奈良大学附属高等学校 坂口 大誠投手「抜群のコントロールを築き上げたプロセス」
春夏通じて初の甲子園出場を決めた奈良大附属、その原動力となったのは不動のエース・坂口 大誠だ。スピードガン表示以上のキレと抜群のコントロールを誇る本格派右腕について、バッテリーを組む髙橋 康太朗は「器用で何でも出来るすごいピッチャー。入学時と比べてまっすぐも変化球も質が上がっている」と話す。真後ろから投球を見つめるショート・松下 侑平、セカンド・前田 勇大が「ピンチになっても抑えてくれるし守っていて安心感がある」と口を揃えるなどナインからの信頼も厚い。
天理、智弁学園を見返したいと思って入学した
坂口 大誠投手(奈良大学附属高等学校)
奈良県にとって、天理と智弁学園は二大チームである。それは同時に中学球児の憧れでもあるが、坂口もこの2校に行きたいと思っていた。だが2校からアプローチはなかった。それならば、この2校を倒せる投手となって、見返したい。2校に対抗できるのは、奈良大付しかないと思い、門を叩いた。
坂口は1年から起用される。自信になったのは、1年夏の決勝・奈良桜井戦だ。
「1年夏の決勝の奈良桜井戦ですね。ワンアウト満塁で出されたんですけどそこをホームゲッツーで抑えられた時がすごく自信になりました」
そうして奈良大付の主力投手へ成長をしていくが、新チームを迎えるまで結果を残すことができなかった。とくに悔しかったのは、2年春の智弁学園戦だ。3対13で敗れた試合だが、この試合を振り返って坂口は、
「自分に変に自信があったというか調子に乗っていたところもあったので、いい経験になりました。あと変化球が大事ということを教わりました」
そうして磨いた変化球。現在の球種は、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップだ。よく使うのがスライダーとチェンジアップ。坂口は昨秋の奈良県大会で準優勝へ導く活躍を見せて、近畿大会に出場。ここで坂口の評判が高まる。会心の投球を見せ、2安打完封勝利を見せた京都鳥羽戦(試合レポート)をこう振り返った。
「あの試合はどの試合より気合いが入っていて、自分が引っ張っていかないとという気持ちで投げたので、1番良いピッチングだったと思います」
しかし選抜がかかった箕島戦(試合レポート)では苦しい投球だった。先行を許しながらも、しっかりと粘って2失点完投。その粘りが、サヨナラ劇を呼び込んだ。ベスト4入りし、初の選抜出場を勝ち取ったのだ。
コントロールと伸びのあるストレートを投げられる秘訣
坂口 大誠投手(奈良大学附属高等学校)
平成26年度秋季近畿地区高等学校野球大会 1回戦 鳥羽戦
ここで坂口の魅力である球速表示以上に感じるストレートとコントロールの良さに迫っていきたい。坂口は勢いあるストレートを投げたいために、左足を高々と上げるフォームになった。このフォームは、エネルギーが大きい分、力強い速球を投げられる要因にもなる。だがバランスを崩しやすく、制球が乱れやすい。坂口はしっかりとバランスを保って制球が出来ている。そのコツとは何だろうか。
「とにかくキャッチボールの時から狙ったところに投げるってことは意識しています。小さい頃からずっとそれは意識してたんで勝手にコントロールは身についてるのかなと思っています」
プロの投手もそうだが、キャッチボールを大事にしている。坂口も野球を始めたときから、狙ったところへ投げる意識でキャッチボールを積み重ねた結果、コントロール出来るようになっているのだろう。またキャッチボール以外では、3ヶ所バッティングでバッティングピッチャーを務めて、そこでコントロールを意識して内角、外角に狙って投げる練習を繰り返す。上原 浩治投手(2013年インタビュー【前編】【後編】)は打撃練習を務めてコントロールを磨いてきたが、コントロールを磨く過程は、上原と似ている。
コントロールを磨き上げるうえで、フォームでチェックポイントにしていることは何だろうか。
「テイクバックの時の右腕の上がりですかね。スッと上がる時はいい球行くんですけど、遅れたりしたらコントロールが悪くなる。自分でしかわからないですけどそういうところはありますね。監督さんにも試合前に『今日はスッと上がってるぞ』とか言われたりするんでそこは意識してます」
しっかりと自分のチェックポイントは持っているのだ。また坂口はプレートの三塁側に立つ。投手を始めた時から三塁側に立っているようだが、三塁側に立つ意図としては、右打者の外角、左打者の内角へ対角線に投げ込んでいきたい意図がある。打者にとって、対角線の軌道は打ち難いからだ。坂口はそのコースを自信にしている。
ストレートで追い求めているのは、外で見ているよりも、バッターボックスに立った時の方が速く感じるストレート。そのために最後の指のかかりで一押しできるように心掛けているようだ。
みんなから信頼される投手へ
坂口 大誠選手(奈良大学附属高等学校)
この冬、坂口はストレートの強化と速いスライダーに磨きをかけている。
「スライダーがしっかり投げられなかったので。それまでは真っ直ぐだけで押せてたんですけど、去年の冬から『速いスライダーを投げろ』ってずっと監督に言われて3時間ぐらい投げ込んでました」
そしてストレートの質を伸ばすために取り組んでいることは。
「とにかく体重を増やすことですね。体重が増えたら勝手に球速も上がると思ってるので。後は肩の関節が元々柔らかいのですが、維持するためにストレッチなどをやっています」
現在の体重は75キロ。入学時の67キロから8キロ増量したが、選抜までには77、78キロにしてさらなる球速アップを目指す。現在の最速は140キロほどだが、選抜では最速145キロを目指している。
「やっぱりみんなでの目標は校歌を歌うこと。個人の目標は粘りのあるピッチングをすることですね」
その先の最後の夏にはどんな投手になっていきたいのだろうか。
「どれだけピンチになっても最少失点で抑えられる、みんなから信頼されるピッチャーになりたいと思います」
個々のレベルアップを語りながらも、最終的には勝てる投手、信頼される投手を目指すと語った坂口。コントロールの追求は、キャッチボール、打撃投手をこなしながら磨いていったという姿勢は多くの球児が参考に出来るものがあるはずだ。
プロのスカウトからも注目される坂口 大誠。智弁学園、天理を倒したいという思いで取り組んだ2年間の成果を[stadium]甲子園[/stadium]の舞台で発揮する。
(インタビュー・小中 翔太)