Interview

千葉ロッテマリーンズ 清田 育宏選手【前編】「プロ入り6年目でレギュラー定着に導いたトレーニング術」

2015.12.18

 今シーズン、打率.317、15本塁打、67打点と1年間通して活躍した清田 育宏選手。そんな清田選手からトレーニングを取り組む上で大事な考え方と、高校球児へメッセージをいただきました。パワー、スピードを兼ね備えた野手になるための方法論、理論が満載です。

1年間143試合、バテずにプレーができる体作りが基本

 入団6年目を迎えた今シーズン。千葉ロッテマリーンズの外野手のレギュラーに定着した清田 育宏は、130試合に出場すると、自己最高の打率.317をマーク。さらに、15本塁打、67打点と長打を武器にチームの勝利に貢献した。それでも、清田は、パワーヒッターの言葉に謙遜(けんそん)する。

「僕はホームランをガンガン打つような選手を目指したいというよりも、二塁打を多く打てるような選手になりたいという目標があります。今年の15本というのは出来過ぎだと自分では思っていて、しっかり振って、右中間左中間に強い打球が打てればいいなと常に考えています」

 シーズンが終わってみれば打率.317と安定した数字を残したが、開幕前の今季の清田の目標は、もっと明快なものだった。

「絶対3割打ちたいとかホームランを2ケタ打ちたいとか、数字の目標ではなく、1年間1軍で試合に出続けたい!というのがシーズン最初の目標でした。そのために、1年間143試合、プレーできる体を作らなければならない。夏場でもバテず、周りの選手がバテたところでどれだけ伸びることが出来るかが1年間の成績につながってくると思っていたので、まずは、1年間戦力として出るということが目標でした」

 前年の2014年は、一軍出場24試合にとどまったが、ファームではプロ入り後、初の規定打席に到達した。そこで、1年間試合に出続けることで、必ず直面するバッティングの浮き沈みの際の結果の捉え方を自ら学んでいった。

「調子の良くない時期が、長期間続かなかったのは、1日1日考え方を変えて、ダメなら次、次、とやっていたのが良かったのかもしれません。2日間打てなくても、3戦目に2本打てばいいやとか。そういう感覚で打席に立てていたので、1年間数字を残せたのかなと思います」

 もちろん、一軍に上がってから活躍が続けられたのは、マインド面だけではない。先に清田が話していた「1年間143試合プレー出来る体作り」は欠かせない。
昨今の清田の体作りの取り組みとして、まずは、2月のキャンプ初日を1つの指標として、オフシーズンのトレーニング計画を立てていく。
初日から、全力でバットを振ることができる体、全力で走ることができる体に仕上げておく。そして、何より、キャンプの時期に「ケガをしない体にすること」が一番のトレーニングのテーマだと清田は話す。
そのためのトレーニング内容は至ってシンプルだ。

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[page_break:清田選手が考える野球がうまくなるためのトレーニング]

清田選手が考える野球がうまくなるためのトレーニング

清田 育宏選手(千葉ロッテマリーンズ)

「ランニングやウエイトトレーニングが基本になりますが、ウエイトは、過度に重たいものを持つことはせず、腹筋、背筋、懸垂(けんすい)や、少し重りを持ってインナーマッスルを鍛えたりしています。
僕は元々、ウエイトトレーニングはあまりやらない方で、うちのチームでもキャッチャーの吉田 裕太はかなりウエイトが好きで、筋肉もすごくて身体も大きくて、トレーニングも野球のプレーに生かされるなぁって思うんですけど、ウエイトをやるなら、吉田のように野球が上手くなるためにやるのがいいと思うんです」

 清田が考える野球が上手くなるためのトレーニングとは?

「僕はスピードとパワーは、比例してくると思うんですが、パワーと言っても、どういうパワーを求めているのか、というところですよね。『打球を遠くに飛ばす』というのをパワーというのであれば、身体のスピード、キレがあれば、自然と打球が飛ぶと思います。だからそういう動きが出来るような鍛え方をしないといけない。そのためのトレーニングの手段をどうするかを考える必要があります。
僕の場合は、野球選手としての理想は、打って守れて走れることなので、全部をちゃんとやりたい。年を重ねてくると、走ったりするのも疲れてくるんですけど、そこは意識をして、例えば、短い距離でもいいからダッシュしたり、常に強く走れるように、全力でという意識はしています」

 清田の答えはここでもシンプルだった。決して難しいメニューではなく、誰でもすぐに取り組めるもの。ただし、そこには、「高い意識」が必要になってくる。
塁間の27メートルを全力で走る。ダッシュ5本走るメニューなら、その5本を全力で走る。特別なメニューではないからこそ、それに取り組む選手の「取り組み方」が大事になってくるのだ。

「全力で走る走り方を覚えていないと、走れなくなってしまうんです。ピッチャーも同じだと思うんですけど、全力で投げるっていうことをしないと出来なくなってくると思うんです。いつも手を抜いていると、全力で出来なくなる。走るのも打つのも、全部同じだと思います。

 普段の素振りだとかティーバッティングももちろん、自分の形を確認するのも大事だけど、それも気にせずとにかく思いっきり振る。打球を飛ばしたいと思った時に僕が初めにやったのはロングティーだったんですけど、そのロングティーでとにかく形を気にせず、どうやったら打球って飛ぶのかなっていうところから入って、下半身の使い方、バットをボールにのせるようなイメージ、感覚…そういうのを僕は全部ロングティーで確認しながらやっています。その中でも、『全力で振る』ということを一番大切にしていますね」

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[page_break:なぜロングティーがおススメなのか?]

なぜロングティーがおススメなのか?

清田 育宏選手(千葉ロッテマリーンズ)

 長打力を高めるために、オススメの練習は『ロングティー』だと教えてくれるプロ選手は多いが、その理由を清田は、わかりやすく説明してくれた。

「やっぱり、長打力をつけたいなら、僕ならまずは、バットを使ってボールを遠くに飛ばす練習をしますね。複雑なことをするんじゃなくて、続けるためには、手っ取り早いということが一番だと思うんです。ベンチプレスが150キロ上がるようになったからといって、打球は飛ばないと思いますが、力もある程度あってバットの使い方も分かってとなると、打球はものすごく飛ぶようになります。それが器具を使ったトレーニングであっても、そうでなくても、何をするにもバッティングのことを考えながらできたら一番良いかなと思います。

 例えば、ランニングをするにしても『身体のキレを出すためにやっているんだ。バッティングでしっかり腰が回るようにラダーをしているんだ』とか。ウエイトするにしても『今鍛えているところの力をどうやってやったらバッティングに使えるんだろうか』とか考えながらやると、普段のトレーニングもすごく楽しくなると思うんですよね」

 そんな清田がウエイトトレーニングを行う際は、基本は上半身だけ鍛えるという。重すぎる器具は持たず、20キロのシャフトを持って、肩に担ぐと、バッティングの構えをして左に、右にと体を回す。その後すぐに、いつも使用しているバットを持って、シャフトを担いで鍛えた部位を意識しながら、素振りをする。回数にはこだわらない。自分で納得するまでとことん振り込む。「今の振りが良かった!」と思えばそれで練習は終了するが、納得がいかなければ、納得のいくまでバットを振り続ける。

「自分にはバッティングしかない。バッティングが良くないと試合に出られない」
ただ、ただ、その思いに突き動かされ、清田はトレーニングを重ねてきた。

 後編では飛躍につながった思考の変化、こんな考えで取り組みをすれば、さらに効果的にトレーニングができるという考えを紹介します!

(取材・文/安田 未由


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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