Interview

東海大市原望洋 金久保 優斗投手「先輩・島孝明に続け!成長したピッチングを甲子園でみせる!」

2017.03.21

 第89回選抜高等学校大会の注目投手の1人・金久保優斗東海大市原望洋)。中学時代(佐倉シニア)はジャイアンツカップ優勝を経験。東海大市原望洋入学後は1年秋から公式戦のマウンドに上がり、2年夏には最速146キロを計測した。秋はエースとなり関東大会準優勝に導くピッチングを披露。7年ぶり2度目の選抜出場を手繰り寄せた。180センチ72キロの細身の体型の金久保がいかにして140キロ後半を投げ込むようになったのか、その取り組みや選抜へ向けての意気込みを伺った。

東海大市原望洋に進んだ理由

東海大市原望洋 金久保 優斗投手「先輩・島孝明に続け!成長したピッチングを甲子園でみせる!」 | 高校野球ドットコム

金久保 優斗(東海大市原望洋)

 佐倉リトルシニアに所属していた金久保は、中学3年時にジャイアンツカップで優勝を経験。当時のチームメイトには、峯村貴希木更津総合関連記事)や吉野海都習志野)、そして東海大市原望洋でチームメイトとなる藤本 誠啓塚本 翼鯨井 祥敬などそうそうたるメンバーが揃っていた。現在、最速147キロのストレートを投げ込む金久保だが、当時について「120キロ後半ぐらいで、最速は132キロ。ストレートは少なく、変化球投手だったと思います」と振り返る。

 金久保が東海大市原望洋に進学を決めたのは、これまで多くの好投手を多く輩出しているチームだったからだ。そして1学年上で、佐倉シニアの先輩である島 孝明(現・千葉ロッテ)がいたのも大きかった。
「僕も同じ環境で今までの先輩たちのようにレベルの高い投手になりたいと思いました」と、東海大市原望洋の門を叩く。

 そんな金久保が東海大市原望洋に来て分かったこと。それは投手陣は、選手自らが練習メニューを組み立てて取り組んでいることだった。
「佐倉シニアの場合、指導者から言われて取り組むことが多かったのですが、ここは選手に任されることが多かったです。先輩たちは自ら練習メニューを考えて取り組んでいました」

 そこでまず金久保が取り組んだのは体幹トレーニングだ。メニューは腹筋、腕立て伏せと30回3セット、これを毎日行った。この取り組みの成果が発揮されたのは1年秋。1番セカンドとしてスタメン出場した県大会柏日体戦では、延長10回から登板し、最速138キロを計測した。入学当時の132キロから早くも6キロの球速アップに成功した。

強く腕を振るフォームにこだわり、最速146キロを投げ込むまでに

 そして冬の練習に入り、金久保はさらなるスピードアップをテーマにトレーニングに励む。短距離、ロング、スクワット、ウエイトトレーニングなどのメニューに取り組んだ。島の姿も刺激となった。
「島さんは自分でメニューを組み立てて、1人で黙々と練習に取り組める方でした。島さんの姿を見て、自分も自分のためのメニューを頑張らなければならないと実感しました」

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金久保 優斗(東海大市原望洋)

 島のストイックな姿勢は金久保にも大きな影響を与えていたことは間違いない。一冬明け、金久保は140キロ台を計測するまでに成長。県大会では決勝戦以外のすべての試合で先発し、好投を見せた金久保は、リリーフとして150キロ級の速球を投げ込んでいた島とともに優勝に貢献。県大会後の関東大会でも登板した金久保は、夏の大会へ向けて大きな自信を掴んだのであった。

 来たるべき夏へ向けて、金久保は技術的な練習メニューを増やしていった。金久保が投球フォームでこだわっていることは、腕を強く振れる体の使い方をできるようにすること。
「テイクバックを小さくして、無駄な動きを省くこと。僕の腕の振りの軌道はスリークォーター。このとき、体の回転が横回転にならず、なるべく体の回転は縦の動きができているイメージで振るようにしています。そうすると体が横に流れず、強く腕が振れるようになりました」

