Interview

国吉 大陸さん(興南出身)「春夏連覇を達成した甲子園を今、振り返る」

2017.03.29

 2010年に甲子園春夏連覇を達成した興南の不動の1番バッターとしてチームを牽引した国吉大陸氏。強豪校を次々と撃破して紫紺の優勝旗を手にした選抜は、全試合でヒットを放っての打率3割6分という好成績だけでなく、要所でチームに勢いを与える活躍した。前年も春夏連続出場を果たしたが、ともにノーヒットで初戦敗退。その悔しさが大きなバネになったと振り返る。

【動画】国吉大陸さんが振り返る3年春・夏の甲子園エピソード

【次のページではインタビュー記事をすべて紹介!】

[page_break:二季連続初戦敗退が選手たちの心に火をつけた]

二季連続初戦敗退が選手たちの心に火をつけた

国吉 大陸さん(興南出身)「春夏連覇を達成した甲子園を今、振り返る」 | 高校野球ドットコム

国吉 大陸さん(興南出身)

 「僕だけじゃなく、みんなそうだったと思いますけど、甲子園に行って勝てないまま帰ってくることが続いたので、沖縄で勝つだけじゃなく、全国で勝つための練習をするというふうに意識が変わったんです。取り組み方もだいぶ変わりました。

 自分たちの代になった最初のミーティングでキャプテンの我如古盛次を中心に『監督に言われてやっているようでは全国では勝てない。1人、1人が目標を持って、監督に与えられたこと以上の練習をやっていこう』と話し合ったことを覚えています。

 例えばコーンを四隅に置いてそこを外周して行うランニングメニューでも、それを外に広げた上で、我喜屋優監督が10周走れと言ったら13周走ったり、それまでよりもスピードをガンガン上げて、みんなで自分たちを追い込んでいきました。常に監督が言ったことに『プラスアルファ』するというのを同級生の中で1つの決めごとにしていました」

 新チームが立ち上がって掲げた目標は「日本一」ではあったが、当時、ナインの口から出ていたのは別の言葉だったという。

「もちろん目標は日本一なんですけど、みんなの口から『日本一』とか『優勝』という言葉は1度も出なかった気がします。『甲子園1勝』『1回戦突破』ということを言っていました。その気持ちが強かったんです」

 そのため前年秋の九州大会でベスト4に入って選抜出場を決定的にすると、そこからは選抜の1回戦に勝つことだけを考えて練習していたという。さらに初戦の相手が関西に決まると、相手エースの堅田裕太を徹底的に研究した。

「左の好投手と評判でしたし、堅田が投げている地区大会などの試合のビデオを何度も見たりして、配球や球筋とかも頭に入れました。勝ったら次に当たる可能性がある投手とかは考えずに、とにかく堅田に絞って対策を行っていました」

 それだけに初戦、特に1回表の第1打席は強い思いを胸に堅田と対峙していた。

 「1打席目はすごく覚えています。センター前ヒット。堅田は実際に対戦してみてもすごくいいピッチャーだなと感じましたけど、最後はスライダーが甘く入ってきて、それをうまく打てました。それまで2度、出た甲子園で1本もヒットを打てなくて、甲子園で自分の力を出すのは、こんなに難しいものなのかと感じていただけに、嬉しかったです。甲子園で打つヒットって、こんなに気持ちがいいんだって思いました」

 個人的な喜びだけでなく、1番バッターとしての大事な役割を果たしたという手応えも感じていた。

[page_break:私生活まで勝つ準備を徹底したことが優勝につながった]

 「チームの最初のバッターとして迎える1打席目は変な形で始めたくないというのは常に思っていました。自分が出ればチームも乗っていきやすいですし、逆に悪い形でアウトになれば相手を勢いづかせてしまう可能性もある。

 特に甲子園とか、大きな舞台では大事だと考えていたので緊張感もありましたけど、その中でヒットを打てた。もともと力のある打線で、あとは甲子園での苦手意識みたいなものがなくなれば上位まで行けると思っていたので、このヒットで、みんなリラックスしてできるんじゃないかなって」

