Interview

徳島インディゴソックス 吉田 嵩投手「『探究』を継続し、NPBへの道開く」

2015.11.26

 昨夏、長崎海星で甲子園出場を果たし、最速145キロを計測した吉田 嵩投手(徳島インディゴソックス)。徳島インディゴソックスでの1年間を経て、今秋ドラフト会議で中日ドラゴンズから育成2位指名を受けた大きな理由は、彼が継続し貫いた「探究」がある。

 そこで今回は10月31日には四国アイランドリーグplus選抜チームの一員として先発し、来季からのチームメイト・中日ドラゴンズに対し3回を1失点3奪三振。早くもストレートに高い評価を得て11月17日に仮契約を交わした「昇り竜」吉田投手に、高校球児の皆さんにも大いに参考となる「探究」の系譜を、高校時代や独立リーグ・四国アイランドリーグplus(以下「四国IL」)の一年間を中心に聴いてみた。

「独立リーグ」選択の裏にあった「探究の継続」

海星高校時代の吉田 嵩投手

 2014年8月15日・[stadium]阪神甲子園球場[/stadium]のマウンドに長崎海星の背番号「1」・吉田 嵩の姿はあった。長崎大会から定位置となったリリーバーとして4回3分の2を被安打5、奪三振2、失点1、60球の熱投で自己最速「145キロ」もマーク。チームは序盤の大量失点が響き、二松学舎大附に5対7で敗戦するも、一定の手ごたえを得た吉田は、心の中で次の進路をすでに固めていた。

「高校に入学した時から高卒でNPBに進もうと思っていました。自分の実力がどの程度まで来ているかも判っていましたから、もしNPBに進めなくても、少しでもNPBに早く行ける可能性がある独立リーグ『四国アイランドリーグplus』という選択をしたんです」(吉田)

 事実、NPBへ向かうための準備も高校時代から積んでいた。1年時から「思い切り投げるだけではダメ」と、ボールに回転を与えながら球速をあげる方法を初動負荷トレーニングなどで追究。球種も三点倒立で握る独特の軌道を描くシンカーなど、5種類まで増やす。

 2年秋からエースとなり、春は長崎県大会ベスト4まで進むも直後に腰椎分離症を発症。それでも彼の探究は続く。1ヵ月後のシャドーピッチング再開から試合を想定し、6月半ばにブルペンに戻ると長崎大会決勝をイメージ。そして創成館との決勝戦。無死二・三塁からリリーフに立つと三者連続三振の快投を見せ、長崎海星・3年ぶり17度目となる夏の甲子園出場の瞬間、マウンドで腕を突き上げたのは「完全にイメージとマッチした」181センチ右腕であった。

「投げたい欲求が強かったし、実戦感覚を積みたかった」。あえて短期勝負のトライアウトでなく、10日間の長丁場となるトライアウトリーグに参加したのも「探究」の成果を満天下に示すため。となれば圧倒的な力を見せ、徳島インディゴソックスから指名を勝ち取ったのも当然である。

 かくして2015年「吉田 嵩、探究の旅」は長崎県から徳島県、九州から四国に場所を移すことになった。

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[page_break:四国・北米での探究は名古屋・NPBでさらなる高みへ]

四国・北米での探究は名古屋・NPBでさらなる高みへ

吉田 嵩投手(徳島インディゴソックス)

 はじめての四国。はじめての一人暮らし。プロとしてオープン戦では「甘かったら連打される」自分の投球ができない葛藤。その中にあっても吉田は徳島インディゴソックス・先発ローテーションの一角として、中島 輝士監督や、牛田 成樹投手コーチ・武藤 孝司コーチのアドバイスを受けながら、さらなる探究の道を貫いていく。

「最初は連戦中の調整法などに苦労する場面もありましたが、食生活やトレーニングに気を遣うことで慣れてきました。リーグ戦になると、中5日・中4日のローテーションを重ねながら腰周りを大きくすること、下半身の粘りなど、いろいろと考えるようになりました」

 こうしてNPBに近い日程にも徐々に対応していった吉田。6月には「四国アイランドリーグplus ALL STARS」にも選抜され、北米遠征でNPBレベルの外国人選手とも対峙。「変化球の精度を強く意識することで『キャンナムリーグ』の打者に対してピンチを背負いながら抑えられた」成果はリーグ成績、前期1勝3敗から、後期4勝1敗へのジャンプアップにもつながった。

「投げていて調子のいい時はほとんどないです。ほとんどが普通か悪い中で結果を残すこと。ストレートもただの球速ではなく中身のあるスピードを出したいんです」

 最速148キロまで伸びたシーズン最終盤になっても、なおも向上意欲の塊だった吉田 嵩に、10月22日・中日ドラゴンズ育成2位指名の吉報が届く。担当の音 重鎮スカウトは吉田の印象をこう語る。
「スピンの利いたボールを投げていたので、最初から入団してほしいと思っていました。そしてローテーションを組んで一年間やれたことは大きいと思います」
彼の探究はついにNPBに認められるところとなったのである。

 11月2日の指名あいさつ後、「まずはNPBの身体にして、一日でも早く支配下登録になって一軍で投げ、ストレートを武器に幅を広げていきたい」と決意を話した後、吉田はこう話した。「山本 昌さんのように現役生活を長く続けられるように、原点を忘れず、苦しいときにはここでの生活を振り返りながら進んでいきたいです」と語った吉田。

 彼はさらなる探究を与えてくれた四国ILへの感謝と、高校球児へのアドバイスも寄せてくれた。
「僕が一年間経験した中で言えるのは、本気でNPBに行きたい気持ちがないのであれば、この四国ILは苦しい場所。でも、本気でNPBに行きたいのであれば、ここは良い場所です。NPBでバリバリやってきた方からもアドバイスが頂けますし、僕はここで『NPBに行く』気持ちで一年間やってきたからこそ、そこは言えますね」

 2016年は四国・北米から東海・名古屋へ。四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスからNPB・中日ドラゴンズへ。長崎県島原市を起点とする吉田 嵩の探究はさらなる高みへ向かっていく。
 

 吉田にとって「四国IL」は正に夢へのチャンスを与えてくれた場所。しかし、いや、だからこそ、吉田は後に続く高校球児たちへの「激励」を送る。

 吉田 嵩をプロの世界へと送り出した四国ILでの一年間の経験を糧に吉田はNPBの世界でさらなる活躍を誓う。

(取材・文/寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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