Interview

専修大学 高橋 礼選手「アンダーハンドでも140キロ超えができたワケ」【後編】

2017.04.21

 188cmの長身を沈め、アンダーハンドから最速141kmのストレートを繰り出す専修大の高橋礼投手。大学球界を代表するサブマリンは、プロのスカウトからも熱い視線を集めている。

 東都リーグ最多を更新する33度目の優勝に向かって右腕を撫す高橋投手。後編ではアンダースローの鍵となること、そして髙橋投手が大事にしている「感覚」について伺いました。

自分の「間」が作れているかが調子のバロメーター

専修大学 高橋 礼選手「アンダーハンドでも140キロ超えができたワケ」【後編】 | 高校野球ドットコム

高橋礼投手(専修大)

 専修大松戸では名将・持丸 修一監督の薫陶を受けた。竜ヶ崎一藤代常総学院の監督として春夏通算7度甲子園に出場し、2015年夏には専修大松戸を初の甲子園に導いた持丸監督は、髙橋投手の2学年上にあたる上沢直之投手を北海道日本ハムに送り出すなど、投手指導に定評がある。

 「持丸監督にはクイック、けん制、フィルディングなど、アンダーハンドである前に投手として必要な技術を仕込んでもらいました。これは今も役に立っています」
髙橋投手は専修大松戸時代、3年春からエースとなり、同春の関東大会での4強進出に貢献している。ただ高校でのハイライトは、県ベスト4になった3年夏の4戦連続完封だろう。「あの時は捕手と呼吸が合っていましたし、データでわかっていた各校の打者のウィークポイントにきっちり投げることもできました。これも含め、4連続完封できた要因はいくつかあると思いますが、一番はバッターをしっかり見ながら、自分の「間」で投げられたからでしょう」とプロ注目のサブマリンは振り返る。

 調子がいい時の髙橋投手は、紅白戦などで対戦した自チームの選手から「真直ぐも変化球も腕が振れていて、どちらが来るか全く分からない、と言われる」そうだが、このような状態でもあったのだろう。

 対して0勝と不本意なシーズンになった昨秋のリーグ戦は「打者を観察して投げることができませんでした。打者が真直ぐを待っているとわかっているのに、変化球が決まらず、結果的に真直ぐを打たれてしまう。悪循環を繰り返してしまったシーズンでした」。髙橋投手はこのように自らを省みると「僕の悪いクセでもあるんですが、ピンチの時に投げ急いでしまっていたところもあった」と加えた。

 「投げ急ぐと打者の「間」に合ってしまいます。打者からするとタイミングが取りやすくなる。そこで今年は、投げ急がないようにするのはもちろん、打者や場面によって、打者が待つ「間」を長くしたり、反対にクイックで投げるなど、間合いを変えるようにしています」

[page_break:地面すれすれに投げるためのカギは下半身にあり]

地面すれすれに投げるためのカギは下半身にあり

専修大学 高橋 礼選手「アンダーハンドでも140キロ超えができたワケ」【後編】 | 高校野球ドットコム

高橋礼投手(専大松戸時代)

 投げ急がないためにはフォームも重要になる。専修大の齋藤 正直監督からは「ゆったりと、前を大きくして投げるよう、指導を受けている」という。この一環で、フォームを大きくする取り組みを昨年から継続中だ。

 「齋藤監督と話をして、フォームを大きくした方が、ダイナミックなフォームの方が、打者は打ちづらいだろう、と。具体的には軸足である右足に体重を十分に溜め、テークバックをしっかり取って投げるようにしています」

 こうしたフォームで投げるには下半身が重要になる。髙橋投手はチームのトレーナーと相談しながら、下半身のトレーニングにも励んでいる。
「鍛えているのは、特にでん部(尻周り)とハムストリングといった速筋群ですね。下手投げはより瞬発系のパワーが必要になるので。牧田さんの体つきを見ながら、どこをどう強化すればいいのか、ヒントをもらっています」

 もちろん、制球力を保つためにも下半身は大事になってくる。
「ステップしてからいかに前足の左足で支えられるか、なので。この時に左足が割れてしまうと、腕の位置が安定しないので、コントロールも安定しなくなります。それと体幹も大切ですね。僕は、狙ったところに投げるには、左足と体幹で支えながら、真直ぐに打者に向かっていくことを重視しています」

 髙橋投手によると、地面すれすれに投げるためのカギも「下半身にある」という。
「見た目には腕を意識的に下げているように映るかもしれませんが、あくまでも下半身に腕がついてくる。下半身の動きのタイミングが合えば、自然と腕がアンダースローの位置にくるのです」

 下半身が重要なのは下手投げ投手に限った話ではない。しかし「アンダースローは上手投げのように上体で操作することができない分、より下で十分なエネルギーを作らなければならないのです」。それには下半身の強さとともに柔軟性も求められる。

 「ですから、体が硬いタイプの投手はアンダーハンドには向かないかもしれませんね」
髙橋投手がすぐに下から投げられるようになったのも、股関節の可動域が広いなど、先天的に体が柔らかかった、というのもあったのだろう。

[page_break:少数派だからこそ感覚を言葉にする必要がある]

少数派だからこそ感覚を言葉にする必要がある

専修大学 高橋 礼選手「アンダーハンドでも140キロ超えができたワケ」【後編】 | 高校野球ドットコム
「体で表現するには、まず言葉で表現できなければ、と思っています」

 下手からカーブを投げる時のイメージを聞くと、すぐに「体の近くでボールを転がす感じでしょうか」と答えてくれた髙橋投手。大学の選手にしては珍しく、自分の技術的な感覚を即座に言葉にできる投手でもある。

 「体で表現するには、まず言葉で表現できなければ、と思っています。僕は少数派のアンダースローですしね。上手や横手以上にそういうことが求められるかと。そのためには語彙力が必要で、ボギャブラリーを豊富にするため、齋藤監督の勧めもあって、いろいろな本を読むようにしています。野球以外の本を読むと視野が広がりますから」

 専修大は2015年春に52季ぶりとなる東都一部昇格即優勝を遂げた。だが、昨年は春が5位で秋は6位と低迷。2年時の15年秋に4勝を挙げた髙橋投手も、昨年春は2勝にとどまり、同秋は前述の通り0勝に終わった。それでも昨秋は、二部1位の国士舘大との入替戦に回りながらも連勝し、東都一部の座を死守。髙橋投手は大事な1回戦に先発し、7回を2安打1失点と好投している。「入替戦を制したのは大きかったです。東都は一部で、神宮でやってこそのリーグだと思っているので」と高橋投手。今年は去年の雪辱に燃えている。

 「不甲斐ない1年だった去年の悔しさを晴らしたいですね。今年は本気で優勝を狙えるチームですし、僕は課題である走者を出した時の投球を磨いた上で、先頭に立って引っ張っていきたいと思っています」

 髙橋投手が真価を発揮したその先には、東都リーグ最多を塗り替える33度目の栄冠と、プロの高い評価が待っているに違いない―。

(インタビュー/文・上原 伸一

専修大学 高橋 礼選手「アンダーハンドでも140キロ超えができたワケ」【後編】 | 高校野球ドットコム
注目記事
2017年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】