Interview

千葉ロッテマリーンズ 井口 資仁選手(國學院久我山高出身)

2014.06.04

 ダイエー時代に3度のリーグ優勝、さらには、2度の日本一に輝いた井口 資仁選手。
05年には海を渡り、シカゴ ホワイトソックスでプレー。そこでも、1年目から日本人2人目となる世界一を経験するなど、世界の舞台でも活躍してきた。
09年に、日本球界に復帰した後は、千葉ロッテに欠かせない主砲として活躍中。
今回は、井口選手の高校時代、大学時代の取り組みを振り返りながら、バッティングのこだわりについても語っていただきました。

高校・大学では自ら考え練習

――中学時代は全国大会出場。東京の國学院久我山でも2年夏に甲子園に出場した井口選手。また、青山学院大で94年秋に打ちたてた3冠王(打率.348/本塁打8/打点16)は今でも、井口選手のみ。さらに、通算本塁打数24本もリーグ歴代1位の記録として残っています。そんな井口選手に、学生時代の野球の取り組みに関して伺いたいのですが、井口選手はどんな思いで野球と向き合ってきたのでしょうか?

千葉ロッテマリーンズ 井口 資仁選手

井口 資仁選手(以下「井口」) 僕は、人より上手くなりたいっていう気持ちが強かったし、人に負けたくない、人より打ちたいと常に思っていたので、高校も全体の練習時間が短かったんですけど、いろんな練習をしたり、自分で工夫をしたりしてきました。

 特に、高校と大学のチームが、やらされる野球じゃなかったので、自分で考えて、いろんな練習が出来たことが今につながっているのかなって思います。
もし、やらされる練習をしてたら、大学が終わったら野球やめてたと思うんですよ。当時は、野球がしたくて自分からどんどん練習していたので、そういうのが今につながっているんじゃないかなって思います。

――与えられた練習ではなく、逆に自分で考えて練習をするというのは、選手によっては、難しさもあるかと思いますが。

井口 考えるという部分を伸ばすには、それは勉強することが大事だと思います。学校の勉強でも何でも、いろんなことに興味を持って、いろんなことに疑問を持って。

 野球でも、なんでこの人は打てるんだろうとか、なんでこの人は打てないんだろうとか、そういう疑問を持ってやっていけば、持っていた興味も考えも、いろんなことが分かってくるだろうし。
今は、いろんな情報も出てきている時代なので、自分で考えて引き出しを増やせば、自分にいい影響がいっぱいあるんじゃないかなと思います。

――そんな井口選手は、2年生の夏に甲子園に出られました。改めて振り返った時、あの夏、なぜ、國学院久我山は甲子園に行けたのかなって思いますか?

井口 やっぱり、全員の意識だと思うんですよね。甲子園に出たいっていう意識。
まさか、全体練習が2時間の学校で甲子園に行けるなんて、あまりないでしょ。バッティング練習も週1回だけ。そういう高校だったから、逆に、みんな自分からティー打ちしたりとか、いろんな練習をそれぞれがやっていました。

――井口選手は自主練習などでどんな練習をやっていたのですか?

井口 中学・高校時代は、シャトル打ちを家でやっていました。
真っ暗な中、電気は街灯だけだったんで、シャトルの黄色だけが浮かび上がるんです。その黄色に合わせてバットを振るという良い練習でした。特に、打つポイントも、シャトルの先はかなり小さいので、きちんと打たないと飛ばないですし。

――自主練習は、毎日練習があった中学時代からも、多くやられていたと聞きましたが。

井口 そうですね。学校が終わってすぐに、毎日練習がありましたが、練習後に自主練習はやっていました。
やっぱり意地ですよね。家族の手伝いもあって、走ったり、シャトル打ちしたりということを遅い時間まですることが出来ました。

このページのトップへ

[page_break:右方向へ強い打球を打つには?]

右方向へ強い打球を打つには?

千葉ロッテマリーンズ 井口 資仁選手

――井口選手といえば、高校時代の夏の大会でも[stadium]神宮球場[/stadium]に右方向の大きな本塁打を放っていますが、右方向に強い打球を打つバッティングのポイントというのは、どんなことでしょうか?

井口 バッティングというのは、身体の中で打たないと力が伝わらないんです。とくに右方向はそうですね。
なるべく、ボールが外だからといって、腕を外して打つのではなく、インコースの時と一緒で、脇を締めてしっかりと外の球も振り切れば、右方向に大きい打球が飛びます。

 外のボールだからといって、みんな手を放してしまうイメージがあるんですけど、インコースであればポイントが前にあるし、外であればポイントが身体の右側なので、そこのポイントまでしっかり踏み込んでいく。
外のボールも、インコースのように振ることができれば、引っ張ったのと同じように強い打球が右方向にいくのかなと僕は考えていますね。

