Interview

東京ヤクルトスワローズ 大引 啓次選手【vol.3】「併殺の処理の仕方&コミュニケーションの重要性」

2015.02.26

 大引 啓次選手の守備論最終回は、二遊間が必ず関わる、併殺を多く取るための方法論と、今シーズン若手が多いヤクルトの選手にどんな姿を見せていきたいかの意気込みを語っていただきました。

Point05.多く併殺を取るための方法論

 多く併殺を取るための方法論は、二遊間の選手にとって悩みの種かもしれない。併殺を取る際にいかに二塁へのスライディングを避けて併殺を取るかという問題がある。遊撃手として、併殺の取り方について大引選手にアドバイスをいただいた。

「併殺にも、いろいろなバリエーションがあって、左足を出して取って、そのままスナップして投げるパターンや、伸びて取る、待って取る、などいろいろあります。二塁手の場合は、その時にスライディングを前に逃げたり、横に逃げたりすることで避けることができます。ですので、『6-4-3』の時、遊撃手は二塁手が(一塁に)送球しやすい位置に投げてあげることが大事になります。そこはお互いを思いやって投げさえすればコンビがどうというところは関係ないと思います」

 ただ、「4-6-3」の場合は、遊撃手が二塁手からボールを受ける時に、一塁ランナーが同一に視野に入ってくる。この場合はどのようにスライディングを避けるのか。

大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)

「まずは自分の身を守らなくてはいけませんから、人工芝のある球場の場合はアンツーカーを目安に極力人工芝の方へ逃げます。ただ、一番はお互いが『できるだけ早くボールまで取りに行って、取ってすぐ投げてあげる』意識を持つこと。そうすればまだランナーは来ていないはずです。そこで自分が待って捕球して、丁寧に投げようとすると、ランナーが近づいてしまう。そうすると、ケガにつながってしまいます。お互いが極力早く取って、極力早く、いいところへ投げる。これを積み重ねていく必要があります。それがお互いの身を守ることであり、併殺を取る秘訣だと思いますね」

 それでも、間に合わないことがある場合、瞬時に逃げる方法は?

「本当に危ない状況の時は、ランナーのスライディングに身を委ねる。構えずに受け身を取りにいって、身体を崩しちゃった方がダメージが少ないです。そこを踏ん張ってしまうと、ケガをする可能性がある。スライディングの力を逃がしてしまった方がいいですね。僕は幸いにも大きなケガはありませんが、それも勉強です。すぐそばにスライディングが来ている場合は、まず避けることの方が大事です。併殺を取りに足を伸ばすのではなく、一塁に投げなくていいから『まず逃げろ』ということです」

 しかし「逃げる」という考え方は、あまり聞かない考え方だ。

「そのような状況は、なかなかないですが、そういった状況は少なからず、ありますから。ただ、まず練習ではランナーを気にせず一塁へ投げるように心がけることが大事だと思います」

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Point06.外野手とのコミュニケーションは欠かせない

 コミュニケーションということで、大事なのは、外野手との連携。遊撃手であれば、左中間への小フライ処理も難しい要素だ。

大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)

「東京ヤクルトスワローズでは、これからチーム方針として合わせることですが、原則は中堅手・左翼手・遊撃手が全員追いかけること。加えて神宮は屋外の球場ですから、風と、打球の飛び方、外野手の事前ポジショニングは予備知識として不可欠です。それでも左中間への小フライは飛ぶわけですから、まずは追いかける。そしてこれまでの僕の場合は、外野手の声が聞こえない限りは、追いかけていきます。

 そこで後ろから声がかかった場合は、捕球の優先順位は後ろの選手ですし、外野手の方が取りやすいですから、すぐにどく。ですので、僕は『声が出ない限りは追いかけるよ』と伝えることになると思います。となると追いかけながらも、『外野手が来るかもしれない』と意識しながら、常に声が聞こえるように耳に対して意識を持つことも大事ですね。で、来ない場合は手を回して取ることを伝えます。なぜかというと、前から後ろには声が伝わりにくいから。それでも後ろから声が出たら任せます。

 整理すると、追いかけていって、後ろからの声がなかったらジェスチャーで自分が捕球することを示して、声がしたらどく。これも、これから実戦とか練習などでコミュニケーションを図っていきたい部分ですね」

 そういう部分では、第1回のインタビュー記事で記載した『ジェスチャー』は大事になる。
「もちろん優先順位はありますが、実際の試合では声は通りにくい。ですので、声よりもジェスチャー。確認事項、予備知識、そして『こうなったら、こうなる』ということを準備段階においてプレーで整理することですね」

 そこに加わるのが、二遊間を組む山田選手との話で出たような“コミュニケーション”だ。
「風がレフトからライトに流れているようであれば、遊撃手より二塁手が捕球した方がいいでしょうし。そこで『風がこう来ているから、任せるよ、取るよ』とお互いに言っておけば、ちょっとでも支障や問題点が生じる可能性は減ると思います」

 普段のグラウンドから、プロの選手たちは捕手、内野手、外野手と互いにコミュニケーションを取り、備えているのだ。

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Point07.若手選手に示すために全力疾走

大引 啓次選手(東京ヤクルトスワローズ)

 最後に2015年の今シーズン、大引選手はどんなプレーをして、東京ヤクルトスワローズを引っ張っていきたいのか伺った。

「大きなことを言うつもりはないですけど、今まで僕がパシフィックリーグでやってきたことを、まずはそのまま出して、良いことは続けていき、ダメなものはダメとハッキリ言う。良いものは良いと伝えて、それを実行できる選手が1人、2人でも増えていければ必ず強くなります。簡単なことでいえば、全力疾走を手を抜かずやれば、必ず相手の脅威になるので、『大引さんがやるのなら、僕もやろう』となれば、嬉しいですけどね」

 その結果、クライマックスシリーズや日本シリーズに到達できればと考えている。
「2年連続最下位に沈んでいますけど、ファンが応援している以上、てっぺんを目指して闘っていくのが選手としての務めだと思います」

 最後に、チームを引っ張る選手になるためにどんなことを心掛けているのかを語ってくれた。

「チームで決めたことを、先頭に立って最後までやり続ける。なんでもいいんですけど。後輩たちに嫌われてもいいから注意するのも大事ですけど、その前にまず自分自身がやることをやっているのかということを大事にしています。例えば、全力疾走は最後まで続けたつもりです。だから、出来ていない後輩に対しても言えますし、自分もやっていないと思ったらやらなければならないと思える。この1年、これから野球を続けていく上でも良い経験になりました」


守備について、これほど奥深く語ってくれた大引選手。体の動かし方、技術面に重きを置いてしまうが、野球は他の選手とのコミュニケーションも重要で、その重要性も具体例を持ち出して分かりやすく解説してくれた。
一つのプレーに対して、意味を持ってやり抜く。その姿勢が名手・大引を築き上げたのだろう。二遊間を守る選手にとっては、共感する話ばかりだった。今年も、チームに欠かせない“いぶし銀”として活躍を期待したい。

(インタビュー・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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