広島東洋カープ 赤松 真人選手(平安出身)「教えて赤松 真人選手!『まずは外野守備に興味を持とう!』」【前編】
50メートル5秒台中盤の快足を生かした広大な守備範囲と遠投125メートルを誇る超強肩。抜群の身体能力を生かした外野守備は球界トップクラスと目される。2010年にはゴールデングラブ賞を獲得し、昨季もカープの貴重な代走、守備要員として89試合に出場。チーム25年ぶりのリーグ優勝の原動力の一人となった外野守備のスペシャリストを尋ねるべく、広島カープの本拠地、[stadium]マツダスタジアム[/stadium]を訪ねた。
守備に興味を持つことが上達への第一歩
赤松 真人選手(広島東洋カープ)
「ああいう打球が来たら捕ってやろうと思い、フェンスを上る練習は日頃からしていました」
2010年シーズン、ホームラン性の大飛球を[stadium]マツダスタジアム[/stadium]のフェンス上部にの登った状態で捕球した「スパイダーマンキャッチ」が大きな話題を呼んだ赤松選手。世紀のビッグプレーは日々の準備の賜物だったことを明かしつつ、「あれは多分もう2度とできないと思います」と笑顔で語った。
「今回の取材テーマは『外野守備の極意』でしたよね」
「そうです。全国の外野手球児たちから寄せられた質問や悩みを赤松選手に応えてもらう、Q&A方式でインタビューを進めていこうと考えています」
「わかりました!」
――それでは最初の質問です。
Q. 上手い外野手とは具体的にどのような外野手を指すのでしょうか?
赤松:肩が強い、足が速いといった身体的条件はもちろん備えているに越したことはないとは思うのですが、ぼくは「なんでそこにいるんだ!?」と言いたくなるような外野手が「うまい」と思ってしまいます。つまり、予測して動けるかどうか。ピッチャーとバッターを観察し、配球等の要素もすべて加味した上で「こういう打球が、あの場所に飛ぶ可能性が高い」といった予測を立てて、準備し、動く。ポジショニングも変わってきますし、予測しておくことでスタートも早くなりますし、トップスピードに入るまでの時間も短縮できる。横への動きであれば、10メートルは守備範囲が変わってきますから。
――予測するだけでそんなに変わるものですか。
赤松:変わります。当然、守備範囲も広がるので、本来なら取れなかったはずのヒット性の打球をさりげなく捕ることが可能になる。ダイビングキャッチをしなければならないような無理なプレーも必然的に減るので、ケガのリスクも減らせることができます。
――プロに一軍レベルだと、ほとんどの選手ができているものですか?
赤松:そうですね。1軍だとほとんどの選手が当たり前のように予測し、動いています。でも中には予測もろくにせずに守っている選手もいますよ。そういう選手はレギュラーは厳しいですけどね。僕が見てきた中では、1年間レギュラーを張れるほどの打力がありながら、レギュラーに定着できない選手もいます。決して守備は下手じゃないんです。ただ、守備に興味がないんですよ。自分は打てばいいとどこか思ってるんですよね。実際、打ちますからね。
――でももったいないですよね。
赤松:そうなんですよ。ほんとにもったいない。そういう選手が守備に興味を持てばかなりの確率でレギュラーがとれると思うので。高校球児のみなさんにも「守備に大きな興味を持つことが上達への第一歩」と言いたいです。
構える際に外野手が実行すべき2つのポイント
赤松 真人選手(広島東洋カープ)
Q. 外野手の構え方に関してアドバイスをお願いします。
赤松:ぼくはどちらかの足を絶対に前にずらして構えるべきだと思っています。
――両足を揃えて構えない方がいいということですか?
赤松:両足は揃えちゃだめです。片方の足を前に出し、前後に左右の足をずらした形でた形でインパクトシーンを迎えるべきです。
――その理由は?
赤松:両足が揃っていると、前後の打球への対応が遅くなってしまうんです。
――前に出す足はどちらでもいいのですか?
