Interview

県立普天間高等学校 與那原 大剛投手 「目指すは日本を代表するエース!」

2015.10.01

 甲子園出場も九州地区での登板もなく、全国でも無名に近い一人のピッチャーが今、熱い視線が注がれている。
普天間高校のエース與那原 大剛(よなはら・ひろたか)。身長190cm体重89Kgと、恵まれた身体から放たれるボールは、最速148キロをマーク。そんな右腕のピッチングを一目見ようと、今夏の沖縄大会1回戦から、多くのスカウトが詰めかけた。

 お世辞にも立派なスタンドとは言えない[stadium]宜野湾市立野球場[/stadium]のバックネット裏に、11球団ものプロのスカウトたちが集結。初戦八重山商工との試合は2対2のまま延長10回へと突入したが、突然の雷雨で、翌日に再試合となる。連投した與那原は、見事な完封勝利で接戦をものにすると、その後の前原戦、沖縄工戦を制し、ベスト8進出を果たしたのだった。準々決勝では、沖縄尚学に3対4で惜しくも敗れたが、豪腕の爪あとはしっかりと残した與那原。そんな與那原のストーリーに迫っていきたい。

藤川 球児の火の玉ストレートに憧れた少年時代

與那原 大剛投手(普天間)

 そんな與那原が野球を始めたのは、小学校3年生の時。当時、テレビやニュースで頻繁にとりあげられていたのが、阪神タイガース自慢のJFKだった。「藤川さんのようなストレートを投げたい」と思い続けた少年は、6年生の時に、北玉ライオンズのエースとして県大会ベスト8や、千葉県で行われた学童軟式野球選抜大会で優勝するなど成長を遂げる。

 桑江中学では軟式野球で県大会への出場を果たすも、上位進出はならなかったが、ここで出会ったのが捕手を務める渡名喜 守哉だった。「一緒の高校で1番になろう」と、與那原は渡名喜と約束。県内外複数校から「是非ウチに」との誘いを受ける中、自分の意思で普天間高校の門を叩いた。

 與那原は、一年の秋からベンチ入りを果たすと、短いイニングながら秋季大会でも登板を経験。だが、同級生たちとの純粋な勝負の舞台となる一年生大会では、地区予選で敗退するなど苦杯を舐め続ける。


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[page_break:ついに140キロに到達した2年生秋]

「実力の無さを感じていました」。投げていても、相手を抑えられる気が全く無かった。それはそのまま、冬のトレーニングにも表れる。ただ、与えられたメニューを、淡々とこなしていくだけの姿がそこにはあった。しかし、好きな野球に対する強い思いと、練習から逃げない生真面目な性格が、徐々にではあるが蓄えとなっていく。オフシーズン明けの春には、一つ上のエース大城 爽生よりも、先発を任されることが多くなっていった。

「球速が上がっていたのが体感としてあった」春の県大会初戦、八重山農林との試合で勝利すると、2回戦の沖縄宮古戦では3回から2番手として登板。7イニングを被安打4の1失点と、しっかり結果を残した。

ついに140キロに到達した2年生秋

與那原 大剛投手(普天間)

 2年生となった與那原は、大事な試合の終盤を締めくくるストッパーとしての役を担っていった。エースの大城が強い球を放るのだが、それを補って余りある経験値とメンタルの強さを、夏まで監督で、現在は部長を務める知念 正仁先生に買われたのだ。大城から與那原へと渡るリレーは、普天間の勝ちパターンとして確立されていく。だが、それでも、独特の雰囲気を持つ最後の夏だけは別だった。

 初戦の首里東戦でリリーフとして登板するも「何とか勝ててホッとしたのが本音」と、3点を失う。4番レフトで先発出場していた與那原だったが、打って走ってヘロヘロの状態でマウンドへ上がりそれでも相手を抑えてしまう、という体力はまだ備わっておらず、「ボールが本来よりも来てないのは予想外でした」と、知念先生も振り返った。