――なるほどですね。外のボールを引っ張ることを意識するということが大事なのですね。

井口 一番はファウルにならないことが大事なんです。フェアになるように自分のポイントをしっかり振ることですね。
やっぱり外だから流そうと思うと、押し出すイメージがあるんですけど、右方向に引っ張るイメージで捉えることで、ファウルにはならなくなります。

――続いて、井口選手のような長打力を身につけるために、有効な練習方法を教えていただけますでしょうか。

井口 やっぱり遠くに飛ばすというのは、ボールに対していい回転をかけなきゃ飛ばないと思いますし、その練習で一番いいのは、バッティングでいうと、“ロングティー”です。ボールにいい回転をかける。ボールを投げるのと一緒で、しっかり回転かけないと遠くまで飛んでいかないので。ロングティーをやれば、体全体を使って遠くに飛ばすという動きが身につけられます。高校でも、とくに大学でもこの練習はしていましたね。

――その時に意識していたポイントはありますか?

井口 自分は、打つまでの30センチ~50センチを、120%のスイングをすることを意識していました。
打ち始めから打ち終わりまで、100%のスイングを徹底はできないと思うんで、とにかくこの50センチだけを120%のイメージで。打つ瞬間をとにかく意識して振っていました。

――続いて、実戦に関するお話を伺いたいのですが、井口選手が打席内で考えていることを教えてください。例えば、苦手な投手と対戦する際は、どんなことを考えて対応しているんですか?

井口 プロの場合は、何度も対戦した投手との対戦なので、はじめて対戦する投手が多い高校生とは状況が違うと思うんです。
もし、自分が高校生だとして置き換えてみると、相性の悪い投手と対戦する際は、ストライクが3球あるので、3球振ったらいいと考えます。2球見逃したら、ストライクが残り1球しかなくなりますからね。

 高校生の場合は、相手投手のデータもそんなにないですよね。
ただ、何も考えずにとにかく打って、ファウルになって、最後は、自分から見逃しっていうのが一番ダメだと思うので、ベンチやネクストから、ピッチャーを観察して自分のタイミングに合わせて、初球からしっかり振れる準備はしていった方がいいでしょうね。

このページのトップへ

[page_break:15年変えていないこだわりのバットとは?]

15年変えていないこだわりのバットとは?

千葉ロッテマリーンズ 井口 資仁選手

――そんな井口選手が現在使われているバット。とてもこだわりがありそうですが、重さや形状などどんなバットを使われていますか?

井口 僕が使っているバットの重さは920グラムです。グリップの形状はとくに他のバットと大きな違いはなく普通です。この重さと形状は、もう15年くらい変えていないです。材質はアオダモですね。

――井口選手の場合だと、年間でバットは何本ほど注文されているのですか?

井口 シーズンによって調子の良い時も悪い時もあるので、折れることもあるんですが、シーズン通して、30本~40本くらいですかね。実際には、200本のバットの中から、木目を叩いて、高音で響きが良いバットを優先して使っています。高音のバットの方が、弾きがいいので、音が長く響くものから選んで使っています。

――他にも、バット選びの際に大事にされているポイントはありますか?

井口 持った時のグリップですかね。しっかり削っていただいているんですけど、中には自分の感覚と違うこともあるんで、持った感覚は大事にしています。

――調子が悪い時にバットを変えてみるということはあるんですか?

井口 基本的に調子が悪いのは自分のせいですから。あまりバットがどうこうっていうのはないですね。打てば飛ぶわけですから。

――なるほどですね。では、構える時のバットの握りを教えて頂きたいのですが、井口選手はバットをどう握られているのでしょうか?

井口 僕の場合は、あまり短く持ったりはしないですね。とにかく、グリップエンドいっぱいに持っています。両手3本の小指、薬指、中指で持つようにしています。どちらかというと、人差し指が立つくらいの感じで握っていますね。

――余分な力が入らないように、イメージとしては6本の指で握っている感じですか?

井口 そうですね。自然とこの握り方になっていましたね。小学生の頃からだと思うんですけど、自分の中で一番力が入る握り方だったんです。

――握り方以外でも、構える時に心掛けていることは、他にもありますか?

井口 自分の場合は、常にトップに近い位置にグリップを置いて、自然に(テイクバックに)入っているような状態にはしていますね。
前だけで振る人もいっぱいいるんですけど、自分の場合は、トップまで持ってくるのが下手なので。とにかくトップの状態を早く作って。いつでも行ける状態で構えているという感じにしています。あとは極力、力を抜いて、打つ瞬間のために力をとっておくようにしています。

――井口選手、バッティングにおいて参考になるお話、ありがとうございました!それでは、最後に夏を目前に控えた高校3年生にメッセージをお願いします!

井口 やっぱり甲子園って人生で1回行けるか行けないかですよね。高校生のトップの大会なので、そこに向かってぜひ頑張ってほしいし、悔いのないよう精一杯やってほしいなっていうのが一番です。

 井口選手、ありがとうございました!

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】