赤松:どちらでもいいのですが、横への動きに得手不得手があるのなら、その要素に応じて決めればいいと思います。ぼくはどちらかというと左方向への動きが苦手なので、左方向へスタートを切りやすいように右足を前にした状態でインパクトシーンを迎えるようにしています。あとは動いた状態でインパクトシーンを迎えることですかね。人間は止まっている状態からいきなり動く「静から動」よりも、動いた状態から次の動きに移る「動から動」の方が体が固まることなく、スムースに動けるので。
――なるほど。
赤松:ぼくはインパクトシーンを迎えたい場所の数歩後ろからスタートし、ピッチャーの動きに合わせて前にいきながら、右足が前にある状態でボールがバットに当たる瞬間を迎えるようにしています。目線の高さには個人差があっていいと思いますが、「動から動」と「足を前後にずらす」の2点は外野手の構えに関しては絶対に実行すべきポイントだと思っています。
頭がぶれればボールもぶれる
――次の質問、いきます。
Q. 球際に強くなるコツを教えてください。
赤松:ぼくは球際に弱い選手はボールを追っているときにボールが揺れて見える選手だと思っているんです。ボールが揺れて見えるから、どうしても捕球シーンの精度が落ちてしまう。
――ボールが揺れている高校球児は案外多い気がします。
赤松:結局、ボールが揺れて見えるということは、軸がぶれた、頭が動いた状態で走ってるんですよね。「ボールがぶれて見える!」っていうけど、ボールは揺れてなんかいない。単に自分自身がぶれているんですよ。そこにまず気づくこと。目線を最後までぶらさずに追えれば、自ずと球際力はアップします。
――言われてみれば納得です。頭をぶらさずにボールを追うためのポイントはどこにありますか?
赤松:結局、体幹がしっかりしていれば軸がぶれないので、頭も動かさずに走れる。陸上の短距離選手をみてると走る際に頭が動かないですよね?
――たしかにそうですね。となると、体幹トレーニングが球際力向上の鍵?
赤松:もちろん体幹は強いに越したことはないと思います。でも走る際に身体の軸をぶらさないことを意識し続けることで、頭の動かない走り方のコツを身につけることも十分可能です。ぜひ日々の練習の中で意識して取り組んでみてください。
必要なのは最初の3歩で目を切る勇気
赤松 真人選手(広島東洋カープ)
Q. ボールから目を切って打球を追うコツを教えてください。
――いわゆる「目切り」ですね。目を切るのがこわいという声はよく聞きます。
赤松:わかります。勇気がいりますよね。プロでもきちんと目を切れない選手がたくさんいますよ。
――そうなんですか。
赤松:ええ。でも目切りというと、ずっとボールから目を離すものだと思っている選手がいるみたいですけど、実際に目を切る必要があるのは最初の3歩くらいですよ。走る距離が長くなれば、「目を切って、全力で走って、ボールを再び見て、場所を確認して」という作業が間に入りますが、ずっとボールから目を切っているわけじゃない。必要なのは最初の3歩で目を切る勇気なんです。でもこの3歩ができるかどうかで走るスピード、落下地点への到達時間は大きく変わってくる。
――最初の3歩で目を切るためのいい練習方法はありますか?
赤松:外野手になったばかりの高校時代にぼくがよくやったのは、バッティング練習の時に守備位置につき、インパクトの瞬間に打球から目を切って、一歩も動かずに自分が落ちると予測した地点に視線を移し、そこを指さす練習。指をさした場所の半径3メートルの中にボールが落ちたならば、実際にそこへ走っていれば捕球できたということ。指した地点とボールが落ちた場所がそれ以上にずれたら、ずれた理由を考え、感覚を修正する。そしてずれがなくなってきたら、実際に予測地点に向かって走ってみる。その練習の繰り返しでいつしかスムースに目を切ってスタートできるようになりました。
――ノックの打球よりも打撃練習の打球のような生きた打球の方が上達は早くなりますか?
赤松:やはりノックはほぼ止まった状態のボールを打つわけですから、実際の打球と比較すると回転数が全然違うんです。仮に同じ本数を受けるなら、打撃練習の打球を受けた方がいいとは思います。でも数を受けることだけを考えたらノックの方が短時間で数多くの打球を受けることができます。ともにメリットはあるので、ミックスしながら数多く打球を受けることを積み重ねることが早い上達につながるのではないかと思います。
後編では、赤松選手のグラブのこだわりや、そして高校球児にメッセージをいただきました。
(インタビュー・文/服部 健太郎)
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