 2番の慶田城開がバントで送り、3番我如古がフォアボール、4番真栄平大輝がレフト前ヒットで満塁とし、5番銘苅圭介のレフトへの犠牲フライで先取点を奪う。

 「初回に先制できたこともそうですが、点の取り方も良かった。バントで送って、繋ぎも良くて、最後は犠牲フライ。本来の自分たちの形の野球を試合直後からできた。いいスタートが切れて、この大会を通じての流れも、この初回の攻撃でできたんじゃないかなと思いました」

私生活まで勝つ準備を徹底したことが優勝につながった

国吉 大陸さん(興南出身)「春夏連覇を達成した甲子園を今、振り返る」 | 高校野球ドットコム

高校時代の国吉さん

 さらには先発の島袋洋奨が1回裏を三者連続三振。試合の主導権を取れたと感じた。
「大会前、島袋は少し肩に不安があったんですけど、出来も良くて終わってみれば14奪三振。関西打線では3番の磯本龍志をもっとも警戒していたんですが、そのキーマンを4打数4三振。5回にも先頭でヒットが打てて、慶田城が送ってくれて、我如古がタイムリー。理想の形でした。攻守にわたって自分たちの野球ができました」

 4対1の快勝で念願の聖地での1勝を手にした。勝因の1つを国吉氏はこう説明する。

 「それまでの2回はもちろん実力が不足していたこともあると思いますけど、甲子園で勝つというところまで想定しないで、ただこなしているだけの練習だったと思います。だから、どこか準備が足りていなかった。

 少しでも準備が足りていないと、試合ではそれが緊張という形で表れて、いつも通りプレーできない。それで悪循環になっていく。一生懸命やっているつもりではありましたけど、もっとやれる部分があった。」

[page_break:「日大三の選手の体の大きさにびっくり!」]

国吉 大陸さん(興南出身)「春夏連覇を達成した甲子園を今、振り返る」 | 高校野球ドットコム
「私生活を徹底していなかったら、ある程度までは勝てても、優勝はできなかった」

 「野球の面だけでなく、私生活であったり、すべてにおいて戦える精神状態に持っていくための準備ができていなかったんです。私生活で言えば、規則正しく生活するとか、挨拶は大きな声でするとか。身のまわりの整理整頓をしっかり行うとか。

 小さいことですけど、そういうところで緩みがあると、野球でもどこかに緩みが出てしまったりする。ミスが出たり、続いたり、相手に少しの隙を与えてしまう。そのことは1年生のときから監督にずっと指導されていたことなんですけど、僕らも最初は普段の生活と野球がどう結びつくのかなと思いました。

 道に落ちているゴミを拾うことも、始めた当初は見過ごしてしまっていました。慣れてくると自然とできるようになっていきましたが、その効果を本当の意味で感じたのは甲子園で勝ち抜くことができてから。

 優勝するまでの間にいくつかキーポイントがあって、そこでいつも主導権を握ることができたのは、そういう私生活の部分のちょっとした差が相手を上回れていたからなんじゃないかなって。みんなもそう思っているんです。私生活を徹底していなかったら、ある程度までは勝てても、優勝はできなかったんじゃないかなと思います。

 新チームになってからは甲子園で勝てなかったこともあり、より徹底してやるように努めていたんです」

 いずれも強豪の智辯和歌山帝京大垣日大に完勝し、決勝の相手は名門・日大三。試合前から「ビビっていた」という。

 「最初、バスで甲子園の裏に着いて、相手も同時にみんな降りてくるんですけど、日大三の選手の体の大きさにびっくりしました。僕の目線が相手の胸くらいで、『うわぁ~』って思いました。180センチ越えがズラッといて、体つきも違い過ぎてヤバいなと思いました。みんなも同じで、試合の序盤は完全に飲まれていた感じはありましたね」

 【いよいよセンバツの決勝秘話!後編に続く!】

 

(インタビュー/鷲崎 文彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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