Interview

筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)「逆方向の本塁打増加はロングティーと置きティーにあり!」【後編】

2017.08.02

 前編では、筒香嘉智選手の高校時代から現在の打撃スタイルの変遷に迫りつつ、打撃面で意識していることに訊きました。後編ではなぜ逆方向への本塁打が多いのか?その理由に迫ります。

逆方向のホームランが圧倒的に増えた2016年

筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)「逆方向の本塁打増加はロングティーと置きティーにあり!」【後編】 | 高校野球ドットコム

筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)

筒香:プロに入ってから気づいたんですけど、やっぱり反対方向に打つ技術というのは、試合に入ったときに本当に役に立つことが多いです。バッティング練習でただ引っ張ってホームランを打つというのは、プロ野球選手なら誰でもある程度できることなので。じゃその技術が試合に役立つかといったらそう役立たないですね。

――例えばポイントを近くするというのは大事だと思うんですけれども、ポイントはかなり近めにとって?

筒香:近いですね。それも急に近くなるものじゃないので、ちょっとずつ自然に年を重ねるごとに近く、日を重ねるごとに近くなってくるので。

――高校時代も近かったと思うんですけれども、ずっとそれを意識して、もっともっとという感じで?

筒香:でも高校時代は今と比べたらだいぶ前です。

――タイミングの取り方も重要だと思いますけれども、急がないで小さく、という感じ?

筒香:僕の中でタイミングがないので。ピッチャーが足を上げて、ここで自分が動き始めて、というのがないので。

――自覚なく動いている感じ?

筒香:説明がなかなかできないんですけど、空間というんですか、ピッチャーとの空間の中で自然に動き始めるので。その空間を作る間(ま)もいろいろありますし、それはなかなか短時間では説明できないですけど。

 横浜高校の2年生だった8年前にはバッティングの1つ1つの動きに明快なコメントを出せた筒香が、プロでタイトルを獲るようになるとそれが説明できないという逆転現象。現在の筒香がロジック(論理)ではなく感覚的な世界で技術習得に取り組んでいることがあぶり出されてくる。

 筒香が重要視する〝逆方向″を検証してみよう。44本塁打した昨年、3方向へのホームラン数は次の通りである。
「ライト方向(引っ張り)28本、センター方向4本、レフト方向(逆方向)12本」

 逆方向へのホームラン12本(27パーセント)は多いのだろうか。15年に放ったホームランの方向を見ると驚くことにレフト方向は1本もなかった。ライト方向が21本でセンター方向が3本である。徹底したプルヒッティングだったのがわずか1年で逆方向へのホームランが12本増えたのである。

 自分の信じる正しいフォームでバットを振り抜くこと、可能な限りキャッチャー寄りでボールを捉えること――現在の筒香が取り組んでいるバッティングに対する姿勢のよさが、これらの数字にはっきり現れていると言っていいだろう。

――筒香さんのタイミングの取り方は高校生にどうやって伝えたらいいですか。

筒香:伝えられないですね。簡単なことのようで、僕も何年もかかりましたし。ずっとやってきて、やっとできるようになってきたなというぐらいなので。

――それはどれぐらいの年数で自分のものになったんですか。

筒香:4、5年かかりますね。それを意識し始めて4、5年です。はっきりわかるようになったのは去年の途中ぐらいです。

――メジャーの選手を見ていて、この選手と自分とはだいぶ違うなとか、そういうことはあまり考えない?

筒香:タイミングだけでいうと全く考えないです。

――練習のときも打球方向は逆方向から入るんですか。

筒香:もちろんです。引っ張るのは最後だけです。

――内角もやっぱり逆方向を意識して?

筒香:日本では取り入れている人は少ないかもしれませんが、どんなにすごいメジャーリーガーでもずうっと反対方向に打ちますね。

[page_break:置きティーをしっかり左手、右手と交互に片手で打つこと]

置きティーをしっかり左手、右手と交互に片手で打つこと

筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)「逆方向の本塁打増加はロングティーと置きティーにあり!」【後編】 | 高校野球ドットコム

筒香 嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)

「こういう感覚だよね、ああいう感覚だよね」とチームメートとバッティングの話をよくするのは梶谷隆幸だという。梶谷のバッティングを「バットが浅い縦軌道で上から出ているように見える」と言うと、「上から下という軌道では振ってないです」と言う。

「レベルスイングで?」と念を押すと、「いいバッターは皆、バットが肩より下から出ています。肩より上から出てくるバッターでいいバッターはいないですよ」と言うので、「こういうのはないと?」とさらに薪割りのような所作をしてみせると、「そういう感覚の人はいますよ。上から叩き潰すという感覚なんですけど。でも実際に振ったら平行というかそういうのが多いです」と言う。

 3割、40本、120打点という理想の数字は意識しないというのが筒香流だ。チームで戦っているので、勝つためにどれだけ貢献できるか、ということを念頭して打席に立っている。

「数字はもちろん大事ですけど、自分の数字はシーズンが終わってから、プロ野球選手なので責任を取ればいいと思います」と、ここは明快に語ってくれた。

 最後にスランプの脱し方を聞くと、「毎日自分のやる練習を必ず作ること」と言う。何か具体的な方法を聞きたいと思っていると、「バッティング練習でただ打っているだけだと、体の変化とかちょっとしたずれに気づかないので、バッティング練習はもうめちゃくちゃいろんなことを考えたほうがいいと思います」と言う。

 映像を撮ってもらって自分のバッティングの状態を確認するのか聞くと、「悪いときの映像は見ないです」と一言。「それでも現在のバッティングの状態はわかりますよ。悪いときに悪い映像を見てもイメージがずうっと悪くなるので。体と心はつながっていると僕は思うので、いい感覚にはならないですね」

――高校生に一つだけアドバイスするとしたら何を?

筒香:やっぱり丁寧にバッティング練習をすることです。あとメジャーリーガーはやってる人が多いんですけど、置きティーをしっかり左手、右手と交互に片手で打つことですね。

――こっちとこっち(片手で)でティーバッティングする?

筒香:最初は置きティーです。あとはもう絶対に、雑に打たないことですね。

――日本ではあまりやらないですよね。

筒香:やらないですね。日本でも取り入れていっても良いかもしれませんね。

――わかりました、ありがとうございました。

(インタビュー/文・小関 順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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