Interview

早稲田実業打線をゼロに抑えた大会ナンバーワン右腕・竹田祐の渾身のストレート

2016.11.15

 この秋の話題の中心は早稲田実業だった。
 関東一日大三静岡福岡大大濠など全国レベルの強豪を破ってきた早稲田実業を封じるチームは現れるのか?というぐらい力強い戦いぶりと全国レベルの打線だった。その早稲田実業を止めたのが履正社のエース・竹田祐だった。神宮大会決勝戦の3回裏、4対6の2点ビハインドの場面で登板した竹田は1番野田優人を空振り三振に打ち取ると、チームが逆転した後は落ち着いた投球を見せて、早実の主砲・清宮幸太郎を打ち取り、見事に神宮大会優勝投手となった。今大会20.1回を投げてわずか1失点と抜群の安定感を見せ、名実ともに大会ナンバーワンピッチャーとなった竹田の「真っ直ぐ」へのこだわり、そして注目の清宮との対戦に迫る。

 ずっとストレートにこだわってきた

  生駒ボーイズ時代にはタイガースカップで準優勝を経験するなど、中学時代から実績を残してきた。多くの逸材が集まる履正社でも競争を勝ち抜き、台頭したのは2年春から。

 春季大阪府大会の東海大仰星戦では、竹田は常時135キロ(最速138キロ)の速球で6回無失点。試合後の取材で「将来は150キロを投げたいです」と語った。上半身と下半身のバランスが取れたフォームをしていて、1年後にはどんな投手になっているのかと期待させるものがあった。その150キロに到達するべくウエイトトレーニングなど熱心に行い、今では182センチ82キロとがっしりとした体を作り上げてきた。

 そして新チームではエースを任されることになった竹田は、勝てる投手になるために、前エース・寺島成輝からことあるごとにアドバイスを受けてきた。竹田にとって寺島は憧れであり、目標であった。寺島から学んだこととは?
「配球や投手としての心構えです。アドバイスを受けるだけではなく、寺島さんの姿はずっと見てきました」
 寺島から学び、新エースとなった竹田は厳しい秋の大会を勝ち抜いてきた。ターニングポイントとなったのは秋季府大会準決勝大阪桐蔭戦。全国レベルの打者が集まった大阪桐蔭打線相手に4失点完投。打たれながらも完投勝利を挙げたことは竹田にとって大きな経験となった。

 さらに、近畿大会以降では、本人がずっとこだわりにしていたストレートが威力を発揮しはじめる。選抜がかかった近畿大会準々決勝高田商戦では8回無失点の快投。この試合、140キロ台のストレートを連発。本人も、「ストレートの走りはよく、どんどん押していけました」と手ごたえを感じる投球内容だった。打っても本塁打を放ち、さらにはコールドを決める適時打を放ち投打で活躍。そして近畿大会優勝を決め、竹田にとっては夏の甲子園、国体と3度目の全国大会の舞台となる神宮大会出場を決めたのであった。

[page_break:神宮大会決勝のストレートが一番よかった]

神宮大会決勝のストレートが一番よかった

野村大樹選手(早稲田実業)

 神宮大会では、竹田のストレートは近畿大会よりも走っていた。初戦は東北大会で猛打をふるった仙台育英打線に対し、7回二死まで無失点投球。1点を取られたが、8奪三振、1失点完投勝利。球速も、終盤になって140キロ台を連発し、「後半になってしっかりと腕が振れるようになり、ストレートの走りも良かったです」とコメント。しっかりとしたストレートを投げるためにこだわっているのは、しっかりと指先に力が伝えられるような腕の振り、体の使い方ができるかだ。理想のストレートは、「150キロ」を投げることだが、打者からは「伸びがある」と感じるストレートを投げることを目指してきた。

 2回戦も強打の福井工大福井と対戦で、3イニングを投げて無失点の投球で福井工大福井打線をしのぐと、準決勝でも強打の札幌第一打線を8回から登板して2イニングを無失点に抑えて、決勝進出を決めた。

 そして決勝戦。3回裏の登場は予定よりも早い出番だったが、それでも「心の準備はできていました」と気持ちを入れ替えてマウンドに登った竹田は野田を空振り三振に打ち取る。「あれでほっとした気分になりました」と、野田に打たれることになれば、さらに早稲田実に流れが傾いていたかもしれない場面だっただけに、大きい三振であった。

 竹田の奪三振で試合の流れをリセットした履正社は4回表に7点を入れて大逆転。そして竹田は走者を背負いながらも併殺に打ち取ってピンチを切り抜ける粘り強さを見せる。この投球についてリードする片山悠も、「竹田も秋からエースとしてマウンドに登るようになってから自覚が芽生えました。それがマウンドの粘り強さにつながっていると思います」と語る。

 注目の清宮については、「どこに投げても打たれる予感がした」と恐れながらも、8回裏、この試合3度目の対決で、キャッチャーフライに打ち取る。
「外角をしっかりと打っていたので、内角が勝負かなと思ったんですけど、インローへしっかりと投げることができました」
 そのストレートは自己最速の144キロ。片山も、「この場面、点差もあり、走者もいなかったので、思い切っていくことができました。狙い通りのコースに素晴らしいストレートがきました」と強気に攻め込んでいって、高校球界を代表する打者を見事抑えた。清宮も竹田について、「ストレートは速かったですし、変化球の切れで本当に良い投手でした。神宮大会で対戦した投手の中では一番だったと思います」と絶賛。

 そして9回裏、自己最速の145キロを計測するなど、140キロ台中盤のストレートを連発。捕手・片山も、「ストレートの走りは今までで一番だったと思います」と早稲田実業打線を3回以降はゼロに抑えて、優勝を果たしたのだ。

 決勝戦では6.1回を投げて無失点。清宮も打ち取り、注目の4番野村からも三振を奪った。その投球は賞賛に値するだろう。今大会は計4試合で20.1回を投げてわずか1失点。防御率0.44と抜群の安定感を示し、名実ともに今大会ナンバーワンピッチャーとなった。

 竹田は150キロを目指すのと同時に、プロ入りの夢も描いている。大会前まで一好投手として見られていた竹田はこの大会の活躍で世代を代表する投手となったのは間違いない。エースを任されて一歩ずつステップアップした竹田祐が、来春~来夏にかけて、正真正銘の高校生ナンバーワン右腕へ成長を遂げていくことができるか。今から楽しみでならない。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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