Interview

バトルスタディーズ第100回記念対談!  なきぼくろ先生×芹 玲那さん(公式レポーター)第4回「楽しむために「自分で」努力する」

2017.02.26

 最終回の第4回では「試合で楽しむ」当時のPL学園を支える自主練習を紹介。そして、なきぼくろ先生から高校球児へのメッセージもあります!

■第1回から読みたい方は以下をクリック!
第1回「バルスタディ」の秘密
第2回「なきぼくろ先生」のPL学園時代披露その1!
第3回「なきぼくろ先生」のPL学園時代披露その2!

「楽しむ材料」を見つけて、自主練習で伸ばす

バトルスタディーズ第100回記念対談!  なきぼくろ先生×芹 玲那さん(公式レポーター)第4回「楽しむために「自分で」努力する」 | 高校野球ドットコム

なきぼくろ先生

芹 玲那さん(以下、芹):先生の同級生には狩野くんのように試合を楽しむキャラクターはいましたか?

なきぼくろ先生(以下、なきぼくろ):試合のときだけは楽しかったです。当時、コーチからも言われていたんですよ。「練習で笑うことはないよ。笑いたければ試合で笑え」と。練習のときはヒイヒイ言いながら、泣きながらやっていた反面、試合のときは楽しいですし、発表会という感覚でした。あんだけキツイ練習をして、そしてPL学園のユニフォームを着れるわけですから、勝てると本当に嬉しかったですね。

芹:漫画の中ではがむしゃらにやっているキャラクターの姿が多いのですが、それは先生が「選手たちはこうあってほしい」というメッセージが込められているんですね。

なきぼくろ:そうです。

芹:見る側からすると、やはり一生懸命、やっている人は応援したくなりますし、心を打たれます。私はテニス部出身で、楽しくなくなった時、練習に行くのも嫌になったこともありましたけど、ただ野球部のようにそこまで厳しくなかった。やっぱりあの厳しい環境を耐えられる人ってすごいなと思います。

なきぼくろ:要は厳しい環境でも「楽しむためにどうするか」なんです。僕自身はそこまで打てる選手ではなかったので「どうやったら楽しめるか?」を考えました。結果、チームメイトの中で一番長けたものを作ることに決まったので、僕がしていた2番打者に求められる役割のバントを完璧に決める。そして守備では一番守備範囲が広い選手になろうと思いました。そうなると守っている時が楽しくなりますし、バントする場面になると楽しくなるんです。「任せとけ」の心境ですね。

芹:プレッシャーはなかったんですね!

なきぼくろ:なかったですね。絶対にバントで送らないといけない場面で楽しい気持ちになるんですよね。逆に打つ時になったら「打てないかもしれない」と焦るんですけど(笑)。だから信頼を得られるように、ひたすら練習ではバントをしていました。自主練習も含めて。

芹:私的には意外です!PL学園では自主練習もやるんですか?

なきぼくろ:PLの場合は最上級生だけが参加できる自主練習時間の方が長かったです。全体練習はコンパクト。アップ、キャッチボール、バッティング、ノック、ランニングと基本的なことだけ。でも、そこで課題が見つかるんです。たとえば外野ノックで2~3回しか守る機会がなかったとします。でも、その3回のうち1回ミスって2回決めたとしても、1個ミスったのを頭の中に入れる。そうすると「自主練習したい!」という気持ちになってくるんです。

芹:練習中から自主練習をイメージすることが大事なんですね!

なきぼくろ:全体練習は発表会みたいなもの。自主練習が「練習」なんです。各自で自主練習をして、翌日の全体練習でコーチや監督に「僕はここまでできるようになりましたと見てください」という気持ちでやる。発表会なんです。それが試合のメンバーを決めるのにつながっていくんですよ。

 
[page_break:「声だし」「攻守交替」でも解るチームの強さ]

「声だし」「攻守交替」でも解るチームの強さ

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芹 玲那さん

芹:私、高校野球の試合を見ていて気になったことがあるんです。「声出し」なんです。地方大会を見ると、仲間を励ます声が多いんですけど、強豪校となると味方にもプレッシャーをかける声出しをすることで相手にもプレッシャーをかけることが多いなと思いました。「バトルスタディーズ」ではDL学園の試合での声出しのことを詳しく書かれていました。あれば先生がいた当時のPL学園でも同じような声出しをされていたのですか?

