Interview

第96回全国高校野球選手権大会 甲子園のヒーロー紹介&準々決勝の見どころ

2014.08.21

 今回は1回戦から3回戦までの甲子園での戦いの中で、キラリと光る活躍をみせた選手たちをピックアップして紹介!

飯塚悟史、岩下大輝など評価を上げた右の大型右腕


松本 裕樹(盛岡大附)

 

投手では、松本 裕樹盛岡大附)、飯塚 悟史日本文理)、佐野 皓大大分)、岩下 大輝星稜)、石川 直也山形中央)、吉田 嵩(長崎海星)、持田 隆宏開星)、森田 駿哉富山商)の8名が、この甲子園での戦いで評価を上げた。

 150キロ右腕として注目を集めた松本 裕樹盛岡大附)は、ケガで、本来の投球が出来なかった。だが、本調子であれば、140キロ後半の速球、内外角へ変化球を駆使するクレバーな一面を見せる投手。しっかりと怪我を治して、プロの舞台に挑戦してほしい。

 飯塚 悟史日本文理)は完成度、精神面の成熟さという点では今大会ナンバーワンといってもいいぐらいの好投手へと成長した。
昨年から140キロ台の速球を投げる投手だったが、要所で、コントロールが乱れ、終盤に逆転負けすることがあった。だが、この夏にかけて、140キロ前半の速球、キレのあるスライダー、フォーク、両サイドへ自在に投げ分けが出来るようになり、自分のペースで投げられるようになったのが成長点だ。失点をしても、余計な失点を与えずに、粘り強く投げられる精神的な強さも、魅力。ポテンシャルのすごさよりも高校生離れしたクレバーさと落ち着きを感じられた。

 150キロ右腕の佐野 皓大大分)は、ややスリークォーター気味のフォームから最速145キロを計測。だが、コンスタントに140キロ後半を叩き出せる馬力はなく、140キロ前後の速球が多かった。まだスライダーのコントロールもバラつきがあり、完成度は低い。だが、逆にそれが伸びしろと感じる。体はかなりの細身で、身体が成長していく過程で球速、球質も勢いが出てくるのではないだろうか。

 岩下 大輝星稜)は今大会3戦で大きく成長を見せた大型右腕だ。常時140キロ前半・最速146キロのストレートは重量感たっぷりで、スライダー、フォークの精度も高い。
フォームの土台も良く、基本をしっかり押さえられた好投手。過去に甲子園に出場した高卒で指名された投手と比較しても、十分にドラフト指名される能力は持っているだろう。

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[page_break:底知れぬ可能性を秘めた石川、持田、吉田の大型右腕3人!]

底知れぬ可能性を秘めた石川、持田、吉田の大型右腕3人!

 石川 直也山形中央)は190センチの長身から振り下ろす豪快なフォームから常時140キロ台のストレート、100キロのカーブ、130キロ前後のフォーク、120キロ前後のスライダーとスペック自体は今大会トップクラス。まだ制球力が甘く、真ん中に集まって、走者を背負うことも多い。だがここぞという時のストレートは絶品で、東海大四戦(試合レポート)で記録した最速148キロのストレートは、プロの速球投手を見ているようなすごみがあった。まだ伸びしろはあり、完成系になったらどんな投球を見せるのだろうとワクワクさせるような投手である。

 持田 隆宏開星)と吉田はともにリリーフからの登場。持田は大阪桐蔭戦(試合レポート)の9回表に登場し、真っ向勝負で立ち向かった最速144キロを計測したストレートは威力十分。速球中心であったが、ドラフト候補と取り上げても良い威力がある。

 吉田 嵩(長崎海星)は最速145キロの速球には勢いがあり、また肩肘が柔軟で、球持ちの良い投球フォームに大きな将来性を感じた。長崎は今村 猛大瀬良 大地(ともに広島 【大瀬良 大地 投手インタビュー】)と2人の大型投手を輩出しているが、将来的にはこの2人に近づく大型投手に成長する可能性のある投手だ。

 森田 駿哉富山商)は左腕から常時140キロ・最速144キロの直球に加え、キレのあるスライダーをコンビネーションに全国の強打者を封じてきた。制球力の高さに加え、投球以外の技術も優れている。この夏、最も評判を上げた左腕だろう。

 また「スローカーブ」だけではなく、完成度の高い投球を披露した西嶋 亮太東海大四)、作新学院戦(試合レポート)で14奪三振を記録した山城 大智沖縄尚学)も選抜に比べて速球の威力がレベルアップし、今大会で4度目の甲子園出場となった岸 潤一郎明徳義塾)も、コンスタントに140キロ台を計測までにレベルアップ。

 ベスト8進出に貢献した平沼 翔太敦賀気比)、1年生ながら、最速144キロの直球を武器に全国の強打者に立ち向かった東邦藤嶋 健人東海大四戦(試合レポート)で、最速142キロを計測した左腕・佐藤 僚亮山形中央)も強烈な印象を残した。

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[page_break:打者では打率.466の香月一也(大阪桐蔭)が名を上げる!]

打者では打率.466の香月一也(大阪桐蔭)が名を上げる!


