Interview

履正社高等学校 寺島成輝選手 「大事な試合ほど冴え渡る集中力」 

2016.09.02

 第11回 BFA U-18アジア選手権もスーパーラウンドを迎えた。勝てば決勝進出へ大きく前進する中国戦に先発したのは寺島成輝履正社)だった。6回まで完全試合。7回に四球を与え、完全試合はなくなったが、7回13奪三振、無安打の快投。さらに香港戦でも5回無安打のピッチングを見せるなど、ここまで12イニングでヒット1本も与えず、左腕エースとして期待通りの投球を見せている寺島。

 大事な試合ほど好投ができる秘訣。そして台湾の舞台で存分に発揮しているストレートをどのような意識で投げているのか。その考えに迫った。

大事な試合でも自分のやるべき準備は変わらない

打撃でも貢献する寺島成輝(履正社)

  中2日のマウンドだったが、寺島はいくつもりだった。先発起用を決めた小枝守監督はこう語る。
「彼は精神的に強い選手ですし、意気を感じて投げるタイプ。彼もこの試合で投げると薄々感じていたのでしょう。負けられない試合で彼はよく投げてくれました」と指揮官も称える好投を見せた寺島。大事な試合でもしっかりと投げられる理由とは。
「特別なことをしているわけではありません。自分の中で準備できることをしっかりと準備をして、どの環境になっても、やることは変えずにやり抜くことだけです。だから国際大会だからといって、投げることについては違和感はありません」と語るように、どの舞台にもとらわれず、自分のやるべきことをこなす。それが彼の精神力の強さを生んでいるのだろう。

 そして今回、さらに迫っていきたいのは寺島の投球スタイルだ。最速では149キロと150キロ近い速球を投げる寺島だが、実際は130キロ中盤~140キロ前半の速球が多い。いつでも140キロを投げているわけではなく。130キロ中盤の速球で淡々とカウントを取り、追い込んでから140キロを超えるストレートでねじ伏せる。球速差をつけるのが非常に上手い投手なのだ。
 小枝監督は「打席に立ってみれば分かると思いますが、彼のストレート130キロ前半でもそれ以上に速く見える。いわゆる質のあるストレートを投げることができる投手です。彼はストレートの緩急を使い分けるのが非常に上手い投手ですね」と絶賛する。
 ストレートの緩急。これは寺島自身、意識していることであった。
「入学の時は無意識でやっていたことなのですが、だんだん入れどころが分かるようになって、今はオンとオフを入れながらやっています。ただオフの時でも、決して力を抜いているわけではなく、コントロールを重視してキレのあるボールを投げることを僕は追求してやっています」
130キロ前半でも面白いように空振りが取れる。そこには高校生が投げる130キロ前半ではなく、大人が投げるようなボールである。そしてオンの時では100パーセントではなく、80パーセント~90パーセントのぐらい力だという。

[page_break:8割~9割の力でコントロールすることが大事]

8割~9割の力でコントロールすることが大事

 「僕の中で100パーセントというのが分からなくて、それが出せるか分からないですし、それを意識するとコントロールがめちゃくちゃになってしまう感じがするんです。僕の中で何も考えずに思い切って腕を振って投げることはなく、8割~9割の力で狙い通りに投げることができれば、僕の中で100パーセントだと思っています」

あくまでコントロールとキレ重視。思い切って腕を振って150キロを超えれば頼もしいが、コントロールが定まらなければ、打者はしっかりと見極める。寺島は高校生の時点でその投げ分けを意識できているところが素晴らしいのだ。
 寺島の投球スタイルをしっかりと理解してリードしたのが九鬼隆平秀岳館)だ。
「やはり日本でやる野球とは違い、自分たちよりパワーのある外国の選手と試合をするので、そういったところに対して毎試合、毎試合、成輝の一番良いボールでもあるストレートをただ投げるわけではなく、早いイニングはストレートを中心に、そこからは相手の様子を見ながら、配球を組み立てていこうという話はよくしています。今日は真っ直ぐで押せて、中国打線もストレートにタイミングが合っていなかったので良かったとは思いますね」

 同じ関西人の2人はすぐに意気投合。常日頃から話し合っているようで、しっかりとしたコミュニケーションが快投につながっている。九鬼自身、捕手は難しいポジションだと実感しているが、寺島については「ボールが素晴らしいので、受けていて楽しい」と感じている様子だ。

 普段と変わらずやるべきことをこなす。そしてただ思い切って投げるのではなく、打者を打ち取るためにコントロール重視ながらもキレの良いストレートを投げるという、高い次元で野球ができている寺島成輝。プロのスカウトが評価するのは、能力の高さだけではなく、そういう一面を見抜いているのかもしれない。

これで12イニングを投げて未だ無安打。残り2戦。登板があるかはわからないが、ここまでの活躍度は、出場8か国の投手の中でもナンバーワンだろう。
 寺島の投球は他の投手陣に大きな刺激を与えただろう。大事な韓国戦、そして決勝戦。意気を感じて快投を見せる投手が現れることを期待したい。

(文=河嶋宗一


注目記事
【第11回 BFA U-18 アジア選手権特設サイト】
インタビュー:履正社高等学校 寺島 成輝投手「願いを現実に」
観戦レポート:侍ジャパンU-18代表vs中国代表

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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