早稲田大学高等学院 柴田迅選手「負けても淡々と。柴田が見せたクレバーな一面」
柴田迅選手
最速143キロのストレートは唸るような勢いがあり、そして冷静なマウンド捌き、軽快なフィールディング、キレのある変化球など、投手としてあらゆるものが備わった西東京屈指の本格派右腕・柴田迅(早大学院)。今回は柴田投手の投手としての能力、この冬の取り組み、投手としての考えを余すことなくお伝えしていきたい。
負けた試合の後でも冷静に試合を振り返る
柴田迅選手(早大学院)
負けても魅力的な選手だった。高校生で、これほど自分の投球を振り返られる選手もそうそういない。
早大学院・柴田迅。最速143キロのストレートを武器にする本格派右腕である。投球練習を見ると、ストレートのキレ、変化球の切れ、マウンドに立った雰囲気は別格のものがあり、すぐに好投手ということが良く分かった。ゆったりとノーワインドアップから始動し、左足をゆったりと上げていきながら、右足の膝を適度に曲げてバランス良く立ち、肩関節が非常に柔らかく、テークバックが大きい。またこのテークバックの動きは涌井秀章(千葉ロッテ)を参考にしているようで、実に動きがスムーズかつ、見難い。そして左腕のグラブの動きは、成瀬善久(東京ヤクルト)を参考にしている。そこから伸びのあるストレートを投げ込むために、リリースの瞬間を見ると、打者寄りでリリースすることができている。負けていても自分が参考にしている選手や、どこを参考にしているのかを分かりやすく話すことができている時点でさすがである。
この冬は筋力アップをテーマに、ウエイトトレーニングや走り込みを行い、一冬越えて4キロ増量。目に見えて大きくなったわけではないが、バランス良く鍛えて、段階を踏んで体を大きくしたように見える。
2週間前に腰を痛めてしまった。
「練習試合の投げ初めでやってしまったんですよね。今までトレーニングで鍛えた筋肉と投げる筋肉とではやはり違うのかなと感じました」と冷静に分析。
この大会は短いイニングでの起用。だが一冬でしっかりと体を作ってきたか、ストレートには中々の威力があった。7回裏からマウンドに登った柴田。やっぱり立ち姿が絵になるし、そして投球練習から、思わず前かがみで見てしまうような勢いがあった。そしてこの試合で初めて投げたストレートが140キロを計測。その後も、コンスタントに135キロ~140キロを計測し、125キロ前後のカットボール、カーブ、縦横のスライダー、チェンジアップと球種も豊富だ。7回、8回も抑えて、9回も二死まできた。しかし同点ホームランを許す。
打たれた要因を柴田は分かりやすく説明した。
「まだ1点差なんですけど、チームも、僕もいけるという感じがしていて、バッテリーはストレートを投げて試合を決めるイメージを描いて投げていたところをやられてしまった感じです」と振り返る柴田。このイメージ、多くのバッテリーが陥りがちな落とし穴なだけに、鵜呑みにできないものだ。
そしてサヨナラ本塁打を浴びた球種はチェンジアップ。サヨナラ負けという屈辱的な負けだが、柴田は淡々と試合を振り返っていた。ストレートの走り、変化球の精度、そして事前にどう分析して、どう抑えようとしていたのか、配球ミスした場面はどこなのか?を分かりやすく話した。
敗れると、どうしてもなかなか答えられない球児の方が多いが、柴田のように負けても淡々と答えられる選手は稀だ。
夏はノーシードでむかえることになる早大学院。早大学院を怖いと感じる強豪校は多数いるだろう。そこには柴田迅の存在がある。やはり清宮幸太郎選手など多くのタレントを揃える早稲田実業に最も対抗心を燃やしている。
この夏までストレート、コントロール、変化球の精度、投球術も何も完璧に持っていっていくことができるか。マウンドに立った時の風格はやはり一流選手。この夏は西東京の主役となるか、大いに注目をしていきたい。
(文=河嶋宗一)
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