Interview

敦賀気比高等学校 林中勇輝選手「主将としての重圧を乗り越えて」

2015.11.14

 第46回明治神宮大会2日目。雨天の中、行われた敦賀気比vs創志学園の一戦は、山﨑 颯一郎高田 萌生の好投手対決だった(試合レポート)。試合は敦賀気比打線が高田を攻略し、5対1で快勝。その口火を切ったのは同点打と3点目となる適時打を打った林中 勇輝主将だった。1年生の頃から活躍を見せてきた林中の素顔に迫る。

天才肌に見えて、意外に理論派なところがある林中 勇輝

林中勇輝(敦賀気比)

 近年の高校野球では勢いのある学校として注目される敦賀気比
2014年の主将は浅井 洸耶、2015年の主将は篠原 涼。そして今年のチームは、林中 勇輝

 浅井と篠原の2人を振り返ると、浅井は敦賀気比の野球部の気質自体を変えた男。以前の敦賀気比には、ガチガチの上下関係があり威圧感が漂うチームだったようだ。しかし浅井自身、先輩に可愛がってもらったことでプレーに集中できたという経験から、極力、上下関係の縛りを少なくし、グラウンド上では上下関係なく個性を発揮できるように進めてきた気配りができる選手である。

 篠原はファイターと形容したくなるような熱さと優しさを持った選手。抜群のキャプテンシーの高さU-18ワールドカップでは知れ渡った。どちらかというと篠原が「ザ・キャプテン」だが、浅井も野球部の体質を変えたという意味では、頼もしさを感じる。

 一方、林中はどうなのかというと口数は少ないが、プレーでチームを引っ張る、そんな男である。また話を聞くと、天才肌にも感じる。何か考えて打席に立っているのかと伺うと、「いや特に考えていないですね。配球とか考えると、余計な力が入って打てないので」とあくまで自分の感性に頼ったタイプ。その感性が研ぎ澄まれると、配球のパターンが読める時があるという。

「普段はあまり考えていないですが、たまに何球目はこのコースに来るだろうなという予感をするんですが、その時はたいがいそのコースに来ますね」と打ち返すところは何か天才肌なところを感じさせる。が、技術的な話になると、なかなか理論的になる。

「たとえば打撃で気を付けていることとは、打つ時、手と足が一緒に動かないと意識しています。そうなってしまうと、僕の場合、体が突っ込む形になりやすいので、先に足を動かしてから手を動かすことを意識します。その加減が難しいところです」と語ってくれた。なかなか理論派なところがあるが、基本的には感覚で勝負する選手といえるだろう。

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[page_break:グラウンドでは自分らしいプレーを]

グラウンドでは自分らしいプレーを

林中 勇輝(敦賀気比)

 1年生の時から攻守に渡って冴えたプレーを見せ付け、2年夏の甲子園明徳義塾戦では追い上げとなる本塁打を放った(試合レポート)。常に何か印象的な活躍を見せる林中 勇輝だったが、主将に就任したこの秋は、非常に苦しい期間だったと振り返る。

「主将としてチームを引っ張らなければならない重圧があって、思うようにプレーができませんでした」

 悩む林中を見てチームの関係者が林中へ一言をかけた。
「主将として振る舞うのはグラウンドから離れてからでいいんだ。グラウンドでは主将、学年も関係ない。お前らしく自分のプレーをしろ」

 この一言は非常に大きかった。「あれでだいぶ気持ちが楽になりました。神宮ではこれまでの大会と比べると楽な心境で打席に入ることができています」

 迎えた神宮大会初戦は最速150キロ右腕・高田 萌生擁する創志学園だ。高田とは昨秋、練習試合で対戦したことがあるが、「あの時は速くて、レフトへ打ったかなと思う打球は振り遅れでライト方向というのがありました。速球の勢いが本当に素晴らしい投手だと思います」と絶賛する。

 第1打席は凡退し、迎えた第2打席は同点となる適時打。そして第3打席はランナー二塁の場面で打席に回った。この時、林中は珍しく配球を読んだ。
「緩いカーブでとりにきていたので、じゃあストレートが来るかなと思ったら、その狙い通りにストレートが来ました」

 林中のひらめき通り、高めのストレートを捉え、打球は右中間を破る適時三塁打で3対1とリードを広げた。この打席を振り返って林中は、「ストレートが凄く、完全に振り遅れでした」高田のストレートの凄さを実感しながらも、しっかりと結果を残した。

 高田は「右へ強い打球を打ち返すのがすごかった」と林中をたたえたが、そのことを林中に伝えると「決して右へ狙い打ったわけではありませんよ。それができたら、僕はもっと打てています(笑)」と記者陣を笑わせた。

 不調から少しずつ脱している林中。準決勝では東邦青森山田の勝者と対戦する。「どちらが来ても強い相手であることは変わりないですし、しっかりとやっていきたい」と決意を新たにしていた。

 

 自分らしいプレーを。この2安打で乗っていった林中 勇輝の読みは冴え渡るだろう。準決勝ではさらに攻守両面で大暴れできるか、注目だ。

(取材・文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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