 コントロールにも自信がある。「普段のキャッチボール、ブルペンの投球ではリリースから投げるコースまでラインを描くイメージで投げています」と秘密を明かしてくれた。フォーム固めもうまくいき、夏の大会まで順調に調整を進めていった。Aシードで迎えた夏の大会は「好調でした」と語るように、スピードはさらに上がり、常時140キロ前半〜中盤まで速くなっていた。

 準々決勝では選抜ベスト8木更津総合と対戦。[stadium]QVCマリンフィールド[/stadium](現在はZOZOマリンスタジアム)は大勢の観衆で埋まっていた。目当ては木更津総合のエース・早川 隆久(現・早稲田大関連記事)、そして東海大市原望洋のエース・島との投げ合いだ。

 この大一番の試合、先発マウンドに登ったのが金久保だった。リードした状態で島にバトンを渡そうと意気込んでの登板。立ち上がりから好調で、最速146キロのストレートを武器に木更津総合打線に立ち向かっていき、7回途中まで犠牲フライによる1失点に抑える好投を見せた。しかしこの1点が決勝点となり、惜しくも敗戦。さらに打たれたのが金久保と同じ佐倉シニア出身の峯村だったのが、なおさら悔しかった。

昨年8月の不調を乗り越えるために意識したこと

 新チームでエースを任された金久保が心がけたことは、完投できる投手になるために、打たせて取る投球をすること。しかし心の片隅にあった、さらに速いストレートを投げたいという欲求が金久保の投球技術を狂わせていた。

 金久保は8月に調子を落とし、秋の一次予選志学館戦で4失点を喫し、敗退。そこからなんとか敗者復活戦は勝利して県大会に勝ち進んだものの、まだ調子が上がらなかった。復調のため、金久保はシャドーピッチングなどでフォーム固めを行った。フォーム固めで意識したことは、「マウンド方向へ踏み出す左足をうまく乗せるようにすること」。そのため左足をゆっくりと上げて、軸足にしっかりと体重を乗せてから踏み出す動きを繰り返し行った。

[page_break:選抜優勝を目指して、再びストレートを追求!]

選抜優勝を目指して、再びストレートを追求!

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金久保 優斗(東海大市原望洋)

 この修正作業により、県大会で再び好投を見せる。関東大会がかかった千葉県大会準決勝専大松戸戦では1失点完投。そして関東大会準々決勝山梨学院戦もで2失点完投勝利し、選抜出場へ大きく前進。秋季大会では13試合に登板し、そのうち10試合が完投と、新チームスタート時に掲げた「完投できる投手」となって、7年ぶり選抜出場を果たした。

 そして2年目の冬、金久保はさらなるレベルアップを目指して、ウエイトトレーニングのメニューに割く時間を今までより増やし、プロテインを飲む頻度を増やしたり、学校に訪れるトレーナーにも積極的に質問を行った。また、投球フォームのチェック、肩肘の柔軟性を高めるエクササイズ、股関節や体幹を鍛えるトレーニングを教わり、毎日取り組んできた。

 ウエイトトレーニングでは、とにかく重いものを持ってトレーニングするイメージがあるが、金久保の場合は、自分が持てる重量に設定して、動作スピードを意識して行っている。フォームが乱れていないのかをトレーナーにチェックしてもらいながら、実施している。

 チームメイトはそんな金久保の取り組む姿勢についてこう語る。
「あいつは投げても打ってもすごいですけど、何よりすごいのが見えないところでの努力です」
ナインもその姿勢を認める。1人で課題を見出し、黙々と練習に取り組む姿勢は、まるで前チームのエースだった島のようだ。東海大市原望洋のエースに求められる「1人で考えて練習をする」姿勢は脈々と受け継がれている。

 迎える選抜について、金久保は、「オフの取り組みは上手くいって、手応えはあります。選抜ではやはり点を与えない投手になることを目指しています。失点は1失点以内で抑えて優勝したいです」と目標を語った。制球力重視の投球は変えるつもりはないが、昨秋よりも平均球速を高めた投球を見せたいと意気込む。

 選抜では強打者が集結している。そういった打者との対戦を心待ちにし、「インコースへ思い切りストレートを投げ込んで抑えたいです」と話す金久保 優斗
中学に続き、二度目の日本一を目指して。自分の持てる力をすべて発揮する。

(インタビュー=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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