Interview

埼玉西武ライオンズ 牧田 和久投手 【前編】

2014.02.19

 平成国際大学から日本通運を経て埼玉西武ライオンズに入団。2011年、いきなり完封でプロ初勝利を挙げる。シーズン途中から抑えとして活躍し、この年の新人王を受賞した。2012年にはチーム最多の13勝。2013年のWBCでは日本の守護神として活躍。シーズンに入ってからは先発を任され、2012年に引き続き1年間ローテーションを守り抜いた。防御率はリーグ3位。チームのAクラス入りに貢献した。
 そんな牧田投手と言えば、アンダースローから放たれる、浮き上がるような直球と、強弱、硬軟織り交ぜた変化球、さらにタイミングを狂わせ相手を幻惑する投球術の持ち主。
 2012年の13勝を超えるために今年は春季キャンプからマメができるほど投げ込みを繰り返している。マメがあることで、指先でもう一押しできて強いボールを投げられる狙いがあるとか。そんな繊細なところまでこだわる牧田投手に、独特のピッチングを実現するためのトレーニング方法や、投球術について、いろいろなお話を伺った。

体を上手に使うために大切なこと

――まずは、2013年のシーズンを振り返ってみていかがですが?

埼玉西武ライオンズ 牧田 和久選手

牧田 和久投手(以下「牧田」) 8勝9敗という事で、先発の役割を全然果たしていない。でも、その中でも防御率は2.60という中で、自信になった部分もありますけど、もうちょっと勝てたんではないかな、と思います。
 WBCではまあまあだったんですが、夏場に来て、いつも以上にへばっていたというか。もうちょっと下(下半身)を使って投げなきゃいけないんですけど、その頑張らないといけないところで、楽をして手投げになってしまう部分があったので。そうなるとボールも弱かったですし、そういうキツイところでどう頑張るかが大事だったなと、今振り返って感じますね。

――WBCでは、自分の中でピッチャーとして成長したと思う部分はどこでしょうか?

牧田 気持ちの切り替えですね。やはり、ああやって日本を背負って、周りの選手も素晴らしい方ばかりの中で、自分がいる。
 戸惑いもありましたし、自分で良いのかな、っていうところもありました。
 ましてや日本代表の守護神ということで、プレッシャーはあったんですけど、いい開き直りができた。自分なりに一生懸命やって、打たれたらそれは仕方ないという割り切りができたというか。そうやって逆に開き直ったからいいピッチングが出来たのかなって。

 それがシーズンに入って、先発のローテの中で、チームを勝たせなきゃいけない。勝てるチームなんだから、先発として、勝つように持っていかなきゃいけないという責任感が出てきた。そういうのが投球に出てしまったんですね。抑えなきゃ、しっかりしなきゃ、というところで腕が振れなく小さく、慎重に投げすぎてしまって、本来の自分のピッチングが出来なかったなというのが、正直なところだと思います。

――では、この冬のトレーニングテーマは?

牧田 もちろん下半身の強化も必要なんですけど、今年は強化というよりは、体の柔軟性をアップさせる。股関節周りだとか、肩周りだとか。その辺がシーズンで固くなっていると思うので、そういう所をほぐしながら、柔軟性をつけていきたいと考えています。

――これまで、大学・社会人と経験されてきた牧田選手ですが、柔軟性を意識しておけばよかったな、という場面はどこですか?

牧田 高校、大学、社会人というのは1年間試合をやっているわけではないんですね。期間が空いて、そこに合わせて追い込んで、調整して、入っていく。そういうやり方が出来ていたのでそんなに疲労もなく良い感じに調整できていたのが、プロに入って1週間で自分でメニュー組んでやらなきゃいけなくなりました。
 その中で、どうしても疲労というのは蓄積していきますし、体が硬くなってしまって可動域も狭くなってしまって、本来の自分のピッチングが出来ない、っていうところを感じることも多かった。
 とくに、今年1年、投げている中で、硬いな、と感じる部分もあって、もうちょっと柔軟性高く投げられれば、ボールへの力の伝え方も出来てくると思うんです。1年間ローテーションを守ってきて少し硬くなっている部分を、疲労をとってほぐしながら柔軟性を強化してやらないと。来年優勝するために、必要なことだと思います。

――なるほど。オーバースローのピッチャーとアンダースローのピッチャーというのは、トレーニング内容は変わってくるものなのでしょうか?

