東京ヤクルトスワローズ 大引 啓次選手【vol.2】「打者に悟られないポジショニング&二塁手とのコンビネーション」
大引 啓次選手の守備論第2回では、最適なポジショニングと二塁手とのコミュニケーションの取り方に迫りました。
Point03.最適なポジショニングは、打者に悟られず、一瞬のタイミングでスタートを切る
大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)
次はポジショニングについて話を進めていきたい。NPBの場合には、相手打者の打球方向などの「データ」があるが、それは大きな予備知識として生かすことができている。
「長年やっていると、この投手の場合はこのバッターに対してこう投げて、バッターの調子が悪いとここに飛んでくる、というのが分かってきます。守っている方も『ある程度、こっちに飛んできそうだな』という予備知識があるだけで違いますね。ですから、どこに飛んでくるか分からないバッターは本当にイヤです。何気ない打球でもスタートが遅れがちになります。逆に引っ張り傾向のバッターは守っていてもラク、怖さは感じないですね」
その場合、大引選手であれば意識を三遊間方向に置くことを重視する。
「守備位置というよりも、意識の方が大きいですね。でも、確実に三遊間が多いバッターならばいいですけど、そこは意識しすぎてもいけない。微妙なバランスです。投手が打ち取った打球ならば二塁ベース寄りでも処理しなければいけないわけですから。あまりにも偏った守備だと打者もそこを見ると思うし、空いたところを狙い打ちする場合もあるので、極端な守備体系はあまり敷かない方が、僕はいいと思います」
大引選手は投手が投げて、打者がスイングの軌道に入った時に、打球が飛んでくる方向を予測している。
「とくに二遊間は、味方投手の軌道・コース、打者のスイング軌道やタイミングが見えるので、スタートは切りやすいですから。バットがボールに当たるか当たらないかの瞬間にスタートを切れるだけで、その一歩が1メートル、2メートルの差になるし、ヒットかアウトかによって試合展開も変わってきます。そこは心掛けていることですね」
ちなみに、大引選手のスタート姿勢はどんなイメージなのか。
「ベタ足でなく、つま先立ちで相手のバットがボールにインパクトする瞬間に、ポンと両足が着地するイメージですね。たとえば右打者のアウトコースであれば、左にスタートを切ってみる感じです」
そのため、大引選手はキャッチボールでも常に身体を動かし、ステップを切る意識が高い。
「ただのキャッチボールであっても、形だけでなく取ってすぐ握り替えることをすれば、それも1つの練習ですし、正面に入ることもそう。あえて横で取る練習もあります。キャッチボールを受ける時も、中継の構えをしてみたり、いろいろなことができると思います。また構える形がしっかりすることで、送球のコントロールも安定します」
大引選手は、このように常に実戦を意識したキャッチボールを行い、守備力を高めている。
Point04.二塁手とのコミュニケーションの取り方
大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)
初めて、セントラルリーグの球団でプレーをする大引選手。それを踏まえて、このオフに新たに取り組んだことはあるのだろうか。
「パシフィックリーグは指名打者制である反面、セントラルリーグは投手が打席に入るので、作戦的に送りバントが少なくなる傾向は想定しています。打席でも状況に応じたバッティング、バスターよりヒット&ランがより多くなると思っています。ですので、その練習は去年までに比べると少し多めに、意識的に入れています。あとは『一から勉強』ですよね。これからまだまだ巧くなっていくために、一つひとつを一から勉強するため、セントラルリーグの球団から誘って頂いたことを機に勉強していきたい。これからもプレーしながら勉強できたらいいと思います」
二遊間を組むことが多くなるであろう山田 哲人選手との呼吸の合わせ方もポイントになる。
「彼のプレーを見て、二遊間でゲッツーを取るときに、そんな捕球の位置で大丈夫なのかと感じることがありました。僕が、今まで組ませてもらった二塁手にはない感覚で驚きました。その後、彼とこのプレーについて話をした時に、『どちらかというと顔より下のボールの方が投げやすい』と言うんです。僕は逆に、顔より上の方が投げやすい。この違いは話をしないと分からないことでしたが。僕の感覚だと顔付近に投げるのですが、彼にとっては、それはやりづらいらしいんです。これは驚きでしたね」
ただ、直接、会話をしたことでの気づきもあったという。
「彼と話をすることによって僕の方がその後、気を付けて投げられるようになりました。これによって、今まで取れなかった併殺が取れるようになるかもしれないなと感じました。コミュニケーションを取ることで、そこは全然変わってくると思います。三木 肇コーチ(作戦コーチ兼内野守備走塁コーチ)が間に入ってくれて話をすることができたのも良かったです。今後も練習やゲームを重ねる中で臨機応変に対応できればいいと思います」
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いかがでしたでしょうか。二塁手とのコミュニケーションを取るにも、選手によって感覚が合う、合わないまで理解する必要があります。次回は、多く併殺を取るための方法論と、また外野手とのコミュニケーションの取り方などについて、大引選手に語っていただきます。
(インタビュー・寺下 友徳)