Interview

第96回選手権大会 輝きを見せた球児たち

2014.07.28

高橋光成、安楽智大、小島和哉の夏が終わる


左から安楽智大(済美)・高橋光成(前橋育英)・小島和哉(浦和学院)

 まず、この3人には触れなければならないだろう。

 今の3年生の代がスタートした時、高橋光成前橋育英)、安楽智大済美)、小島和哉浦和学院)の3人はこの代の中心になると見られていた。
高橋光は夏の甲子園優勝投手、安楽は選抜準優勝投手になり、そして高校生最速の157キロ、小島は選抜優勝投手。2年生ながら快挙を達成したのだ。実績から見れば、最終学年ではこの3人が中心になるだろうと期待したくなるもの。

 だが選手の成長は右肩上がりに伸びていくものではない。何度か下がったり、上がったりを繰り返しながら、成長するものである。
ラストシーズンはこの3人にとってはやや下り坂だったが、彼らの能力から考えれば、将来性抜群な逸材であることは間違いない。

 安樂は選抜にかけて投げ続けた後遺症もあり、秋は右ひじを痛め、ノースロー。春に復帰し、140キロ後半まで計測するようになったが、最後は150キロを計測することもなく、夏を終えた。ただ150キロを出さないで、物足りないといわれる投手は安樂しかいない。ぜひしっかりと身体ともに万全にして、プロの舞台に臨んでほしい。

 高橋光も、秋以降は本来の投球が出来ていなかった。秋季大会敗戦後の国体でも140キロそこそこ。今年にかけて、145キロまで計測するまで取り戻したものの、甲子園で魅せた卓越したマウンド捌き、投球術までは戻らなかった。
ただ高橋光は大きな怪我はない。速球、変化球の使い分けは上手い投手だけに、NPBの舞台で、しっかりと実力を磨けば、いずれはローテーション投手に育つことが期待できるだろう。

 小島は安楽、高橋光のように、速球ではなく、制球力、投球術の巧さで魅せた左腕だった。
優勝時は常時135キロ前後、スライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーションで、打者を封じる投球術は高校生離れしたものがあった。だが昨夏の甲子園初戦敗退を喫し、県大会敗退、春は関東大会出場を果たすものの、は3回戦で敗退し、甲子園出場はならなかった。この時は球速は140キロ前半まで計測するようになったが、投球の繊細さを欠いてしまった。
小島も大きな怪我はなく、投球において意識は高い投手なので、しっかりと投球術、制球力を磨いていければ、次のステージでは実戦派左腕として活躍する可能性は秘めている。プロか、アマチュアか。どちらを選択するかは分からないが、楽しみな逸材であることは変わりない。

 3人にとっては悔しい夏だったに違いない。だが苦しんだ分、次の野球人生で活きることを大いに期待したい。

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甲子園で注目してほしい投手たち

松本裕樹(盛岡大附)

 次なる注目投手を挙げるとなれば、盛岡大附松本 裕樹(3年)、大分佐野 皓大(3年)だろう。

 松本は今春の地区予選で、最速150キロを計測。には149キロをたたき出した。準決勝では1安打完封。決勝戦では本塁打を放った。投打ともに注目を浴びる存在であることは間違いない。

 佐野は九州大会で、最速150キロを計測。一気に九州地区トップクラスの大型右腕となった。迎えたは決勝戦で5失点と苦しみながらも逆転で甲子園出場を決めた。ついに怪腕がベールを脱ぐ。

 森田駿哉富山商)はすべてにおいて高水準な本格派左腕。長身から投げ込む投げ込む直球は常時140キロ台を計時し、スライダー、カーブ、チェンジアップを投げ分け、狙い球を絞らない投球が光る。さらにクイック、フィールディング、牽制技術も長けており、総合力の高さならば、今年の高校生トップクラス。ぜひ能力を甲子園の舞台で遺憾なく発揮してほしい。