なきぼくろ:僕の現役時代は気の弱い投手が四球を立て続けに出すと、一塁手がマウンドに向かってすごいヤジを出すんです。なぜかといえば、そこで監督に怒られたら萎縮してしまうから、味方同士でヤジを送るんですよ。「お前らどんだけいうねん!」みたいな。そうすると監督に怒られたことで萎縮せず、ダメージは最小限にできるんです。あと、よく高校野球で言われる「さあこい!」はPL学園ではないですよ。そんなことしたって打球はこないですから。これは受け身じゃないですか。だから守備のときも「さあいこうよ!」と声をかける。攻めている時も同じように「さあいこう!」とガンガンかける。攻撃でも守備でも攻める意識で声を出してプレッシャーをかけるんです。

芹:それは強豪校の特徴なんですね。当時の監督さんは声出しについては厳しい方だったんですか。

なきぼくろ:監督は「声出せよ」ということはいわなかったです。試合に必要な声を出せればそれでいいと言われていました。だから試合に入れば、セーフティバントがあるかもしれないから、サードに「前あるぞ!」と言いますし、外野には「肩回しておけよ、風考えておけよ」という指示を出します。だから静かな時はシーンとしているし、声を出すのではなく、仲間に連絡をすればいい。守る時は隣の選手に「前守ったから後ろ頼むで、または前頼むで」と言えばいいです。

 あと、PL学園がやっていたのは攻守交替の練習。「全力で走らなくていいから、かっこよく軽快に見える走り方をしよう」と藤原 弘介監督(現:佐久長聖<長野>監督)も話していました。

芹:そんなこともやっていたんですか!

なきぼくろ:そうなんです。走る時にいかに見栄えよく見えるか。僕はグローブを嵌めたまま走ったらかっこ悪いので、グローブを右手に持って走っていました。外野手はみんなそうでした。「タッタッタ」と足音が鳴るようなイメージで軽快に走る。これを一斉に合わせていくんです。上から撮ったアングルからこれを見ると、本当にキレイに見えます。さらに上達すると、ホームベースへ振り返ったら一緒に振り返れるようになって、キャプテンがポーズしたら、みんな同じポーズができるようになるんです。

芹:すごい!では、先生的に試合を見て、試合で強豪校を見分けるポイントはありますか?

なきぼくろ:いっぱいあると思いますけど、「声かけ」の話で言えば、昨年の明治神宮大会決勝履正社vs早実の試合。見させていただいた時も必要な声しか出していないですよね。カウントや守備位置を毎回チェックしていて、選手同士の連絡をしっかりとしているし、無駄なカバーリングもしない。何もかも全力疾走をしたら、9回までもたないですから。

[page_break:自分を逆算して頂点を狙おう!]

自分を逆算して頂点を狙おう!

芹:「高校野球ドットコム」を読んでくださる方は高校球児が多いので、その先輩として「こう考えれば、野球がうまくなる、また甲子園に出るにはこういう考えが必要だぞ」と思うことを教えてください。

なきぼくろ:僕はそんなに野球がうまくなかったので、アドバイスできることはないんですけど……(笑)。でも、甲子園に出る方法として、あくまで僕の考えが良いか悪いかは別にして、1つの考えとして参考にいただければと思っています。

 僕は中学校1年生の時にPL学園で優勝することを目標に置きました。それができるために当時の僕は逆算して考えました。PL学園に注目されるには、まず中学校2年生の時にレギュラーをとること。そしてチームが強くなれば、推薦の話が来ると思ったので、僕は中学校3年生の時に、全国大会にいくことを目標に置きました。それが達成できたから、PL学園に入ることができたと思います。PL学園に入ったら、レギュラーをとって甲子園に出場することを目標にしました。そのために自分の得意なことを見つける。僕は本塁打を打つ打者ではなかったですが、犠打と守備が得意でしたので、そこを磨いてレギュラーをとることができました。 

 目標は言うだけではなく「逆算して考える」ようにすること。小さい目標でもいいので、自分で決めてもらうことが大事かなと思っています。だから僕が後悔しているのはプロを目指していなかったことなんです。プロを目指してやっていたらそれだけ高い目標を置いて、練習を重ねたり、練習の方法も考えていたと思いますし、もっと打てていたと思います。PL学園で甲子園に行く目標にとどまったことで、最後の夏は失速してしまった。そこは僕の反省点です。とにかく高校球児の皆さんは目標を決めたら、バチッと決めてもらえたらと思います。

芹:では、最後に「バトルスタディーズ」を読んでいるファンの方やこれから読みたい方もいると思うので、メッセージをお願いします。

なきぼくろ:この作品には「強いものにはワケがある」というメッセージを込めて描いています。その中で僕が3年間を過ごしたPL学園という厳しい環境を伝え、その環境で勝負するにはどんな考えが必要なのか?ただその中でも、笑える場面や感動する場面、PL学園の素晴らしさを伝えようとしています。読者の皆さんにはそういうところを感じてもらえたらと思います。

芹:今回は長時間、ためになる話をありがとうございました!

なきぼくろ:ありがとうございました!

 なきぼくろ先生、とても貴重なお話ありがとうございました!「バトルスタディーズ」がこれからどんな展開を迎えるのか?連載を楽しみにしています!!

■公式Twitter:『バトルスタディーズ公式ツイッター』(@BATTLESTUDIES01)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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