ台のチェンジアップ、そして左打者に投げ込む120キロ前後のシンカーだ。このシンカーが独特の曲がりを見せ、空振りが奪える。このシンカーが他の140キロ右腕と一線を画している。スライダー、チェンジアップは中学時代から投げていたものだが、シンカーは誰をモデルにしたのか…。日大三の2011年夏のエース・吉永健太朗である。
井上は吉永に強い憧れを持っている。「優勝した姿は見ていましたし、吉永さんのピッチングは憧れです」
そして日大三に進んだのは兄・井上大成の影響が大きい。兄の姿を見て、進んだ井上はこの夏、一緒にベンチ入りし、ともに甲子園を目指して戦った。そして夏が終わっても、兄から「開きが早い」など技術的なアドバイスをもらいながらレベルアップに努めてきた。

 井上の快投にナインも応え、9回表には同点に追いつき、延長戦となった。そして10回裏、無死一、二塁のタイブレーク。捕手は佐藤秀雄に代わっていた。佐藤はブルペンでいつも受けてくれる同級生だ。同級生バッテリーでサヨナラを阻止しようとしたが、3番原田竜聖に安打を打たれ、無死満塁。ここで打席に立ったのは4番上田優弥。一発長打もある打者相手。佐藤と選択したのはストレートに強い打者なので、変化球で勝負。しかし4球目。チェンジアップ。これがバッテリーミスとなり、サヨナラに。井上は「あいつ(佐藤)はいつもしっかりと受け取ってくれますし、信頼しています。あまり試合に出場していなかったので、いつもより緊張していたかもしれません」と仲間をかばった。

 だが、6回を投げて8奪三振、被安打5、自責点0と見事なピッチング。このピッチングができたことに井上は「秋の都大会では調子もよくなかったですし、この投球ができたこは自信になります」と手ごたえを感じていた。しかし課題となったのはスタミナ面。「9回、10回は疲れていたと思いますし、スタミナ面が課題になりました。これからはストレートをもっと磨いていきたいですし、最後まで平均球速を維持できるスタミナを身に付けていきたい」と決意を新たにした。

 普段は物静かな青年だが、マウンドに立つと、一変。強気のマウンドさばきが光った。高校1年生だが、潜在能力の高さは本物。今日のピッチングで、吉永健太朗とだぶらせた日大三ファンも多いかもしれない。もしそんな剛腕へ成長すれば…。日大三は再び全国制覇を狙えるチームとなるかもしれない。

(文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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