 また投打ともに高い才能を秘める飯塚 悟史日本文理)は新潟大会でも安定した投球を見せ、2年連続甲子園出場を決めた。決勝戦では関根学園戦に2点先行を許しながらも、その後は1点を与えずに味方の反撃を待った。そしてナインは飯塚の好投に応え、逆転サヨナラ弾で応えた。今回の甲子園出場は飯塚をさらに大きくさせる勝利だったに違いない。

 191センチの長身から最速146キロを計測する石川 直也山形中央)も注目の逸材だろう。登板試合では常に140キロ中盤を計測し、落差のあるフォークで圧倒する右の本格派右腕。素材的には今年の高校生トップクラスで、甲子園で好投を見せれば、現実味を帯びるだろう。

 歴史的な大逆転劇で甲子園出場を決めた岩下 大輝星稜)は最速145キロの直球を武器にする右の本格派右腕。そして決勝戦では9回表に三者連続三振を奪い、流れを呼び込んだ。昨夏の甲子園では鳴門戦で打ち込まれ、悔しい初戦敗退。それだけにリベンジしたい思いは強いはずだ。

甲子園で注目してほしい野手たち

鈴木将平(東海大望洋)

 野手では、脇本 直人健大高崎)は大会前まで通算56本塁打を放った大型スラッガー。目指すは走攻守三拍子揃った糸井 嘉男(オリックスバファローズ)。群馬大会では準決勝の桐生第一戦で本塁打を放っており、徐々にエンジンがかかってきた。甲子園で大暴れなるか。

 甲子園初出場となる東海大望洋鈴木 将平は1番を打ちながらも、一発を打つ長打力があり、俊足を生かした走塁、守備範囲の広い外野守備も魅力的だ。

 また二季連続出場を決めた八戸学院光星の主力打者・北條 裕之は一発を打つ長打力を秘め、動きの良い三塁守備が光る内野手。春の選抜以上の活躍を見せていきたい。

 9年ぶりの出場が決まった春日部共栄守屋 元気は1.9秒台を計測する強肩に、広角に打ち分ける打撃が魅力の捕手だ。

 そして、大隅半島から初の甲子園出場となった鹿屋中央木原 智史は勝負強さを秘めた大型外野手。長打力と強肩には自信を持っており、4番打者として勝利を導く一打を打つつもりだ。

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敗れたものの、キラリと光った逸材

小野 郁(西日本短大附)

 ここで、地方大会で敗退したが、キラリと光った逸材を紹介する。

 今年の福岡大会で最速153キロを計測した小野 郁西日本短大附)。大会前に左手首を負傷し、自慢の打撃を封印し、投球に専念。大会では負傷を感じさせない力投を見せた。常に最速150キロ前後を計測し、キレのあるスライダーのコンビネーションで打者を牛耳った。安楽、高橋光とともにドラフト会議を沸かせる逸材であることは間違いない。

 また富山大会決勝で敗れたものの、186センチの長身から振り下ろす常時140キロ台の直球が光る河端 優馬高岡商)。

 最速150キロを計測し、一気に高校生最速左腕に躍り出た塹江敦哉高松北)。

 今年の関東大会で最速147キロを計測した高校生トップクラスの本格派左腕・田嶋 大樹佐野日大)は決勝まで快投を続けていたが、決勝戦で肩の違和感により途中降板。チームも勝ち越しを許し、そのまま敗れ去った。まずはしっかりと左肩を治して、次の舞台に挑んでほしい。

 都立屈指の本格派右腕・鈴木 優都立雪谷)も、140キロ前後の直球、スライダー、落差のあるフォークでチームを8強に導いた。本人は強烈なプロ志望を持っており、それに向けて日々の生活、練習の取り組み方も、大きく変わったという。厳しい環境に耐えうる精神力は持っているだろう。

 また2013年選抜に登場し、近畿地区屈指の好投手として注目された立田 将太大和広陵)も、智弁学園戦に打ち込まれ、夏を終えた。
常時140キロ台のストレート、キレのあるスライダーを武器にする右の本格派。彼の魅力は蓄積疲労がなく、使い減りしていないこと。名門校のエースになると緊迫した場面の登板が多くなる。その分、場数を踏んでいても、肩、肘のオーバーユースで、パフォーマンスを低下させるケースがある。立田は大事な場面での登板はまだ少ないが、それがプロ入りしてからは特にマイナスにはならないだろう。
これからNPBに志望するかは分からないが、将来性のある右腕として高く評価する球団もあるだろう。どんな進路を歩むのかとても興味深い投手である。