香月 一也(大阪桐蔭) 写真提供:共同通信

 野手では岡本 和真(智弁学園)、浅井 洸耶敦賀気比)、脇本 直人健大高崎)、植田 海近江)、峯本 匠大阪桐蔭)、香月 一也大阪桐蔭)の6名が最も光っていた。

 毎年高校生トップクラスの逸材を揃え、プロ選手を輩出。2年ぶりの夏優勝を目指す大阪桐蔭。3番を打つ香月 一也は今年の大阪桐蔭のメンバーの中ではプロ志望を掲げる強打の三塁手。更なるレベルアップのために1年先輩の森 友哉(埼玉西武ライオンズ)を模倣した構えにモデルチェンジ。選手権2回戦では明徳義塾岸 潤一郎から本塁打を放ち、昨年に比べてパワーアップ。ここまでの3試合で15打数7安打と打率.466と高打率を記録し、また6打点を残した勝負強さも光る。そして強肩が光る三塁守備も魅力だ。2年ぶりの夏優勝へさらに調子を上げることが出来るか。

 また2番を打つ峯本 匠(大阪桐蔭)はスピーディなベースランニングの良さに加え、いかにもセンスの良さが分かるキレの良い二塁守備、そしてバットコントロールの良い打撃を披露し、走攻守三拍子で光るプレーを見せている。

 岡本 和真(智弁学園)は、明徳義塾のエース岸を相手に、4打数2安打。甘く入ったスライダーを見逃さず、適時打を放った打撃は技ありだった。高校通算73本塁打を放った長打力が注目されるが、変化球を合わせる技術が高い。余計な球に手を出さず、しっかりとボールを見極める能力があるのも魅力だ。

 浅井 洸耶敦賀気比)は盛岡大附戦(試合レポート)で本塁打を放ち、パワフルな打撃を見せるショートストップ。動きの良いフィールディングも魅力で、強打の遊撃手として注目したい。

 脇本 直人健大高崎)はまだ一発はないが、ノーステップの選手にありがちな硬さを感じず、上半身、下半身を柔軟に使った打撃フォームから右、左に打ち返す打撃が魅力。また塁間4.00秒前後を計測する俊足を武器に2試合で4盗塁。走攻守で魅了することが出来るか。

 植田 海近江)は今大会で一気に評判を高めた逸材。鳴門戦(試合レポート)で4打数3安打を記録。ヘッドスピードが速い打撃から、右、左に打ち返し、さらにスピード感溢れる遊撃守備は今大会トップクラスだ。

 

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[page_break:準々決勝以降の見所 守れるチームが勝つ]

準々決勝以降の見所 『守れるチームが勝つ』


中川 優(八戸学院光星)

 21日でベスト8すべてが出揃い、22日から準々決勝が行われる。

 ここからは、“守れるチーム”が勝利をモノにするだろう。夏は打てることが鉄則といわれる。ただ準々決勝以降を勝ち上がるには打撃に加えて、守れるチームが強いといわれているのだ。

 そういう意味で、八戸学院光星(青森)は面白い野球を見せている。
2試合連続逆転勝利で、ベスト8を決めたが、試合内容は八戸学院光星のウリである強打はあまり見られなかった。これまでは北條 史也(阪神)、田村 龍弘(千葉ロッテ)を中心に圧倒するチームだった。今年の八戸学院光星も、能力が高い選手が集まるが、まだ調子は最高潮に達していない。

 だが、打てないなりに、勝てる野球が出来ている。まずはエース中川 優(2年)は130キロ後半の直球、多彩な変化球を投げ分け、打たせて取り、投げるリズムも良く、八戸学院光星の好守備を生み出しているといえる。自慢の打撃を発揮出来なくても、守り抜いて勝つことが出来る。戦い方の引き出しを増やしているといえるだろう。

 沖縄尚学(沖縄)は2回戦(試合レポート)は守り勝ちしたが、3回戦(試合レポート)では二松学舎大附との打ち合いを制し、サヨナラ勝ち。エース山城 大智(3年)も5失点しながらも、しっかりと立て直した。予想外の失点をしても、立て直して試合運びが出来るのも強いチームの特徴だ。

 サヨナラ逆転2ランでベスト8進出を決めた日本文理。終盤になってから畳み掛ける試合運びが魅力。選手たちの粘り強さといい、エース飯塚 悟史(3年)の流れを明け渡さない投球も鍵となっている。

 例年、夏になると選手の打撃もレベルアップし、本塁打も多くなる。2012年の第94回高校野球選手権では56本塁打(関連コラム:2012年夏の甲子園、なぜ本塁打は激増したのか?)が飛び出したが、第10日までの37試合を終えて、23本塁打と少ないペースだ。準々決勝以降になると、連投で投手のパフォーマンスが落ちて、打撃戦になる傾向が多い。

 だが打線は水物で、なかなか計算が出来ない。一方で守備は計算できるもので、確実に守れば、最少失点に抑えることが出来る。
今年はここ一番での守備力が問われる大会になりそうだ。22日からの準々決勝で勝ち抜いていくのは果たしてどのチームか。また、新たなヒーローは現れるのか。終盤の甲子園に高い注目が集まる。 

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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