勝又 温史(日大鶴ヶ丘)「2018年度東京都最速右腕現る!目標は打倒・早実」
勝又温史(日大鶴ヶ丘)
日大鶴ヶ丘からドラフト候補が現れた。その名は勝又温史。現状では、2018年度東京都最速右腕といっていい投手だ。そんな勝又の歩み、取り組み。そして来年へ向けての意気込みを語ってもらった。
打席の気持ちの持ち方を変えたことが飛躍のきっかけに
雨が降る中、早稲田実業vs日大鶴ヶ丘の一戦は満員となり、異様な雰囲気の中で行われた。この試合でマウンドに登った勝又は見るものを惹き付けるストレートを投げ込んだ。 真っ向から振り下ろすストレートは、常時130キロ後半~143キロで、145キロを2球計測。最速は夏前の練習試合で計測した147キロ。角度あるストレートの球威は実に素晴らしく、対戦した早稲田実業の野村大樹が「速いと聞いていましたけど、実際、打席に立ってみると、想像以上に速かったです。今まで対戦した投手の中でも一番速かったかもしれません…」と言わしめる勝又はどんな投手なのか。
勝又は狛江ボーイズ出身。同期には日大豊山でエースとなった本格派右腕・名倉 侑田がいる。勝又が投手を始めたのは中学3年生と投手歴は浅い。しかし速球を投げる能力は日大鶴ヶ丘入学後からずば抜けていた。
「速い球を投げる才能に関しては1年生からすごかったと思います」と萩生田博美監督が語るように、将来性の高さが見込まれ、1年夏からベンチ入り。1学年上で、プロ志望届けを提出した赤星 優志の背中を追って、レベルアップをしてきた。
「赤星さんからはいつも助言をいただいていましたし、赤星さんの取り組み、そして投球は僕にとってお手本です」
そして赤星が背負ったエース番号を継いで臨んだ今大会。全国制覇を目標とする日大鶴ヶ丘のエースとして勝利を目指して臨んだ早稲田実業戦だったが、悔しいマウンドとなった。6回途中から登板した勝俣は自慢の速球で勝負。最速は145キロを計測し、詰めかけたNPBのスカウトも、スピードをはかる姿を見せるなど、ドラフト候補として刻まれた。しかし逆転打を許し、7回途中で降板。1.1回を投げて被安打3、四死球4、自責点6、1奪三振と結果を見れば悔しさが残る内容となった。
「エースとしてチームを勝たせるつもりで、変化球でストライクが取れず苦しい投球となってしまった。本当に申し訳ない」と肩を落とした。勝又の言葉通り、変化球はスライダー、カーブが中心だが、いずれも精度が低く、カウントが取れない。結果的に直球中心。しかし打ち込まれ、見極められ、常時140キロ台を計測していたストレートは135キロ前後まで落ちるなど、100か0の投球。時折、勝又はサイドスローで投げた。その理由について、萩生田監督が明かしてくれた。
「本当は決め球となるカットボール、フォークを練習させています。しかしまだ実戦で使える段階ではないので、何かカウントを取るためにサイドスローでも投げさせています」
これは秋限定の策だ。やはり好投手は一定のフォームで投げ続けることができる。それができるまでのサイドスロー。秋の地区予選が終わったので、じっくりとフォーム固め、変化球を磨く時間に割くことができるだろう。
「変化球も、直球のコントロールも成長すれば、オーバースローで固定になると思います」と萩生田監督が語れば、勝又も「自分のフォームで投げられるようにしたい」と変化球の精度向上を課題に挙げた。
同じ負けはしたくない。
「次の目標。やはり早稲田実業に負けないことです。もう一度、対戦することがああれば、絶対に勝ちたい」と闘志むき出しにした勝又。萩生田監督も期待は高い。
「投手歴は浅いですし、実戦経験も少ない投手なんです。完成度では赤星には及びません。ですが、投げるボールは赤星以上のものはありますし、これからが勝負の投手です」
また勝又には1年の時間が残されているのだ。やり返すチャンスも、成長する時間も残っている。2014年以来の甲子園へ。猛者揃いの西東京の強豪を封じる絶対無敵のエースとなって見せる。
(文=河嶋宗一)