 2回戦の浦添商戦では、初回に3点を奪う幸先良いスタートを切りながら逆転負け。最上級生となる新チーム最初の公式戦である新人大会でも、投打で柱となった與那原に疲労とプレッシャーが重くのしかかる。思うようなボールを投げられず地区予選敗退を喫してしまったのだ。

 秋の県大会では初戦首里東戦で完投し10個の三振を奪ったものの、次戦の北中城戦で11安打を浴び敗退。春の選抜出場という夢が早くも途切れてしまった與那原だったが、これが功を奏したか。上手い具合に疲労が抜けた11月、練習試合とはいえ、コザ名護とのゲームで初めて140キロ超えを見せたのだ。

 こうなればしめたもの。二度目となる冬トレでは、グラウンドのポール間走で全ての本数を、65秒以内で走るなどといった下半身イジメのメニューを精力的にこなしていくその姿は、まるで乾いたスポンジが良質な水をグングン吸収するようでもあった。


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[page_break:4試合連続完投で手に入れた中部地区高校野球大会V]

4試合連続完投で手に入れた中部地区高校野球大会V

與那原 大剛投手(普天間)

 春の県大会では沖縄尚学に敗れ初戦敗退となるも、この春148キロをマークしたストレートに與那原自身も、「そこまで力の差を感じなかった」と、今までとは見違えるような球質に手応えを感じていた。だからこそ、結果を残して最後の夏を迎えたい。知念先生と與那原は、夏前の中部地区選手権大会で頂点を目指そうと決意する。

 初戦の嘉手納との試合に先発した與那原が力で封じて完封すると、次戦の具志川商戦、さらに王者である中部商戦でも快投を見せ、なんと3試合連続完封勝利。決勝の前原戦でも延長12回を投げ抜き2対1で優勝したのだ。145キロを超える剛腕に自信が植え付けられれば怖いものは無かった。「興南でも沖縄尚学でもどこでも来い」という最高の状態で夏を迎えることが出来たのだった。

 そして、3年生の夏。初戦で雷雨再試合となった八重山商工との戦いを制した與那原は、続く前原戦でも延長13回を投げ抜き夏の主役へと躍り出る。3回戦の沖縄工戦では台風の影響が色濃く残る中、6回無失点の好投を見せたが、ここで潰した血マメが仇となり、準々決勝沖縄尚学戦ではサヨナラ負けを喫して高校野球の幕を閉じた。だが終盤の8回、再びマウンドへと駆け上がった與那原に対し観客のボルテージは一気に上がった。

 場の持つ雰囲気を変えられる選手というのはそういない。チームのため、背水の陣に出ていく與那原の投げる姿に大拍手が起こった。それはまるで、カクテルライトが差し込むプロの世界で投げているかのようでもあったが、彼にはその下地が十分ある。まず彼の武器のひとつであるスプリット。

「好調時には、135キロ前後の速さで鋭く沈み込みます」
まだ届いていないが、彼が目標としているのは150キロだ。それにスプリット(フォーク)を織り交ぜて打者を牛耳ったピッチャーといえば、かつて大魔神と呼ばれた横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)の佐々木 主浩氏がいる。

 もちろん今の與那原では遠く及ばない存在だろうが、将来はその佐々木氏のようなスケールの大きなピッチャーになって欲しいと知念先生は期待を抱く。それに加えクイックでの速さも魅力で、大柄な体から繰り出すその技には、プロのスカウトも合格点を与えている。そして148キロのストレート。

「高校で150キロを出すという目標には届かなかったけど、その目標の続きを夢であるプロの世界でクリアしたいです。目指すは大谷 翔平さん(関連記事)のようなストレート。そして、日本を代表するピッチャーになることです!」

 未完の大器は、現在は自主練習でさらに自らを磨きつつ、静かにドラフト会議を待つ。

(文=當山 雅通


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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