牧田 いや、特にそんなに変わるということではないと思います。要は体の使い方なので、トレーニングはほぼ一緒です。ただ、アンダーの場合は、下半身の強化トレーニングはやっぱり他の人より意識してやらなきゃいけないなというのは思っています。

――強度を上げるということですか?

牧田 強度というより、自分のアンダースローで投げる体の使い方を意識しながらトレーニングをする。スクワットをするのであれば、ちょっと股関節を意識して。少しでも使っている場所を意識することで違ってくると思うんで。そこで、少しずつ負荷をかけながらも、柔軟性にも気を付けていきたいと考えています。

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[page_break体の使い方と柔軟性]

体の使い方と柔軟性

埼玉西武ライオンズ 牧田 和久選手

――牧田投手はもともと、柔軟性は高いんですか?

牧田 小さい頃から特別に何もやっていないですけど、柔らかさはあると思います。でもそれがちょっとうまく使えてないのかな。アンダースローに限らず、身体の使い方は野球選手にとって大事ですね。上手く使えるかどうかでパフォーマンスが全く変わってくると思います。

――特に何もしていないとのことですが、普段どんなストレッチをしているのでしょうか。

牧田 普通のストレッチですね。開脚だとか。昔から変わらないですね。基本的には準備運動のようなストレッチしかしてません。特別こうやるっていうのはないんですけど。どこをどう柔軟性を高めているのかっていうのを意識しながらやってはいますね。

――用具のこだわりはあるのですか?

牧田 シューズであれば、なるべく色が派手なものを使ってますね。今は黄色が多いです。誰が見てもすぐ分かるので(笑)

 もちろん履き心地や強度もあります。本来はスパイクを履いてキャッチボールするのが良いんですけど、トレーニングシューズを履いてやるとなると、爪先がすれてきて、布製やスエードみたいな生地だと穴が開いてきてしまうので、そこはちょっとエナメルにするだとか、強度の面で意識はしてますね。
 大学や社会人の頃からですが、今はシューズもスパイクもミズノを使っています。
 スパイクは、自分の足に合ったものが一番だと思っていますし、選ぶ基準は軽さですね。どうしても土とか付くと重くなってしまうので。あとはケアも大事で、きちんと乾燥させる管理が大切ですね。

埼玉西武ライオンズ 牧田 和久選手

――アンダースローのピッチャーは、こんな観点で選ぶと良い、というのはありますか?

牧田 投げていく中で、スパイクがすれて土が入りやすいとかであれば、なるべく土が入らないように工夫する。紐だと砂が入って来ちゃって、それをとるのも面倒くさいので、自分は入らないように上にマジックテープみたいなものでカバーというか、そういうものをお願いしてつけています。

――2014年のシーズンに向けてスパイクの改造はありますか?

牧田 とりあえず今年からは投手専用のソールが登場したので、キャンプで色々と試してみたいなということで今も使っています。

――投手専用のソールというのは画期的な感じがありますね。

牧田 そうですね。基本足をフラットにつくんですけど、投げる時ってどうしても内側にいきやすいんです。それで内側の方に刃があって外側に刃があまりないっていう、ピッチャー特有の力の分散をさせる、というようなソールだったんです。上投げだろうと下投げだろうと、その使い方っていうのは一緒だと思うんで、今シーズンは愛用していきたいですね。

牧田投手、ありがとうございました。次回は後編インタビューで、コントロールの磨き方などをお届けします!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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