Interview

立教大学 大城 滉二選手「勝つための走塁は迷いを一切なくすこと」

2015.04.17

 今年の東京六大学を代表する遊撃手・大城 滉二選手。高校時代は快打、好守を連発する9番ショートとして、2年時に春夏連覇に貢献。立教大進学以降も、1年春からデビューし、打率.393をマークすると、以降も6季連続で打率3割を記録するなど、今年のドラフト候補として注目されている。今回、着目したのは、昨年春、秋ともに9盗塁をマークした盗塁技術について。いかにして大城選手の盗塁技術が築かれたを伺った。

興南はアップの時から走塁練習を行っていた

大城 滉二選手(立教大学)

 大城選手に走塁技術について話を伺うと、
「やはり高校時代(興南)の取り組みがベースとなっています。去年盗塁が多かったのもそれが積みあがったものだと思います」
と語る大城選手。

 2010年の興南といえば、エースの島袋 洋奨投手(現福岡ソフトバンク)2013年インタビューが注目されるが、好投手でさえも打ち崩す打撃力、堅実な守備など隙がないチームであった。その隙のなさを支えていたのが全力疾走である。どのチームも全力疾走を大事にするが、興南も、グラウンドでは歩かないことを基本としていた。そして興南は、勝つために走塁は非常に重要な技術と捉え、アップから走塁練習を行っていた。

「アップからスライディング、ヘッドスライディング、スタートを切る練習などをしていました。これは興南だけしかやっていないことだと思います」

 確かにアップから走塁練習を行うチームは見たことがない。興南の我喜屋監督関連記事が「実戦に即した練習をしなければ意味がない」と語るように、走塁練習をはじめとして、実戦を想定した練習を常に行っていたようだ。

 そして試合では、何か走塁ミスがあれば、試合後にすぐに全員で走塁練習を行ってその課題をつぶすなど、常に走塁技術を高めてきたのだ。また興南が走塁に取り組む上で大事にしていたのは「感性」だ。
「何か感じる力ですね。それがないと投手の癖を盗めません。そこはチームとして大事にしてきたことです」

 また走塁は体で覚えること、常に走塁練習をしなければ、勘を養うことはできないと語る。
「我喜屋監督がいっていたことを、全員がやろうと徹底してやってきました。その中で学んだことは、良い走塁ができるためには、走塁を自然とできるように、体に覚えさせることだと思いました」

 こうして大城選手の走塁姿勢、意識は築かれてきたといえるだろう。

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勝つための走塁特集
[page_break:迷いをなくすことが盗塁成功率を上げる]

迷いをなくすことが盗塁成功率を上げる

大城 滉二選手(立教大学)

 その姿勢は立教大進学以降になっても変わらなかった。
では、具体的にどのような意識で走塁を行っているのだろうか。興南で走塁を磨き、自信を深めてきた大城選手は、相手に勝つための走塁をするには「心理戦」を制さなければならないと説明する。

「投手の癖を盗んだり、また相手バッテリーの配球を考える。やはり変化球を投げたときが盗塁の成功率が高いので、どの場面で変化球が来るのかを読みながらやることが、盗塁が上手くなる要因だと思いますね」

 そして大城選手が盗塁時に大事にしてきたこと。それは走るときに迷いをなくすことだ。
「走塁は相手側の心理だけではなく、気持ちのもちようで、成功率が変わってきます。ですから走ろうと思ったら全力でスタートして、走り出すことです。走れないと思ったら走らないことも必要です。走れるかな、走ろうかな、セーフになるかなと迷いがあった時点で良いスタートは切れないですし、スタートも遅くなってしまいます」

 結果を気にしてしまっては良い走りができない。思い切って走った結果、アウトになっても仕方ないと割り切る。
アウトになったとき、気落ちがしそうになる。その時は、「次は絶対に成功させる。その気持ちを持ち続けることです」ときっぱりと言い切る大城選手。

 そして盗塁成功率を高めるカギとして、減速しないスライディングができるか。
「うまい選手はベースが近いスライディングをするといわれますが、僕はそれほど意識していません。ただスライディングで減速してしまっては意味がないので、スライディングをして、加速できることを意識的にやってきました」

 ここまで大城選手の話を伺っていると、走塁についての意識はごくシンプルで分かりやすい。ただそれを実行するか、しないかだ。

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勝つための走塁特集
[page_break:東京六大学通算94安打を誇る打撃の秘訣は、ノックで調子の波を少なくすること]

東京六大学通算96安打を誇る打撃の秘訣は、ノックで調子の波を少なくすること

大城 滉二選手(立教大学)

 そして3年秋まで94安打。4月18日の法政大戦で2安打を放ち、96安打まで上乗せした打撃についても話を伺ってみた。とにかく大城選手は6シーズンすべて10安打以上、3割以上を達成しており、調子の波が少ない。そこで意識していることとは、打てない時に何をすべきかということ。調子を取り戻す方法として、大城選手は「ノック」をするという。

「打撃、守備も下半身がどれだけ使えるかがポイントで、打てない時こそノックを受けますね。そこで下半身の使い方が見直せる感じがしますし、実際に打撃も復調しています」と調整法を自分のモノにしている。また大城選手が打撃で一番大事にしているのは「タイミング」だ。

「人それぞれ打てるポイントというのは違うと思うんですけど、自分の良いポイントで打てるかを常に考えていますね。それは試合前から相手投手の傾向はしっかり研究をしますし、また投手のタイプによってタイミングを変えていく。速い投手はタイミングを早めに取ったり、投げ方が変則的な投手には、右方向を意識したほうが自分は良い結果が残せているので。タイミングを取るためにはその前の準備が大事だと思います」

 大城選手は打撃、走塁も準備段階を大事にしていることが伺えた。

 最後に走塁がうまくなりたい球児へメッセージをいただいた。
「先ほどもお話したと思うんですけど、迷いをなくすこと。決めたら迷わずにいく。いけないときはいけないとはっきりさせる。それが大事なことだと思います」

 大城選手はプレーする前の準備段階で、誰よりも先のことを考え、そして失敗を恐れない挑戦心を持っている。大城選手が走塁について語ったことは非常に基本的なことだが、徹底すれば、誰でも勝てる走塁ができてチームに貢献できる可能性を持っている。

(インタビュー・文/河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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