 野手では驚異の1.8秒前半のスローイングを叩き出す山川晃司福岡工大城東)は懐が深く、打撃は長打力があり上の世界でも、打撃力ある捕手に育つ可能性を秘めている。

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地方大会終盤戦を迎える逸材たち

 まだ甲子園出場校は全て決まっていない。地方大会終盤戦を迎える逸材たちを紹介する。

 神奈川大会はベスト4が出揃ったが、4チームとも注目すべき選手が揃っている。
まず3季連続出場に期待がかかる横浜は今大会3本塁打と絶好調の浅間 大基(3年)、1本塁打ながら、広角に打ち分ける打撃が光る主砲・高濱 祐仁(3年)。

 東海大相模吉田 凌(2年)、青島 凌也(3年)、佐藤 雄偉知(3年)、小笠原 慎之介(2年)の140キロカルテットの他に、打線では今大会3本塁打の豊田 寛(2年)、強打の捕手・長倉 蓮(2年)と逸材多数。

 向上は常時140キロのストレートをたたき出すエース・高橋 裕也(3年)、攻守の要で、勝負強い打撃を見せる遊撃手・菅野 赳門(3年)。

 ノーシードから勝ち上がった横浜隼人は日本人離れした身体能力を生かし、攻守で躍動したプレーを見せる宗 佑磨(3年)、今大会3本塁打のスラッガー・手塚 渓登(3年)の2人の活躍も見逃せない。

 準々決勝を終えた静岡日大三島の大型野手・中泉 圭祐(3年)、投打ともに高い才能を秘め、プロから注目される常葉橘木村 聡司(3年)の2人に注目だ。

 また大阪大会では大阪桐蔭履正社の2強が準決勝で激突する。
履正社は最速147キロ右腕・永谷 暢章(2年)の投球ぶりに期待がかかる。強肩強打の捕手・八田 夏(3年)の成長も見逃せない。
大阪桐蔭は全選手のレベルが高いが、その中でも期待したいのが昨年から主軸に座り、長打と確実性が備わった打撃をウリとする香月 一也(3年)、俊足、強打の二塁手・峯本 匠(3年)、強打の外野手・正随 優弥(3年)の3人の打棒に期待がかかる。

岡本和真(智辯学園)

 大和広陵の立田を打ち崩し、決勝を迎える奈良大会は、高校通算72本塁打の岡本 和真(智弁学園)はライバル・天理との一戦を制し、二季連続の甲子園出場を果たすことが出来るか。

 また愛知大会では28日に東邦豊川と黄金カードが行われる。東邦は140キロ台の直球、キレのあるスライダーを武器にする大井 友登(3年)に注目。豊川は140キロ中盤の速球とキレのスライダーをテンポ良く投げ込む田中 空良(3年)。

 福岡大会決勝に進出した九州国際大附にはNPBスカウト注目の大型捕手・清水 優心(3年)、鋭いスイングから打球の速さならば清水以上の遊撃手・古澤 勝吾(3年)のパフォーマンスは必見だ。

 徳島では鳴門渦潮の140キロ左腕・松田 知希(3年)、強肩捕手・多田 大輔(3年)のバッテリーが今年勇退を迎える高橋監督に甲子園出場をプレゼントすることが出来るか。

 そして高知、5年連続出場を目指す明徳義塾のエース岸 潤一郎(3年)は140キロ後半を投げるようなスピード能力はないが、140キロ前半でもそれ以上に速く感じる切れ味鋭いストレートと、多彩な変化球に、バリエーションが広い投球術と投手としての総合力は高校生トップクラス。11年から4年連続で高知との対戦が決まったが、再び甲子園出場はなるのか。

 いよいよクライマックスを迎える地方大会。まだ残る地区にも多数の逸材がいる。彼らは我々にどんな輝きを見せてくれるのか。これからますます見逃せない。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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